個人事業主が事業資金を借りるなら、銀行より信用金庫がおすすめです。
地域密着型の金融機関である信用金庫は、中小企業や個人事業主を支援する役割を持つため、銀行よりも柔軟な審査が期待できます。
今回は、個人事業主が信用金庫で融資を受ける方法や、審査を通過しやすくするコツ・注意点について詳しく解説します。
個人事業主でも信用金庫からの融資は受けられる
個人事業主として事業を運営していると、設備投資や運転資金などが足らず、融資に頼らざるを得ないケースもあるでしょう。
しかし、銀行の融資は審査が厳しく、事業実績や良好な決算がないと審査通過ができないのが実態です。そんなときに利用すべきなのが、信用金庫融資です。
信用金庫は地域密着型の金融機関であり、個人事業主に対しても柔軟な融資を行う傾向があります。
個人事業主でも融資が受けられる理由|銀行と信用金庫融資の違い
信用金庫は、地域の個人事業主や中小企業を支援することを目的とした金融機関です。
銀行とは異なり、地域密着型の金融機関であり、地域経済の発展を支援する目的をもっています。
そのため、個人事業主に対する融資にも積極的です。
【銀行と信用金庫の違い】
経営方針 | 審査の方向性 | 融資の特徴 | |
---|---|---|---|
銀行 | 利益優先 (株主への利益還元) | 定量評価 (事業実績重視) | 審査は厳しい。 実績や成長性が重視される。 |
信用金庫 | 地域経済の支援重視 | 定性評価 (人柄、地域貢献も重視) | 銀行と比較すると審査は柔軟。 将来性や地域貢献を考慮してくれる。 |
銀行と信用金庫の大きな違いは、「審査の視点」です。
銀行の審査では、事業の売上や利益といった数値で表せる「定量面」が重視され、過去の事業実績をもとに融資可否が判断されます。
一方、信用金庫は「定性面」も重視します。これは、信用金庫が「経営者の人柄」や「事業に対する姿勢」、「地域社会とのつながり」など、数値では表せない部分を評価する方針をとっているためです。
事業の将来性や地域貢献度なども考慮されるため、個人事業主が融資を受けるなら、銀行よりも信用金庫のほうが利用しやすいでしょう。
参考:信用金庫と銀行・信用組合との違い|一般社団法人全国信用金庫協会
信用金庫のプロパー融資と保証付き融資の違い
ちなみに、信用金庫の融資には「プロパー融資」と「保証付き融資」の2種類があります。
個人事業主が利用するなら、保証付き融資がおすすめです。
【プロパー融資と保証付き融資の違い】
対象者 | 審査基準 | 金利 | 保証料 | 審査スピード | |
---|---|---|---|---|---|
プロパー融資 | 事業実績があり、すでに信用金庫と取引がある事業者 | 厳しい (信用金庫がリスクを負うため) | 比較的高い (保証会社ではなく信用金庫が貸し倒れリスクを負うため) | 不要 | 保証付き融資と比較すると早め |
保証付き融資 | 事業実績が浅い新規開業者など | 比較的通りやすい (信用保証協会が保証するため) | 表面金利は低い (別途保証料がかかる) | 必要 | 保証協会と信用金庫の二重審査があるため遅い |
プロパー融資は、信用金庫が独自に審査しリスクを負う融資です。保証協会を介さずに信用金庫の資金を直接貸し出す仕組みのため、審査は厳しい傾向があります。
安定した事業収益があり、すでに信用金庫と取引のある事業者におすすめの融資です。
一方、保証付き融資は信用保証協会が保証を行い、万が一返済できなくなった場合には、信用金庫に対して保証協会が代わりに返済する仕組みです。
信用金庫は保証協会を介することでリスクを軽減できるため、プロパー融資よりも審査が通りやすいのが特徴です。
また、市町村が信用保証協会と提携している「制度融資」を利用すれば、保証料の免除や還付を受けられるケースもあります。
ただし、保証料の負担が発生する点や、信用金庫と保証協会の審査に時間がかかる点はデメリットといえるでしょう。
個人事業主が信用金庫で融資を受ける場合は、審査に通りやすく、比較的低金利で借りられる保証付き融資がおすすめです。
特に、事業実績が浅い場合や、今後の資金調達も見据えて保証協会の実績を積み上げておきたい場合は、保証付き融資を選ぶとよいでしょう。
【保存版】信用保証協会の審査の難易度は?厳しい理由や落ちた原因を解説!
信用金庫から融資を受けられる個人事業主の条件
個人事業主が信用金庫から融資を受けるためには、一定の条件を満たしている必要があります。
信用金庫は銀行よりも個人事業主向けの融資に積極的ですが、事業の継続性や返済能力が重視されます。
確定申告をきちんとしている(事業実態・実績がある)
信用金庫から融資を受けるためには、事業の実態が明確でなければいけません。
そのため、確定申告を毎年しっかりと行い、事業の収益や経費を適切に記録していることが求められるでしょう。開業届の提出はもちろん、確定申告書の控えは必ず必要です。
プロパー融資を利用する場合には、過去3年分の確定申告書の提出を求められるのが一般的です。
また、融資期間中も毎年の確定申告書の提出が必要で、事業収益を継続して証明しなければいけません。
また、確定申告は「青色申告」が理想です。確定申告は済ませていたものの、白色申告で詳細な勘定科目の記録がなく、審査に通らなかったケースもあります。
できれば税理士などの専門家に相談し、正確かつ詳細な記録を残すように努めましょう。
事業計画が立案されている
信用金庫から融資を受けるためには、事業の将来性がしっかりと示されていることが重要です。
「事業計画がある」ということは、中長期的な経営戦略を考えている証拠でもあり、返済計画の具体性を示す材料にもなります。
金融機関の審査では、過去の実績だけでなく、今後の事業の見通しも見られるため、実現可能な計画を提示できる事業者の方が融資に通りやすいでしょう。
実際のところ、個人事業主の多くは事業計画を立てずに経営しているケースがほとんどです。
ただ、事業計画を作っておけば、それだけで他事業者と差別化を図ることができ、積極的な姿勢も評価してもらえるでしょう。
特に創業融資を申請する場合は、より具体的な事業計画を求められるため、事業のビジョンや市場分析、収益見込みをしっかりと盛り込むことが必要です。
【テンプレートつき】事業計画書の作り方をプロが解説!融資時に見られるポイントとキャッシュフローの見直し方
収益力がある
信用金庫の審査では、事業の収益力が大きな判断基準になります。
融資を受ける以上、毎月の返済を継続できるだけの安定した収益が求められるため、赤字続きや収益見込みが不透明な事業者だと、審査通過は難しいでしょう。
特に、資金繰りのために新たな借入を繰り返すような状況では、融資は受けられません。
赤字補填を目的とした融資も、基本的には「否決」となります。
事業の収益力を高めるためには、売上アップと同時に、経費の適正化を意識することも重要です。
例えば、仕入先の見直しによるコスト削減、販売価格の適正化による利益率の向上、サービス改善による顧客満足度の向上などが挙げられます。
こうした努力をすれば、収益の安定性が確保でき、融資審査も有利に進められるでしょう。
事業費と生活費が明確に分かれている
事業資金と生活資金が、しっかり区別されていることも大切なポイントです。
個人事業主の場合、事業の収入と個人の生活費が混同されやすく、いわゆる「どんぶり勘定」になっているケースも少なくありません。
事業用口座と生活用口座が明確に分けられておらず、事業資金が生活費に流用されているような状況だと、信用金庫としても融資の可否を決めにくくなります。
事業費と生活費を分けるには、事業用の銀行口座を開設し、売上の入金や経費の支払いをすべてそこから行うのが理想です。
個人の生活費を捻出する場合は、事業用口座から一定額を役員報酬や生活費として計上しておくと、好印象を与えられます。
実際の審査では、資金管理が曖昧な小規模事業者が少額の融資(50万〜100万円程度)を申し込んだものの、資金の流れが不明確だったために否決されたケースもあります。
個人事業主が融資を受ける際に信用金庫からの印象をよくするポイント
信用金庫は地域密着型の金融機関で、個人事業主に対して柔軟な審査をしてくれますが、それでも審査に通るにはいくつかのポイントをおさえておく必要があります。
メインバンクとして利用する
信用金庫の審査では、日頃の取引状況が重要視されるため、メインバンクとして利用しているのが理想です。
信用金庫では「世帯軒(のき)」という考え方があり、個人事業主本人の取引だけでなく、家族の取引も考慮されることがあります。
例えば、家族が同じ信用金庫で預金をしていたり、住宅ローンを組んでいたりする場合、世帯全体の資産や取引実績が評価され、審査を有利に進められるケースもあるのです。
定期預金やローンはもちろん、公共料金やクレジットカードの引き落とし口座として利用すれば、取引実績を積み上げることもできるでしょう。
他行をメインバンクにしている状態で信用金庫の融資を申し込むと「なぜメインバンクで申し込まないのか?」と理由を問われます。
特に、長年取引している金融機関があるにもかかわらず、信用金庫で融資を希望する場合は、納得できる説明が求められるでしょう。
事業の信頼性を高める
事業の信頼性も重要なポイントとなります。
許認可や営業免許を取得しているかどうかは、事業の適正性や持続可能性を判断する基準の一つです。
許認可が必要な業種では、免許がないと融資の審査対象にならないこともあるため、必ず取得しておきましょう。
また、受注明細表を作成し、安定した受注状況を示すことも有効です。取引先の数や契約の継続性が明確であれば、信用金庫としても事業の安定性を評価しやすくなります。
財務の健全性を高める
融資金が確実に返済できるだけの「財務の健全性があるか?」という点も大切なポイントです。
財務状況が悪化していると、返済能力に不安があると判断され、審査通過は難しくなるでしょう。
財務の健全性を高めるためには、試算表や資金繰り表を適切に作成し、信金の担当者に対していつでも提出できる準備をしておくことが重要です。
会計事務所と連携して財務資料を整備し、最新の事業状況を示せるようにしておくと、審査をスムーズに進められます。
また、事業用の固定性預金を積み上げておくことで、信金に対する信用力を高めることもできるでしょう。
試算表や資金繰り表がなく「財務管理をきちんとしていない状態」だと、財務状況が不透明と判断され審査に落ちる場合があります。日頃から適切な資金管理を行うよう心がけましょう。
【テンプレート付き】資金繰り表の作り方をプロが解説!融資時に見られるポイントとキャッシュフローの見直し方
資産があることを明示する
事業主の資産状況も審査対象となる場合があります。
事業が不振に陥った際に、自己資金で立て直しが可能かどうかは、金融機関にとってリスク評価のポイントとなるためです。
担保提供の必要がなくても、所有する不動産や潤沢な預貯金・株式の保有状況などを明示すれば、審査を有利に進められる場合があります。
一方で、多くの個人資産を保有していたとしても、事業自体の収益力が低く赤字が続いている場合は、返済能力がないと判断され、融資審査に落ちる可能性があります。
事業の健全性を保ちつつ、資産背景を適切に示すことが、信用金庫の審査を通過するための重要なポイントとなります。
地元の発展に貢献している
地域に根ざして事業を展開し、地元の発展に貢献している事業主は信頼性が高いと判断され、融資審査においても有利に働くことがあります。
地域の商店会や組合の活動に積極的に参加し、地元のネットワークを活用している事業者は、信用金庫の理念とも合致するため前向きに評価してもらえるでしょう。
地域貢献を意識する際のポイントとしては、下記のようなものがあります。
- 商店街の活性化に協力する
- 地域イベントのスポンサーになる
- 地元の雇用を創出する
信用金庫から融資を受けることが難しい個人事業主は?
信用金庫は個人事業主にとって心強い資金調達の手段ですが、すべての事業主がスムーズに融資を受けられるわけではありません。
信用金庫は地域経済を支える役割を担っているものの、融資においては返済能力や事業の将来性を慎重に判断します。
そのため、一定の基準を満たしていない場合は、融資が難しくなることがあります。
業歴が浅い
業歴が浅い個人事業主は、信用金庫の審査において不利になりやすい傾向があります。
特に、創業融資を受けた直後に追加の運転資金や設備資金を申し込むケースでは、厳しい評価を受けるパターンがほとんどです。
前回の融資から半年以内に新たな融資を申込む場合も、「リスクが高い」と判断され、融資が否決されることが多いでしょう。
業歴が浅い事業者への融資が厳しいのは、信用金庫が融資を通じて「中長期的に事業を安定させることを目的としているため」です。
信用金庫は、安定的な事業運営が確立されるまで、融資を控える傾向があります。
財務状況が芳しくない
財務状況が芳しくない個人事業主は、いくら審査に柔軟な信用金庫でも、融資を受けるのは難しいでしょう。
毎年連続して所得金額がマイナスである場合や、確定申告で赤字が続いている場合は、返済能力に問題があると判断され、融資が通らない可能性が高いです。
信用金庫は地域企業を支援する目的を持ちますが、慈善事業で融資を行っているわけではありません。
「債権の回収が困難」と判断された場合、融資は見送られます。特に、営業収入が安定していない事業者や、長期的に赤字経営が続いている事業者は、融資を受けることでさらに返済負担が増すため審査に通りにくくなります。
- 3年連続で確定申告の所得金額がマイナス。所得税を一度も納めていないため、事業の継続性が疑われ、融資を見送られた。
- 直近赤字が続いている状況。今後の収益改善が見込めないと判断され、融資が承認されなかった。
取引実績がない
信用金庫との取引実績がない個人事業主も、審査では不利になるケースが多いでしょう。
これまで取引をしたことがない信用金庫に突然融資を申し込んだ場合、ほとんどは審査で否決されます。
信用金庫の審査では、預金や振込・口座振替などの複合取引が重視されます。
事業主が普段から利用していない信用金庫に申し込むと、「なぜメインバンクで融資を申し込まないのか?」と疑問を持たれ、より厳しい審査が行われるでしょう。
- 他の信用金庫をメインバンクとして利用していたが、融資条件が合わずに別の信用金庫へ相談。取引履歴がないため、信用度の判断が難しく、融資を見送られた。
- 事業を始めて数年が経過しているが、信用金庫との預金取引が一切なく、事業の実態が見えづらいと判断され融資が承認されなかった。
事業計画が甘い
売上増加の根拠が不明確など、事業計画が甘いと審査を通過するのは難しくなります。
「黒字ありき」の計画を立てても、その裏付けが弱い場合は金融機関からリスクの高い事業と見なされ、融資は否決されるでしょう。
融資審査では、売上見込みや経費の管理など、事業の持続可能性を具体的なデータとともに説明できることが重要になります。
- 売上増加の根拠が「新規顧客が増える見込み」といった漠然としたものになっており、具体的な戦略が示されていなかった。
- 計画と実績の乖離が大きく、金融機関から「この事業計画は現実的ではない」と判断された。
- 収益モデルが不明確で、事業の収支バランスが見えない計画を提出した。
個人事業主が信用金庫で融資を受けるメリット
個人事業主にとって、信用金庫からの融資は、銀行に比べて審査が柔軟で「地域密着型のサポートを受けられる」というメリットがあります。
信用金庫で事業資金を借りた場合、資金調達のほかに、どのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
地域金融機関としての親身に対応してくれる
信用金庫は、地域密着型の金融機関として、個人事業主に対しても柔軟かつ親身な対応をしてくれるのが特徴です。
資金繰りが苦しくなった際のリスケジュール(返済条件の変更)にも柔軟に対応してくれるため、事業継続のサポートが受けられるというメリットがあるでしょう。
- 信金の営業担当者が事業所まで来て相談に乗ってくれるのは非常に助かる。
- 専門的な融資書類の作成を手伝ってもらい、迅速な対応で融資実行までスムーズに進んだ。
- 銀行では画一的な対応をされることが多いが、信金では実情をヒアリングしたうえで、無理のないリスケジュールを提案してくれた。
信用金庫は単に融資を行うだけでなく、事業運営のパートナーとしての役割も果たします。
そのため、地元で長く事業を続けていきたい個人事業主にとっては、非常に心強い存在といえるでしょう。
信用を積み上げられる
銀行や地方銀行が財務状況などの定量評価を重視するのに対し、信用金庫は事業主の人物像や事業への姿勢、さらには家族の取引実績なども考慮してくれます。
そのため、堅実に事業を運営し、信金との関係を深めておけば、今後もより良い条件で融資を受けやすくなるでしょう。
- 信金の担当者は事業所まで訪問し、決算書や試算表だけでは分からない経営状況をヒアリングしながら、事業の強みや成長性を見極めてくれる。
- 売上や利益といった数値データだけでなく、事業主の経営方針や今後のビジョンを理解し、それをもとに融資の判断をしてくれた。
- 銀行では冷たい対応をされたが、信金では「人を見てくれる」と感じた。
信用金庫は、個人事業主の成長を長期的に支える金融機関です。
時間をかけて取引実績を積み重ねることで、より良い条件での資金調達が可能になり、今後の事業発展にもつなげられるでしょう。
経営サポートを受けられる
信用金庫には、事業の成長を支援する経営サポート機能があります。
企業間マッチングや経営相談にも力を入れており、事業主が抱える経営課題もサポートしてくれるでしょう。信用金庫との取引を続けておけば、今後の事業展開に役立つ人脈も広がります。
- 支店間での企業マッチングを積極的に行い、販売先や仕入先の開拓支援を実施。
- 事業承継やM&A、相続税対策、不動産の有効活用など、専門部署による経営相談が可能。
- 市役所と連携し、税務相談や確定申告書の作成支援を提供。
- 帳簿整理が負担になっていたが、信金を通じて会計士・税理士を紹介してもらい、安心して業務に集中できた。
- 後継者問題に悩んでいたが、信金が開催するM&A相談会をきっかけに事業承継の道が開けた。
信用金庫は資金調達だけでなく、事業運営や経営戦略のサポートを受けられる点が大きなメリットです。
特に、地域に根ざした信金ならではのネットワークを活かした支援は、個人事業主にとって大きな武器となるでしょう。
事業に役立つ情報を提供してもらえる
信用金庫は、単なる融資先としてだけでなく、事業成長を支援する情報提供の場としても活用できます。
地域密着型の金融機関であるため、地域経済の動向や事業に役立つ情報を積極的に提供している点が強みです。
- 経営に関する最新情報や業界動向を定期的に発信。
- 財界人や著名人を招いた講演会を開催し、経営戦略や市場トレンドに関する知識を得られる機会を提供。
- 金融政策や補助金制度の最新情報を提供し、事業成長をサポート。
- 経済評論家の講演会に参加し、新事業への展開のヒントを得ることができた。
- 営業担当者に事業の悩みを相談したところ、的確なアドバイスと具体的な解決策を提示してもらえた。
ちなみに、信金の支店長は本部からも「フットワークの軽さ」を求められており、定期的に小口から大口の取引先を訪問し、事業に役立つ情報を提供するように指導されています。
日頃から信金と良好な関係を築いておけば、貴重な情報を得られるでしょう。
個人事業主が信用金庫で融資を受ける時の注意点
信用金庫は個人事業主にとって融資を受けやすい金融機関の一つですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。
借りやすいからといって無計画に借りてしまうと、将来的に資金繰りが苦しくなる可能性があります。
信用金庫の特性を理解する
信金では、事業者ごとにおおよその信用額を設定し、過剰な借入を防ぐように管理しています。
そのため、業績が良好でも、希望額の融資を受けられるとは限りません。
また、信金は地域経済の活性化を目的に、銀行よりもリスクをとる融資を行うため、金利設定が高くなることがあります。
低金利で借りたいなら、メガバンクや地銀と比較検討することも重要です。
日頃から信用金庫との関係性を築く
信用金庫からの融資をスムーズに受けるためには、日頃から信金との関係を築いておくことが重要です。
メインバンクとして利用することで、信金側に事業の実態を把握してもらいやすくなり、融資審査を有利に進めることができます。
家族の取引も信金に集約し、公共料金やクレジットカードの引き落とし、事業の売上や経費の入出金を信金の口座で行うことが望ましいでしょう。
事業用の取引口座を信金に設けておくことで、事業規模を通帳の平均残高や取引履歴から客観的に示すことができ、審査の際に有利になります。
保証付き融資のデメリットに注意する
保証付き融資は審査が比較的通りやすく、事業資金の調達手段として有効ですが、いくつかのデメリットがある点には注意が必要です。
特に、保証料が発生する点には注意しましょう。
保証協会の保証を利用するためには、融資額に応じた保証料を支払う必要があり、プロパー融資と比べるとコストがかかります。
また、融資実行までの期間も長くなりがちです。これは、信用金庫による審査に加えて、信用保証協会の審査も必要となるため、手続きが二重に発生するためです。
さらに、保証付き融資を申し込む際には、納税証明書や印鑑証明書などの書類を都度提出しなければならない点にも注意しましょう。
保証協会は公的機関であり、納税義務を果たしていない事業主には原則として保証を付けないため、申告や納税の管理がしっかりできていないと審査通過が難しくなります。
安易に借りないように注意する
信用金庫から借りやすいからといって安易に借りてしまうと、大きなリスクを抱えることになります。
信用金庫は、支店長や営業担当者との距離が近いため、資金の相談がしやすいというメリットがあります。
そのため、融資を繰り返すうちに、借りることへの心理的なハードルが低くなり、過剰な借入に陥るケースも少なくありません。
返済のための資金を新たな融資で賄う「資金繰り返済」や「折り返し融資」が常態化すると、最終的に融資残高が減らなくなり、経営の自由度が失われることになります。
追加融資は難しい
個人事業主は短期間での追加融資を受けにくいため、信用金庫で融資を受けたあとは、健全な財務管理を心がけましょう。
特に運転資金を短期間で何度も申し込むのは避けるべきです。
信用金庫は、資金が適切に活用されているかを重視しており、資金使途・金額・期間を厳しく審査します。
短期間での追加融資の申し込みがあると、事業の収益性や資金繰りに問題があるのではないかと疑い、厳しい審査をせざるを得ないでしょう。
個人事業主は、初回の融資で必要な資金を確保できるよう、入念な資金計画を立てておくことが重要です。
個人事業主は創業時でも信用金庫から融資を受けられる?
個人事業主が創業時に融資を受けることは可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。
事業の実績がない創業者に対しては、審査基準が厳しくなる傾向があります。
創業時に融資が可決されるケース
信用金庫で創業時に融資を受けるには、事業計画の確実性や自己資金の有無、事業経験がポイントとなります。計画が明確で、収益の見込みが具体的に示されていれば、信用金庫の審査も通過しやすいでしょう。
事業計画書には、資金の使途や収支見込みを詳しく記載する必要があります。信用金庫によっては、独自のフォーマットが用意されています。フォーマットがない場合は、日本政策金融公庫の事業計画書を参考にするのがおすすめです。
自己資金が潤沢にあると「事業計画の実現性が高い」と判断され、審査はスムーズに進みます。なかには自己資金がなくても審査を行うケースもありますが、ある程度の自己資金を持っているほうが審査に有利です。
業界経験(斯業経験)も重要視されます。長年その業界で働いた経験があると、「適切な経営判断ができる」と判断してもらえます。創業後すぐに売上が期待できる取引先が確保されている場合も、プラスの評価につながるでしょう。
創業融資を受ける際に必要な書類
創業時融資の際は、事業の実態や計画を証明するための書類を準備する必要があります。
- 創業計画書(事業主の経歴書)
- 事業計画書(資金計画書)
- 開業届
- 許認可証(必要業務の場合)
- 賃貸借契約書の写し(貸店舗で開業する場合)
創業計画書には、「なぜこの事業を始めるのか」「どのように事業を運営していくのか」などの具体的なビジョンを記載しましょう。
特に、事業の強みや差別化のポイントを明確にし、金融機関に事業の将来性を伝えることが重要です。
事業計画書では、売上見込みや経費の内訳を詳しく記載し、収支計画を具体的に示します。
販売先や仕入先の情報も記入し、資金の流れが明確に分かるように整理しておきましょう。また、創業時から3年程度の事業見通しを記載し、中長期的な成長戦略を示すこともポイントです。
創業時の融資|日本政策金融公庫と信金融資どちらが良い?
創業融資では、日本政策金融公庫と信用金庫のどちらを利用するべきか迷う方も多いですが、基本的には公庫融資がおすすめです。
実際のところ、信用金庫の窓口で創業融資を相談すると、公庫を勧められるケースも少なくありません。
これは、信用金庫がプロパー融資(保証協会を利用せず独自に融資する方式)に消極的なためです。
日本政策金融公庫は、創業者向けの融資を積極的に展開しています。また、各自治体とも連携し、独自の制度融資を用意しているため、信金に比べて融資の選択肢も多いでしょう。
ただし、信用金庫との取引がすでにあり、メインバンクとして利用している場合は、信金に相談するのも選択肢の一つです。例えば、定期預金の積み立てや住宅ローン、各種引落口座を信金で設定している場合は、審査通過が期待できます。
また、公庫が対応できない部分については、信金と提携して対応するケースもあります。たとえば、公庫が保証協会付き融資を信用金庫と共同で実施するなど、柔軟な資金調達の方法も用意されています。
公庫と信金のどちらがよいかは一概には言えませんが、創業融資に関しては公庫を第一の選択肢とし、信金は補助的に活用するのが賢明な方法といえるでしょう。
【プロ解説】日本政策金融公庫から個人事業主が融資を受ける方法とは?審査や必要書類・金利まで紹介
個人事業主が信用金庫で融資を受ける際によくある質問
信用金庫での融資を検討している個人事業主のなかには、金利や審査通過のポイントなど、さまざまな不安や疑問を抱えている方も多いでしょう。
最後に、個人事業主が信用金庫で融資を受ける際のよくある質問にもお答えしていきたいと思います。
信用金庫と銀行どちらの審査が甘いですか?
どちらも「甘い」とは言えません。
信金も銀行も独自の審査基準を持ち、それを満たさなければ融資を受けることはできないでしょう。
一般的に、銀行は定量評価(財務データや事業実績などの数値)を重視し、事業の成長性や利益率を厳しくチェックします。
一方、信用金庫は定性評価(経営者の人物像、地域貢献度など)も重視するため、銀行よりも柔軟な審査が期待できる場合があります。
ただし、預金や取引実績が銀行に多くある場合は、銀行のほうが融資審査を有利に進められることもあります。信用金庫の方が融資を受けやすいケースもありますが、それは地域経済を支えるという信金の特性によるものです。
いずれにしても、「どちらが絶対に審査が甘い」と断言することはできず、事業内容や取引実績によって結果が変わります。
信用金庫融資の金利はどれくらいが目安?
信用金庫の融資金利は、一般的に2.5%~4.0%が目安です。
ただし、これはプロパー融資や信用保証協会付き融資の場合であり、実際の金利は以下の要素を総合的に判断して決定されます。
- 事業の業歴
- 確定申告の内容(売上・利益の安定性)
- 信金との取引履歴や預金状況
- 信用力(担保の有無や保証人の有無)
- 借入期間(短期か長期か)
実際の金利水準としては、3%台が中心となることが多く、特に1年以内の短期融資や優良な取引先には3%を下回るケースもあります。
金利を低く抑えたい場合は、良好な取引実績を積み上げたり、財務内容を改善したりして信用度を高める必要があるでしょう。
創業して間もないが融資は受けられますか?
創業して間もない個人事業主でも、信用金庫から融資を受けることは可能です。
特に信用保証協会付き融資を利用すれば、創業初期でも審査が通る可能性があります。
ただし、創業時の融資審査では計画性や資金の準備状況が厳しく見られるため、しっかりとした準備が必要です。
創業融資を申込む際は、下記の書類を事前に準備しておきましょう。
- 創業計画書・事業計画書(事業の内容や収支計画を具体的に記載)
- 開業届や許認可証(必要な業種の場合)
- 自己資金の証明(貯金残高の確認書類など)
前年度の決算が赤字でも融資を受けられますか?
前年度の決算が赤字であっても、信用金庫から融資を受けられる可能性はあります。
確定申告書の内容は重要視されますが、表面的な数値だけで審査が決まるわけではありません。融資審査では、事業の継続性や将来の収益見込みも考慮されるため、赤字でも状況次第では融資が可能です。
例えば、以下のようなケースでは融資が通ることがあります。
- 毎期黒字だったが、一時的な要因で赤字になった場合
(一時的な設備投資や取引先の倒産など、明確な理由がある場合、審査で考慮される)
- 減価償却費を加味すると実質的に黒字と判断できる場合
(会計上は赤字でも、キャッシュフローを見れば十分に返済能力があると判断されることもある)
ただし、赤字が連続している場合や、明確な改善計画がない場合は審査通過は難しいでしょう。
事業計画をしっかりと立て、信金に納得してもらえるような説明を用意しておくことが大切です。
取引のない信用金庫でも融資は可能ですか?
取引がない信用金庫でも、融資を受けることは可能です。
ただし、新規取引となるため、審査は通常よりも慎重に行われる点に注意が必要です。
取引がない信用金庫への融資申込みは可能ですが、「なぜその信金に申し込むのか?」という点を明確に説明できないと、融資を受けることはできません。
理由を整理したうえで、事業の実態や収益性をしっかり伝えることが重要です。
どのような種類の融資が利用できますか?
信用金庫では、創業資金・運転資金・設備資金・借換資金など、あらゆる種類の融資を利用することができます。
信用金庫は、公庫や信用保証協会、自治体(役所)などとも密に連携しているため、相談すれば最適な資金調達方法を提案してもらえるでしょう。
また、銀行と比較すると、相談の敷居(ハードル)が低いのも信用金庫の魅力の一つです。
小規模事業者や個人事業主に寄り添った対応をしてくれるため、事業資金に関する悩みがあれば、気軽に相談してみることをおすすめします。
信用金庫で融資を受けるメリットはありますか?
信用金庫で融資を受けることには、多くのメリットがあります。信用金庫は地域密着型の金融機関であるため、地元の事業者であれば、さまざまな支援を受けられるでしょう。
また、信用金庫は「FacetoFace」をキャッチコピーに掲げ、対面での相談を重視しているため、親身な対応が期待できます。事業の課題や、資金繰りに関する相談がしやすい環境が整っている点も魅力です。
さらに、営業担当者を配備しているため、窓口に足を運ばなくても訪問で相談できるなど、フットワークの軽さも大きなメリットです。
地域の発展に貢献する事業者を積極的に支援する姿勢があり、初めて融資を受ける個人事業主にも安心して利用できる金融機関といえるでしょう。
個人事業主が事業資金を借りるには信用金庫の融資がおすすめ
信用金庫は、地域密着型の金融機関として、個人事業主の資金調達もサポートしています。
銀行よりも柔軟な審査が特徴で、創業時でも融資を受けられる可能性は高いでしょう。
ただし、審査を通過するには、事業計画の明確化や取引実績の積み上げなど、いくつかのコツをおさえておく必要があります。
事業資金を借りたいなら、信用金庫をメインバンクとして活用し、日頃から良好な関係性を築いておきましょう。