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感謝の気持ちはかくあるべし 行列が40年続くラーメン店の本質

更新日:2005年07月14日

40年以上にわたって行列が続く東池袋のラーメン店「大勝軒」。店主の山岸一雄さんはラーメン界のカリスマとしてあまりにも有名でだが、たんなる人気店の域を超えた「大勝軒」の生命力を支えている要素は、意外にシンプルなものだった。


 
東池袋で営業する「大勝軒」の行列は40年以上も続いている
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素材に感謝しなければ素材を活かせない

感謝の気持ちをもて。書店に居並ぶ成功哲学本には必ずそう書かれてある。名刺に「出会いに感謝」と刷り込む人もいるし、社是・社訓に感謝という言葉を用いている企業も多い。感謝を否定する人はまずいないだろうが、感謝の価値は、その大切さを説く人にかかっている。虚しく聞こえず、胸に響くかどうかは、ひとえに“人物としての説得力”の問題だ。

感謝の価値を説くに価する人物かどうか。たとえば長年にわたって多くの信頼をえた人物が、感謝の価値を説けば素直に耳を傾けたくなるものだ。東京・東池袋の「大勝軒」店主、ラーメン界のカリスマで知られる山岸一雄さんも、そのひとりである。大勝軒の創業は昭和36年(前身の中野「大勝軒」は昭和30年創業)。以来40年以上、毎日行列が途絶えず、いまもなお行列が続く。

山岸さんは、満足できないスープが仕上がると捨ててしまう料理人に疑問を投げかける。素材を扱う姿勢に問題があるのだと。スープの素材は元をたどれば、肉、魚、野菜などそれぞれが生命であり、スープを捨てることは生命を軽んじている証拠である。多くの生命をもらってスープは作られるのだから、素材に感謝の気持ちをもたなければ素材を活かせず、美味しいスープを作れるはずがない。そう指摘するのだ。

山岸さんは、カウンター越しにお客にあれこれと注文をつける店主ではない。いつも黙々とラーメンを作っている。しかし、あえて口に出さなくても山岸さんの思想がお客にも伝わっていることは、お客の振るまいに現われている。大勝軒のお客は食べ終わった後に器を自分で下げる。これは店側の要請ではなく、客のあいだで自然にできあがったルールなのである。

以心伝心だ。お客が自分で器を下げる行為は、美味しいラーメンを作ってくれた山岸さんへの感謝の証しとみてよい。きっとお客は無意識のうちに、山岸さんから感謝の気持ちを学んでいるのだろう。美味しさだけではなく、あえていえば心が洗われるような清々しさ。だからこそ、40年以上も行列が続いているのだ。

どんな高級食材にも勝る最高のスパイス

お客への感謝の気持ち。これも山岸さんが最重要視するひとつである。自著「これが俺の味」(あさ出版刊)で、山岸さんは端的に述べている。
<「精一杯努力して、美味しいものをつくって、お客さんに喜んでもらいたい」これこそが、どんな高級食材にも勝る最高のスパイスなのである>

飲食店主なら、皆が皆そうではないかもしれないが、ほとんどの店主はお客への感謝の気持ちをもっている。だが、マスコミに取り上げられて有名店になると、それが薄れかけてしまうのが凡人である。一過性の人気店で終わることを「マスコミに消耗される」という。一面の真実だが、大勝軒がこれだけマスコミに登場しているのに、なぜ消耗されないのだろうか?

理由は明快だ。感謝の気持ちを失わないからである。山岸さんは、売り上げの落ちた店が思いつきで新メニューなどに走ることを強く戒める。初心に返らずに、つまり感謝の気持ちを持ち直さずに小手先に走ると、「心」を取り戻せずに、やがてお客からの支持を失っていくというのだ。

素材への感謝、お客への感謝。シンプルなテーマだが、長年にわたって持ち続けることは、文字どおり行なうは難し。これは、ひとつの技術ととらえたほうがよい。感謝の気持ちを持ち続けるという卓越した技術が、山岸さんをラーメン界のカリスマに押し上げた原動力ではないのか。

「これが俺の味」の帯に掲載された推薦文を書いたのは、キヤノンの御手洗冨士夫社長である。学生時代に山岸さんのお客だった御手洗社長は推薦文に「大勝軒の味は山岸さんの“心の味”」と寄せた。この推薦文を美辞麗句と受け止めず、「そうだ!そのとおりだ!」と共感する常連客は多いと思う。

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