事業のフランチャイズ展開を考える
こんなときどうする?
更新日:2012年12月26日
飲食店を経営していますが、自社事業をフランチャイズ展開したいと考えています。事業のフランチャイズ化を推進するために抑えておくべきポイントなどをご教示下さい。
回答
自社事業のフランチャイズ化に際しては、フランチャイズ展開しようしている事業に関する充分な市場分析、ビジネスモデルの構築とパッケージ化、競合他社との差別化など、さまざまな課程を経る必要があります。
解説
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(略称:JFA)の定義によると、フランチャイズとは、下記のように定められています。
「事業者(フランチャイザーと呼ぶ)が他の事業者(フランチャイジーと呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネーム、その他の営業の象徴となる商標、及び経営ノウハウを用いて同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行なう権利を与え、一方フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導及び援助のもとに事業を行なう両者の継続的関係」
フランチャイズ化を推進するために抑えるべきポイント
フランチャイズの仕組みにおいては、本部企業が加盟企業に経営ノウハウ等を伝える対価として、加盟企業は本部企業にロイヤリティを支払います。したがって、ロイヤリティに値するノウハウを提供できなければ本部企業と加盟企業との信頼を築くことはできず、フランチャイズ事業は成り立ちません。また、充分な収益を上げることのできるマーケットが存在していることもフランチャイズ事業には大切です。
フランチャイズ化を推進するために抑えるべきポイントは、おおむね以下の4点にまとめられます。
1.充分な収益を上げ続けることのできる業種・業態であること
フランチャイズビジネスでは、加盟店がそのビジネスに取り組むことによりある程度の収益が確保できることが求められます。このため、当然のことながら、その事業そのものが充分な収益を生み出せるものでなければなりません。事業のマーケットが非常に小さい場合、加盟店が増えるほど市場のパイを取り合う形になり、1店舗あたりの経営は苦しくなるという結果になってしまいます。
フランチャイズ化を推進するに際しては、まず、商圏人口や法規制の動きなどに関する市場調査を行ない、将来にわたって充分な収益を確保し続けるだけのマーケットが存在しているかどうかを確認しておく必要があります。また、この市場調査で、店舗に適した地域や条件も明らかにしておきます。そして、新規出店する店舗は必ず適した地域や条件を満たすものに限り、充分な店舗収益を確保できるようにします。
2.利益をきちんと出すことのできるビジネスモデルであること
フランチャイズビジネスでは、加盟企業がそのビジネスに取り組むことで利益をきちんと出せることも求められます。本部企業自身が利益を確実に出せるノウハウを持っていることもフランチャイズ化を推進するに際しての重要なポイントとなります。
また、利益を出し続けるということは、競合他社が出てきた場合でも、価格競争や非価格競争に負けないということでもあります。他社に真似の出来ない高度なノウハウや強みを持っていることも重要なポイントです。
3.再現性の高いビジネスモデルであること
フランチャイズビジネスは、本部企業の持つ「経営ノウハウを用いて同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行なう」ことができるものでなければなりません。すなわち、本部企業の経営ノウハウは、加盟企業がそのまま再現できるものでなければならないわけです。
フランチャイズ化を推進するに際しては、本部企業の経営ノウハウはすべてマニュアル化され、加盟企業に提供されます。そのため、どのような加盟企業でも等しくその事業を展開できるような、再現性の高いノウハウを有していることが必要とされます。
4.ノウハウをブラッシュアップできる体制を整えていること
成功しているビジネスには必ずと言っていいほど、模倣したビジネスが生まれ追随してきます。たとえ、成長市場で再現性のある優れた経営ノウハウを持っていたとしても、競合他社の激しい追随に対しては、スピーディーな対応ができなければ成功し成長し続けることはできません。
フランチャイズ事業展開後の競合他社の出現まで考慮に入れて、ノウハウをブラッシュアップできる仕組みを構築しておくと良いでしょう。たとえば、優良な加盟店舗による創意工夫や成果を発表し合い表彰する場を設ける「表彰制度」の導入などは、本部企業と加盟企業が共に発展していける仕組みとして有効だと言えます。
事業のフランチャイズ化に際して必要とされるもの(加盟企業への提示物)
事業のフランチャイズ化に際して必要とされるものは、多岐にわたりますが、加盟企業への提示物としては主に以下のものが挙げられます。
・初期投資モデル
これは、企業がフランチャイズへの加盟後、事業を開始するまでに何にどの程度の費用がかかるか、という標準的な数値です。この初期投資モデルに含まれる主な項目としては、物件取得費(敷金・保証金など)、建設工事費(店舗工事費・厨房設備施工費・設計費用など)、什器備品購入費用、開業費(開業前家賃・採用費・販売促進費など)などがあります。
・収支モデル
これは、当該ビジネスを展開した際の標準的な収支計画です。店舗ビジネスの場合、立地や店舗規模などに応じて収支計画も大きく異なるものですので、収支計画では、数値の前提となる条件を明記するとともに、あくまでも標準的なモデルであることを明示しておく必要があります。
収支計画の期間は、少なくとも投資回収が完了するまでの期間であることが望まれます。
・運営マニュアル
実際にどのように当該事業を進めていくかについてまとめたマニュアルを作成します。マニュアルは可能なかぎり詳細であることが望ましく、補足すべき点は、店舗指導員(スーパーバイザー)が店舗で直接指導します。
マニュアルは業務の種類毎に作成し、人材教育マニュアル、店舗オペレーション・マニュアル、調理マニュアル、緊急時対応マニュアル、などを揃えます。
・開業までのスケジュール
フランチャイズ加盟契約後から事業をスタートするまでの一連の流れについてまとめたものです。加盟金の入金、物件探索の開始、人材採用、研修スケジュールなど、開業に必要なすべての項目について、標準的なタイムスケジュールを作成します。
最後に
本部企業は、新商品開発や加盟店サポートをどのように行なっていくのか、などといった本部機能を構築し、そして実際に滞りなく運営していく必要があります。フランチャイズチェーンにおける本部企業の役割は非常に大きく、そして重大です。本部企業、加盟企業共に、成功・成長し続けていけるよう、充分に検討したうえで、フランチャイズ化を推進していかれることをお薦めします。
著者クレジット |
中小企業診断士 石田雅子(いしだ・まさこ) |
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