私見、後継者問題
更新日:2011年02月09日
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※月刊WizBizバックナンバー(2011年1月号)よりお届けいたします。
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後継者をどうするか。これは、中小企業の経営者にとって大変深刻な問題だと思う。
私も、持病を抱えてしまう前は、随分この問題を考えた。
漫画は才能の問題もあるので、簡単に「後継者を」というわけにはいかない。ただ「スタッフを責任をもって雇用していきたい」「人生設計が立つようにしてあげたい」とよく思っていた。そのために売れたかったし、原稿料も上げたかった。アシスタント用の不動産を買って、スタッフが住むところだけでも安心できるようにしたかった。
だがそのために無理をして働いたことで病を得てしまった。また、原稿料を上げたり、知名度を上げようとマスコミに出たりと無理を重ねたことが、本業の漫画にマイナスになった部分はかなりある。
出版業界が右肩上がりだった時代は終わっていた。私の無茶な努力は、むしろ仕事を減らしてしまったし、多くの収入を得ながら質を上げるのは不可能なことだった。一度、私は仕事を破綻させ、ちょうどその頃に結婚を望んだアシスタント──長年働いてくれていた──は仕事を辞めて出産する道を選んだ。
その後、私は考え方を根本的に転換せざるをえなくなる。まずは、自分自身も新人に戻り、一番安い原稿料でも働こうと気持ちを切り替えた。
それはお金ではなく、仕事の質で人の助けを引き寄せる作家にならなくてはならないということでもあった。アシスタントは仕事がある時だけ来てもらうスタイルに変えた。被雇用者というよりは、同等の立場で仕事を依頼するパートナーという関係にした。不思議なことに、それから仕事の環境は好転した。
こういったことは、あらゆる企業に当てはまるような気がする。すでに終身雇用や定期昇給は大企業でも難しく、未来は見えない状況だ。都内のホテルでも随分と外国人のホテルマンを増やしているが、これは日本人よりも安く雇える現実もあるからだろうと推測する。
そんな時代に中小企業が、自分の子どもであれ、別の誰かであれ、きちんと雇用を保証して後継を期待するのは実に難しいだろう。
下請けに回るお金がどんどんダンピングされている時代だ。社内のために無理をすれば、仕事がなくなる。こんな時代、次世代に仕事をつなごうとすること自体がもう無理なのではと考えるようになった。
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著者プロフィール |
さかもと未明 |
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