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再起できた元スーパー経営者は原点に立ち続ける

更新日:2005年12月01日

一家心中まで追いつめられた元スーパーマーケット経営者は、チリ紙交換を機に再起を果たした。やがてチリ紙交換で収集した書籍で古書店を開業。原点に帰り、汗を流して稼ぐ。この鉄則を守ったことが再起にむすびついたのだ。


 
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チリ紙交換から再起をスタート

明け方、一家4人で富士の樹海に入り込んで睡眠薬を飲もうとしたが、どうしても飲めなかった。軽トラックの中では何も事情を知らない子どもが寝ていた。「ふたりの子どもの寝顔を見たら、どうしても死にきれなくなってね・・・」。Mさんはたんたんと振り返った。

スーパーマーケットを経営していたMさん。バブル崩壊ののち、親類、友人、知人をふくめてあらゆる先から借金をしつくした挙句、倒産した。債権者から詰め寄られ、脅される日々。ついにMさんは一家心中を決意するまでに追いつめられたのだった。

樹海から引き返したMさん一家は親類宅に身をよせ、Mさんは親類の紹介で再起をサポートするコンサルタントを訪問した。コンサルタントはMさんにどんな仕事をさせれば再起できるかを考えた。再起するには、まずは原点に帰ることが基本である。働くことの原点は、汗を流したぶんだけ稼げること。汗を流さなければ稼げない。この方針から、コンサルタントは再起をサポートしている。

そのとき、Mさんに残された財産は軽トラックが1台。これを活用して原点に帰る手段とは何か。コンサルタントはチリ紙交換をすすめた。Mさんはスーパーを経営していたときに、チリ紙交換業者とは接触があった。ダンボールを収集に出入りする業者とチリ紙を交換していたのだ。今度は立場が入れ替わったのである。

Mさんは悪天候で同業者が休むような日でも働いた。コンサルタントはMさんに新聞や雑誌を集めるなかで、単行本がまじっていたらストックしておくように指示した。それから1年。Mさん一家が暮らすアパートに一室は単行本で埋まり、布団を敷くスペースに事欠くようになった。

コンサルタントは次の指示を出した。Mさんに古物商の免許を取得させて、古本の移動販売をさせ、さらに移動販売でいちばん集客できる地域で店舗を借りる計画をたてた。Mさんは移動販売で15〜16カ所を回るうちに、ある商店街に目をつけ、その一角に10坪の店舗を借りた。開店資金はコンサルタントが有志を募って調達した。

原点に立つことは精神論でなく戦略論

古書店を開業できたMさん。しかし汗を流すことはやめなかった。昼間は夫人に店を任せてチリ紙交換を続け、夕方以降はみずから店に立ったのだ。夫婦での二人三脚。こうした家庭は危機に強い。家族が結束するか、バラバラになるかはいわば、危機を乗り越えられる生命線である。やがてMさんは債権者への返済を開始し、ふたりの子どもは道を踏みはずすことなく無事に大学を卒業して社会へ巣立ったのだった。

Mさんのスーパーは全盛期には約20名の従業員がいた。Mさんはスーパーの繁盛とともに、汗をかくという仕事の原点から離れつつあったというが、家族が結束して原点に帰れたからこそ、再起がかなったのだ。

原点に立つことの意義は、なにも再起にかぎったことではない。どんな高業績をあげようと改善の手を緩めないトヨタ自動車、成功体験を否定し続けて仮説→実行→検証を繰り返すセブン・イレブン。ともに、それぞれの原点からけっして乖離することはない。おもしろみがないといえばそれまでだが、すべては結果である。

ある中小洋菓子メーカーの経営者は、投資活動を昔からいっさいやらないという。経営者は断言した。
「株価も不動産価格もこちらの努力でコントロールできませんよね。うちは自社でコントロールできないことにはかかわらない方針なんです。バーチャルな世界で儲けるのじゃなく、たとえば、工場で誰それが休んで困っているとか、誰と誰の仲が悪くてギクシャクしているとか、そんな人間臭い空気のなかで経営することが、長い目でみればいちばんです」

企業規模や業績にかかわりなく原点に立ち続けること。これは精神論ではなく、オーソドックスな戦略論である。

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