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北朝鮮の核実験をどうみるか? 経営者に必要な複眼的見地 

更新日:2007年07月05日

昨年来、ミサイルの発射や核実験、青森県に漂着した「脱北者」の問題など、お隣の北朝鮮をめぐってキナ臭い感じがしますね。朝鮮半島は、歴史的に日本と関わりの深い地域ですし、わが国にはたくさんの在日朝鮮人、韓国人の方が住んでいます。特別の隣人というべき国が北朝鮮と韓国なのです。


 
写真はイメージです
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武器の存在や数だけが「戦争力」ではない

日朝関係には、6カ国協議のテーマである核開発問題や拉致問題など、乗り越えがたい障害が横たわっています。しかし、平和な国内・国際環境のもとでの経済発展に貢献する企業人としての立場にある方々は、ぜひ安定した地域の国際関係が確立されて共存共栄の発展を図っていけるようになってほしいと願っています。

こうしたことを考えるとき、事を政府まかせにしたり、マスコミ報道を鵜呑みにしたりすることなく、私たちが主権者として確かな目をもつことこそ民主主義国家であるわが国を正しく導く土台になると思います。そのうえで、今日は物事を複眼的に見ることの大事さを、ミサイルや核問題を例に考えてみます。

軍事アナリストの小川和久さんが唱える言葉に、「戦争力」というものがあります。国家が戦争を行なう力のことで、単に武器や兵隊の数で力を測るのではありません。背景にある総合的な国力、民間を含めた経済力や資源獲得力、国民の基礎体力とモラル、国際関係のなかで、その国を支持する国家の多寡や有無、歴史的に形成された伝統や指導者たちの力量など、あらゆる要素が関わってきます。

こうした立場でみるならば、ミサイルを撃ったり国際的な非難をものともせずに核実験を強行したりした北朝鮮は、どのような国なのか? 日本にとって、どれほどの危険があるのか?

テレビでは、よく「日本に北朝鮮のミサイルが飛んできたら…」という話がされ、恐怖を煽っています。でも、戦争はミサイルを発射しただけではできません。戦争は、始めること以上にどのように終わらせるか、つまりどのような決着をつけるかが大事なのです。ミサイルを発射した後、北朝鮮にはどのような切り札があるのか? みなさんは、何だと思いますか?

私は、率直にいって何もないと思います。じつは、北朝鮮軍は兵力が100万人以上で日本の自衛隊の総兵力の4倍もの大きさがあります。しかし、それでも北朝鮮には、戦争の決め手がない。

一番わかりやすい例をいうなら、北朝鮮には軍隊を戦争で動かすほどの石油はなく、輸入もできないということです。石油がなければ、ジェット戦闘機も戦車も軍艦も、ピクリとも動きません。どうでしょう? どんなに兵隊の数が多くても、これらが海を渡って日本に脅威を与えることなど、逆立ちしてもできないのです。

石油の精製能力が示す真の国力

では、いま述べた兵器を動かす石油がないということの根拠は何なのでしょうか? 石油はほとんどの場合、原油の状態で取り引きがされています。パイプラインでもタンカーでも同じです。

原油で輸入されたら、それを精製してガソリンや灯油、ジェット燃料、軽油、重油などの製品に加工しなくてはなりません。北朝鮮には現在、年間150万トン分の能力しかない石油精製施設が、たったのひとつしかないのです。

そして、最近まで中国から原油が安定的に供給されていましたが、その量はパイプラインを通して年間50万トン。以前は、これにアメリカから供与された50万トンが加わり、さらにその他の国からもタンカーを使って若干入っていたようですが、いずれにしろ年に150万トンを超えたことはなく、超えれば精製能力を超えてしまうことになります。

ちなみに、日本の年間原油輸入量は、数億トン単位で北朝鮮の数百倍です。石油の調達量は、それぞれの国の近代化水準を忠実に反映するとされていますが、同時にいかなる兵器も燃料なしでは動かない以上、戦争遂行力に大きく関わってきます。

これだけ見ても、北朝鮮が日本にくらべて、いかほどの「戦争力」をもつかが、極めて正確に判断できます。実際、ミグ戦闘機とともに亡命してきたパイロットの証言で、北朝鮮空軍パイロットの年間飛行時間が韓国空軍の10分の1以下にすぎないわずか35時間程度しかないことがわかっています。これで勝負になるでしょうか?

核開発固執の本当の理由は…

じつは、こうした背景こそが、北朝鮮の核開発固執の裏にあるのです。弱い「戦争力」を、核開発を後ろ盾にした外交力で補い、体制を維持しようというのですね。こう考えると、ミサイル発射や核開発にだけ目を奪われて、過度に隣国への恐れを強めるのは間違いのように思われます。真の背景を、表面上の数字や現象にとらわれず複眼的な視野で本質を見極めることが大事でしょう。

こうしたことは、ビジネスの現場でライバル社や業界の動向を見極めるうえで教訓的です。ぜひ、みなさんも複眼的視野で物事を見つめていただきたいと思います。

以上の話は、重村智計(しげむら としみつ)さんの著書『挑戦半島「核」外交 北朝鮮の戦術と経済力』(講談社現代新書)を参考にしました。関心のある方は、ぜひご一読ください。

文:軍事ライター 古是三春

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