リーダーの条件
さかもと未明の言わずにはいられない
更新日:2012年06月27日
※月刊WizBizバックナンバー(2012年6月号)よりお届けいたします。
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リーダーの条件とは何だろう。先見性、カリスマ性、統率力、力強さ、実行力――。
いろいろと考えてはみたものの、決定打が見つからない。そんな時、アシスタントが興奮して話しかけてきた。
「石原都知事が、尖閣諸島を東京都で買い上げると発言しましたよ! すごいですね!」
この原稿が世に出る頃には、また違った方向になっているかもしれない。賛否両論あると思うが、私はこれが実現することを祈っている。私もアシスタントも、石原慎太郎という一人の人間が、政府の無策ぶりに異を唱え、行動したことに感動を覚えた。この話を聞いた時、私は確かに、彼のような人に「リーダーであってほしい」と思ったのである。
長いこと、日本はこのようなリーダーを許さなかった。今回も「都政のための税金を、国のために使うのはけしからん」という反対意見が出ている。都は国の一部だ。同じものとも言えると私は思う。国家を名乗る政府が無策である以上、都税で国を守って何が悪いのか。むしろそれを都民は誇りに思うべきだろう。
しかし、「国家」に対して「地方自治」いや、「個人」がものを言い、何かをなそうとしていることは、現在の日本の問題をそのまま象徴しているように思える。従来の日本では「私心」が入ることは「公」を損ねることとし、個人よりも会社や天下国家という、より大きなものが尊重されてきた。けれどその結果生まれたのは、集団の陰に隠れて誰も責任を取らず、何も決められない社会だったのではないだろうか。福祉の現場などでも、「決まり事」に縛られて「人間としてなすべきこと」がなされず、多くの弱者が見殺しにされている。国土に関しても、諸外国からの国益を損ねる行いに対し、抗議することもできないでいる。もはや「公」を名乗るものに善も信義もない――。そう考えてしまうのだ。
このような状況の中、石原都知事や橋下市長が支持を集めるのは当然だろう。日本国民は、自分たちに方向性やミッションを与えてくれる強い「個人」を求め始めたのである。無論それが間違った独裁であってはならないが、それは私たちが良識をもって見守ればいい話だ。今回は個人の「私心」が「公」に通じ、「政府」は道を失っていた。私はそう思う。多数決が必ず正しさを担保するわけではない。リスクを恐れる人びとによる四方山会議がこの国をだめにしたのなら、責任を取る覚悟のある個人の「善なる独断」をわれわれは応援すべきではなかろうか。必要ならば「善きこと」をするために、法の方を変えればいいのだ。
そういう意味で、現在は中小企業の経営者、個人の資産家、篤志家などの活躍が大いに待たれる時代だといっていい。不況、震災、損なわれた教育や家庭の被害を受けて苦しむ人々に対し、すぐに「何か」をできるのは「個人」や「私財」でしかないからだ。
人間は、行政のサービスが行き届いたからといって生き抜ける存在ではない。人間に生きる力を備えさせ、志を与え、助けを与えるのは、命が通い、感動を与えうる、熱き人間の力だ。生の言葉や行動だ。石原知事の行動に私たちが興奮したのは、そこに「感動」を覚えたからだ。
「リーダー」というものに、われわれは特別の「資格」を問うてしまいがちだ。しかし、「公に通じる私心」と「人に感動を与える真心」があれば、リーダーには十分なのだと私は思う。
小さな規模でも、人の道にのっとり旗を振れるリーダーが多く生まれれば、この国の真の姿を損ねているシステムを滅ぼせる。読者諸氏には、すべからくこの国を建てなおすリーダーであっていただきたいと心からお願いする次第である。
著者プロフィール |
さかもと未明 |
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