ビジネスローンは総量規制の対象外となるケースが多く、年収の3分の1以上の借入も可能です。
ただし、総量規制に該当するかどうかは、利用する金融機関や業者・借入条件によって異なるため、対象条件などをよく理解しておくことが重要です。
今回は、総量規制の概要やビジネスローンが対象外となる理由、個人事業主や法人がビジネスローンを利用する際の注意点などを詳しく解説します。
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そもそも総量規制とは?
総量規制は、貸金業法で定められたルールの一部で、「貸金業者からの借入は年収の3分の1まで」と定められています。
総量規制には例外や除外が設けられており、すべての融資が総量規制の対象となるわけではありません。
総量規制は貸金業者が守るべき貸金業法のルール
総量規制とは、貸金業法によって定められたルールで、個人の借入総額が年収の3分の1を超えないように貸金業法改正時に定められました。
なお、総量規制は貸金業法の対象となる貸金業者(消費者金融や信販会社など)を利用したときに適用され、銀行や信用金庫・信用組合は対象外となっています。
この規制が導入された背景には、消費者が過度な借入により返済困難や多重債務に陥ることを防ぐ目的があります。
消費者の生活の安定と経済的な安全を守ることを目指すためのルールで、大手消費者金融やクレジットカード会社は総量規制に基づき融資額を制限しています。
総量規制には「例外」と「除外」がある
総量規制には「例外」と「除外」の2つの仕組みがあります。
それぞれ、「年収の3分の1を超えた借入ができる」という点は同じですが、いくつか違う点もあるため、下記比較表を参考にそれぞれの概要を理解しておきましょう。
【例外貸付の定義】
総量規制の基準となる借入残高に含まれるものの、特定の条件を満たす場合、年収の3分の1を超えても借入が認められる貸付のこと
- 顧客に一方的に有利となる借換え
借入条件を改善するための借り換えで、顧客の返済負担が軽減される場合
- 借入残高を段階的に減少させるための借換え
借金の減少を目的とした借り換え
- 緊急の医療費を工面するための借入
顧客やその家族が緊急の医療費を支払うために必要と認められる借入
- 社会通念上緊急性の高い借入
10万円以下で3ヵ月以内の返済が要件となる短期的な借入
- 配偶者の同意を得た借入
配偶者と合わせた年収の3分の1以下の借入
- 個人事業者向けの貸付
事業計画や収支計画に基づき、返済能力を超えないと認められる場合の借入
- 新規事業のための借入
新たに事業を始める個人事業者向けで、事業計画が求められる場合の借入
- つなぎ資金
金融機関からの融資で1ヵ月以内に返済できる借入
【除外貸付の定義】
総量規制の基準となる借入残高に含まれず、借入に制限がかからない貸付のこと
- 住宅ローン
持ち家の購入や建設のための借入
- 自動車ローン
車両購入のための借入
- 高額療養費の貸付
高額医療費を工面するための借入
- 有価証券を担保とする貸付
株式や債券を担保にした借入
- 不動産を担保とする貸付
個人顧客の居宅以外の不動産を担保とする借入
- 売却予定の不動産を担保とする貸付
売却代金によって返済されることが前提となる借入
参考:日本貸金業協会公式サイト「総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります」
「例外貸付」「除外貸付」ともに、返済能力に問題がなければ年収の3分の1を超えた借入も可能です。
ただし、例外貸付で借りた金額は「年収の3分の1以内の借入」として算入されてしまいます。
たとえば、年収600万円の人が例外貸付で300万円を借りた場合、その時点で年収の3分の1を超えているため、新規で消費者金融カードローンやクレジットカードでのキャッシングはできなくなります。
参考:日本貸金業協会公式サイト「お借入れは年収の3分の1までです」
法人の借入はそもそも総量規制の対象外
法人の借入は、総量規制の対象には含まれません。これは、貸金業法による総量規制が個人向けの融資を対象とした規制であり、法人向け融資には適用されないためです。
総量規制は、過剰な借入や多重債務から個人を保護する目的で設けられたルールです。
一方、法人向けの融資は、事業活動を支援するためのものとして性質が異なるため、この規制の対象外とされています。
法人が融資を受ける場合、審査の基準となるのは法人の事業計画や収支計画、返済計画などです。
これらの要素をもとに融資の妥当性が評価されるため、代表者個人の年収は直接的には影響しません。
そのため、法人向け融資では、代表者の年収の3分の1以上の金額が借りられる場合もあれば、事業計画や返済能力に応じて少額融資しか受けられない場合もあります。

銀行・ネットのビジネスローンは法人・個人事業主とも総量規制の対象外
銀行やネット銀行が提供するビジネスローンは、総量規制の対象には含まれません。なぜなら、これらの金融機関は貸金業法ではなく、銀行法に基づいて運営されており、総量規制の制限を受けないためです。
銀行やネット銀行が貸し手となる場合、すべてのローンが総量規制の対象外となります。法人向けや個人事業主向けのビジネスローンも同様で、返済能力に問題がなければ年収の3分の1を超えた借入も可能です。
ただし、銀行やネットのビジネスローンでは、下記の要素が厳しく審査されるため、必ずしも「全員が年収の3分の1を超えた借入ができる」というわけではありません。
銀行法では、融資先の返済能力を適切に判断する義務が課されています。そのため、銀行やネット銀行は厳格な審査基準を設けています。
- 借り手の収入や売上
- 資産状況
- 事業の状況
- 信用情報
これらを総合的に評価し融資額が決定されるため、借入額が代表者個人の年収の3分の1を超える場合でも、返済能力が認められるなら融資は実行されるでしょう。
ただ、一部のビジネスローンでは担保や保証が求められることがあります。
特に、代表者が保証人となるケースでは、保証人個人の年収も判断材料の一つとなる場合があるため、個人年収が少ない場合は審査に落ちるケースもあります。
貸金業者のビジネスローンは法人借入なら総量規制の対象外
貸金業者が提供するビジネスローンは、法人が借りる場合に限り「総量規制の対象外」となります。総量規制は個人消費者を保護するために設けられたルールで、法人は事業活動から発生する利益で返済していくため、総量規制の適用対象外とされています。
ただし、法人向け融資では返済能力に基づいた審査が行われるため、事業計画・収支計画・返済計画などにもとづき返済能力が評価され、適切な融資額が決定されます。
法人の融資額が大きくなる場合もあれば、収益状況や計画次第で「審査に落ちる可能性がある」という点は覚えておきましょう。
法人であっても、無計画な借入は経営に悪影響を及ぼす可能性があります。ビジネスローンを利用する際は、将来にわたる事業計画やキャッシュフローを十分に考慮し、慎重に検討しましょう。
貸金業者のビジネスローンは個人事業主なら総量規制の例外
貸金業者のビジネスローンは、個人事業主が借りる場合には総量規制の「例外貸付」に該当します。事業関連の資金用途である場合は、「個人の収入に基づく返済ではない」と定義されるため、総量規制の例外扱いとなるのです。
総量規制の例外に該当するとはいえ、無制限に借りられるわけではありません。貸金業者は事業計画や収支状況を精査し、返済能力に見合った融資額を判断します。
そのため、個人事業主がビジネスローンを利用する際は、収益や資金繰りの見通しを正確に立てることが求められます。
不動産担保ローンは基本的に総量規制の除外貸付だが自宅担保の場合は対象になる
不動産担保ローンは、基本的に総量規制の「除外貸付」に該当し、年収の3分の1を超える借入ができる場合もあります。しかし、自宅を担保に入れる場合には総量規制の対象となるため注意が必要です。
【総量規制の「除外貸付け」に分類される契約】
次の貸付けは、総量規制になじまない貸付けとして、総量規制の「除外貸付け」に分類されます。総量規制にかかわらず借入れが可能で、借入額が借入残高に算入されないため、その後の借入れには影響を与えません。
日本貸金業協会公式サイト「総量規制の「除外貸付け」に分類される契約」
⑤不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け
これは、自宅を担保にした融資を受けて返済不能に陥った場合、生活の基盤である自宅を失うリスクが生じるためです。
こうした状況が起こると、借り手だけでなくその家族にも大きな影響を及ぼします。
法律では、生活基盤を守るための保護措置として、「自宅を担保とする融資については総量規制の対象」とする場合があるのです。

個人事業主がお金を借りるならビジネスローンがおすすめ
個人事業主がお金を借りる方法としては、いくつかの選択肢があります。
- 銀行融資(信用保証付き融資)
- 日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの融資
- 信用金庫や信用組合を通じた融資
- ビジネスローン
それぞれに特徴がありますが、個人事業主がお金を借りるならビジネスローンがおすすめです。ビジネスローンは、他の融資と比べて資金使途の制限が少ないため、仕入れ資金・運転資金・広告費・人件費など、多様な用途でも使えるのが特徴です。
また、審査が比較的早く進むことから、短期間で資金調達が可能で、急な資金ニーズにも役立ちます。
手続きがシンプルで、オンラインで完結できる商品も多く提供されており、忙しい事業主にとっても最適なローンといえるでしょう。
また、ほとんどのビジネスローンでは、担保や保証人を求められないため、事業資金を調達する際のハードルが低い点も魅力的です。

ビジネスローンと総量規制の関係|まとめ
個人が生活費目的で貸金業者からお金を借りた場合は総量規制が適用されますが、法人向けの融資や個人事業主の借入には原則適用されません。
銀行やネット銀行のビジネスローンはすべて規制の対象外で、貸金業者のビジネスローンも法人や事業目的の場合は対象外です。
ただし、規制対象外でも過剰な借入はリスクを伴います。
また、不動産担保ローンで自宅を担保にする場合など、例外的に規制の対象となるケースには注意しましょう。ビジネスローンを利用する際は、自身の資金ニーズや返済能力を十分に確認しておくことも重要です。