社員の失敗を次の成功に結びつける方法
更新日:2012年07月04日
同じ失敗を何度も繰り返す社員がいます。その都度、上司からも社長自らからも厳しく注意しているのですが、指導の仕方が悪いのか、全く改善される余地がありません。一体何が悪いのでしょうか?
回答
失敗は誰にでもあることです。重要なのは、そこから教訓を学び、その失敗を繰り返さず、次の成功に結びつけてゆくことです。正しい指導の仕方ができておれば、社員の失敗を次の成功に結びつけてゆくこともできます。
解説
失敗の原因は本人ではなかなかわからないものです。優秀な社員であれば、自らその原因を突き止め、次の成功に結びつけることができるでしょうが、皆が皆、そのような社員であるとはかぎりません。また、社員本人の過去の成功要因が今の失敗の原因になっていることさえありえます。その場合、本人はその失敗要因を成功要因だと思い込んでいることになります。自分自身の失敗の原因は、本人ではわかりにくい部分もあるのです。
まず、相手の話を聴きましょう
さて、では社員の失敗に対して上司や経営者はどのように対処するかですが、まず、相手の話を聴くことから始めましょう。頭ごなしに「ダメじゃないか」と責め立てるのはよくありません。本人はそれを善かれと思って判断し行動したのかもしれません。まず「なぜ、そのような判断をしたのか」「なぜ、そう考え行動したのか」を聴く姿勢が大事です。
このとき、可能であれば本人含む複数の人から話を聴くことが望まれます。1人だけからのヒアリングでは真実は一面しか見えてきません。重大な問題が含まれているような場合は、必ず、本人を含め関連する複数の人から話を聴くようにしましょう。
改善すべき点を指摘し対策を提示してあげましょう。
話をよく聴き、失敗の背景を正しく確認したら、その判断や行動のどこに間違いがあったのか(あるのか)を考え、見つけ出してあげます。指導する側と指導される側との間には、まず経験値に大きな差があるものです。相手にはわからなくても、経験値の高い上司や経営者であれば、その高い見地や見識から、なんらかの問題点や改善すべき点を見つけ出すことが可能です。
相手の話を聴き、問題の箇所を発見したら、次は、改めるべき方向を提示してあげます。人には、自らが本当に納得しなければ動かない、という性質があります。一方的に「こうしなさい」「こうすべきだ」と言うのでは、相手は真に納得はしないし、また、納得しないままに行動しても、対処療法的には改善できても、問題の根本が見えていないと、少し状況が変わった場面では、また似たような失敗をしてしまいがちです。同じ失敗を繰り返させない為に、相手が本当に納得し、自然に(自主的に)行動できるように改善策を提示することが大事です。
【参考例】
ここで、一つの例を挙げてみましょう。
あるマッサージ店では、従業員の失敗に対して改善するような指導がきちんとなされていませんでした。店舗間にも距離があり、かつ指導者が一箇所に常駐できないという状況でもあったので、従業員の失敗は見過ごされるか、認知されても状況をよく知らない指導者が一方的に叱責するだけで終わってしまうケースが多かったのです。
そこで、コンサルティングをさせていただいた際に、私は、全従業員が週報を毎週出すことをルールとして導入させていただきました。従業員たちが週報の中で毎週自身の行動や失敗したことを振り返り、その背景などを彼らなりに分析するよう習慣づけるようにしたのです。そうして、指導者は全員の週報を読み、詳細はメールなどでやりとりをすることで、彼らの職場の事情を正しく知り、適宜、適切なアドバイスができるようになりました。
その結果、従業員のミスは減り、生産性が向上したのは言うまでもありません。さらに、従業員たちも自主的に互いの業務に対し関心を持ち、改善策を提案しあうような組織風土へと変わりました。上の事例は、全従業員が週報を提出するようになってから4ヶ月の間での出来事です。
自らの業務や行為を振り返り、問題の本質を見つけ出し、その改善策を得ることができてこそ、人は正しい方向へと動き出し、失敗を成功に結び付けていけるのだといえます。
著者クレジット |
中小企業診断士 石田雅子(いしだ・まさこ) |
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