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相反する二つの価値観を統合するストックデールの教訓

更新日:2007年04月26日

先日、イランにおいてイギリス軍兵士が拘束されるという事件が発生し、大きな問題となった。結局は外交活動により解決し、無事に本国に帰還したわけだが、一連の報道を見聞きし思い出したのが「ストックデールの逆説」。「ビジョナリーカンパニー2」などのビジネス書に掲載をされているので、多くの方がご存知かもしれないが、あらためて紹介したい。


未来の見えない捕虜収容所の生活

ストックデール氏は、ベトナム戦争の最盛期、「ハノイ・ヒルトン」と呼ばれたホアローの捕虜収容所に収容されたアメリカの軍人のなかで、最高位だった人物だ。1965年から73年まで8年間におよぶ捕虜生活で、20回以上にわたって拷問を受け、いつ釈放されるか、生きて帰れるのかすらわからないままの状況を過ごした。

「ビジョナリーカンパニー2」の著者、ジェームズ・C・コリンズは戦後、ストックデール氏にインタビューを試みる。「生きて帰れるかどうかがわからないなか、なぜ苦境に対処できたのか?」と。

ストックデール氏の答えはこうだ。「私は結末について確信を失うことはなかった。ここから出られるだけでなく、最後にはかならず勝利を収めて、この経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにすると」。

一方で「耐えられなかったのは、どういう人ですか」との問いにストックデール氏は、間髪いれず「楽観主義者だ」と答える。「楽観主義者はクリスマスまでには出られると孝える。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。次は感謝祭、そして次はまたクリスマス。失望が重なって死んでいく」。

相反する二つの価値観を統合すること

そのうえでストックデール氏は言葉を続ける。
「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない」

すなわち「最後にはかならず勝つという確信」と「現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律」という相反する価値観を同時に有し、自らのものとしていくこと。これが「ストックデールの逆説」と呼ばれるものだ。

我々の日常のなかでも同様のことは多分にある。「商品の開発スピード」と「高い完成度」、「クオリティの高さ」と「コストの低さ」……。相反する二つをいかに統合し、新しい何かを生み出すことができるか。企業にしても、人材にしても、そのカベを乗り越えることは決してたやすくないが、そこに生き残りのポイントがあることを忘れてはならない。

ストックデール氏の話のなかで興味深いのは、「ハノイ・ヒルトン」での生活中に捕虜だけがわかりあえるモールス信号のようなコミュニケーション法を開発し、互いに連絡をとりあっていたということ。お互いにメッセージをやり取りすることによって捕虜たちは、強まる孤独感や絶望感を打ち破り、耐えぬく力を発揮できたというのだ。人生で直面するさまざまな課題に立ち向かおうとする私たちに対して、大きな示唆を与えてくれる。

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