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『日本一メルセデス・ベンツを売る男』の人間力

更新日:2007年10月25日

ビジネス書は書店でも広い棚に多数置かれています。「〜〜の○つの法則」などノウハウを前面に打ち出したものが多いようですが、そこを人間力という観点で読むとどうでしょうか。その観点で『日本一メルセデス・ベンツを売る男』(グラフ社)を読んでみます。


ビジネスの成功例を人間力の観点から学ぶ

みなさんは、いわゆるビジネス書というものを読まれることがあるでしょうね。セールスのコツとかお客様とのつき合い方、もっと大きくビジネス・スタイルを取りあげたテーマでは「人心掌握術」や「経営における逆転の発想」など、さまざまな内容の書かれた本が書店に並んでいますね。

そのなかで、世界的に売れているビジネス哲学というより、成功した各界の人々の事例を原則にまとめ生き方を説くスティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』(キングベアー出版)は、すべての成功の前提条件として人間としての総合力を高める「人間力」の育成を唱え、共感を広げています。私も、まったくそのとおりだなあと思います。
この「人間力」という観点から、他のビジネス書を読んでみてもいろいろ発見があります。私が最近、その点で興味深く読んだのが『日本一メルセデス・ベンツを売る男』(グラフ社)という本です

本の帯には、「2日に1台メルセデスを売る男がいた。ノーネクタイ、顔はひげ面。しかし、セールスは超一流」と書かれ、この間、トップ・セールスマンの座を維持してきた吉田満さんのユニークなスタイルを前面に出しています。しかし、私が読んで感心したことは、吉田さんが自身を常に磨いて「人間力」を高め、その魅力がお客さんをひきつけてリピーターを生み出しているのだということです。

相手を理解し、相手の期待に120%応えること

本では、吉田さんの販売テクニックというより、仕事と生き方のスタンスといったものが吉田さん自身の言葉を中心に紹介されています。吉田さんは、高級外車の最高峰といえるメルセデス・ベンツを売る仕事について、こんな風にいっています。

「私が売っているメルセデスは、商品だけで十分納得していただける車です。同じ車種のメルセデスならば、誰から買っても一緒。……つまり、優れた商品ですから、売るための話術やテクニックなどは、それほど必要ではありません」(20ページ)

では、どうやって吉田さんはこれまで通算2000台、年間100台以上のメルセデスを売れるようになったのでしょうか。吉田さんはこう続けられています。

「お客様に気に入っていただいた上に、次回も、私からメルセデスを注文してもらうために、満足度100%に、あと20%上乗せできるように努めてきました。……その方がどうされたら嬉しいか、“ここまでしてくれるんじゃないか”と期待されているのでは、ということをよく考えます。その上で、お客さまが期待されていることの上を行くように、いつも心がけています」(21ページ)

吉田さんがいう「20%上乗せ」とは、どんなことか、本の中でさまざまなケースが紹介されています。納車のときに、それが誰かへのプレゼントとみられるときは花束を車に添えたり、どのようなスタイルでお客さんのところへ到着させるか綿密に検討したりと、きめ細かな心配りでセールスマンとして納車という「営業最大のイベント」で喜びをお客さんと共有するといいます。

また、“売りっぱなし”ではなく、どんなトラブル、事故や故障でも自らが対応する姿勢を貫き、メルセデスに乗るというライフ・スタイルでのカウンセラーとしての役割も果たされています。

吉田さんは、これらの心遣いについて、こう述べます。
「車の状態はもちろんですが、運転するお客さまに心の平穏を保っていただくのも、私の大事な仕事の一つだと思っています」(23ページ)
「お客様と接するときは、その方がどのような状況を望んでいるのか、どんなものが好みで何を欲しているのかを、的確に判断するように心がけてきました」(28ページ)
「お客様とお話ししていても、その内容以上に、自分の五感を研ぎすませて、できるだけ多くの情報を得るように努力しています。……洋服や装飾品の趣味、自宅の様子、部屋のインテリア、たばこの銘柄、香水の種類……。ありとあらゆる点から、顧客の好みや要望を探っていくのです」(29ページ)

ここでいわれていることは、大変なことだと思います。相手を深く理解すること、そのためにはメルセデスを買い求める顧客層の方々の趣味や生活、考え方に対して広い分野の知識を蓄積する努力が求められます。

吉田さんは、メルセデスという商品でお客さんの生活の大事な部分に関わり、お手伝いしているんだという姿勢で自分を磨かれています。
人間力を磨いて「選ばれるセールスマン」へ

私は本を読んで、ぜひ吉田さんという人に会ってみたいな、と感じています。できれば、みなさんと業績をあげて、社用車として吉田さんからメルセデスを購入できれば幸せなのですが。

メルセデスという商品に絶大な自信を持つ吉田さんは、「選ばれるセールスマン」になることの大切さを繰り返し、説かれています。

「お客さまと接するときは常に印象に残る人間になろうと心がけてきました……印象に残る存在になるためには、まず、心と心が通じ合った関係をお客さまとの間に築いておかなければなりません。お客さまの立場に立って、何ができるかを考え、それをいかに実践するかだと思っています」(26〜27ページ)
「私は、メルセデスという車以上に、自分という人間、吉田という男を売っているつもりで、いつも仕事をしています」(27ページ)

こうした吉田さんの言葉を文字通り実践できるようになるには、人間力を高めていく生き方を心がける以外にはないでしょう。吉田さんはこうも語っています。

「自分のために良かれと思ったことでも、結果的に、お客さまのためになっていたり、喜ばれたりすることが、よくあります。……セールスマンが自分に投資したり、努力したりすることは、とても大事なことだと思っています。そこには一切の無駄はありません」(45ページ)

「商売は、“ウィン・ウィン”の関係でなければならないと思っています。……私も買っていただいて嬉しいし、お客さまも手に入れて喜び、ディーラーも売り上げが増してメーカーも利益が上がる。それが理想。このなかで誰かが損をしてしまう商売は、あまり長続きしないものです」(50ページ)

「人間力」の観点から読むと、200ページ足らずの本から本当に多くのことが学べます。吉田さんのスピリットの中にある、セールスの世界の中だけではない広く通用する理念を身につけたいものですね。

文・古是三春

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