数字が語る この市場の深層
規制緩和が進む「OTC医薬品市場」
更新日:2011年06月22日
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大衆薬、市販薬、家庭用医薬品といった名称で呼ばれ、ドラッグストアで手軽に買えるOTC医薬品。2009年から薬剤師なしで販売できるものが増え、規制緩和が進む市場の実態を検証する。
薬事法改正の効果は限定的
医者から処方される医療用医薬品とは線引きされ、処方箋なしで手に入れられる一般用医薬品、それがOTC医薬品だ。ドラッグストアのカウンターで気軽に手に入れられるため、英語のOverTheCounterを略して、そう呼ばれるようになった。
本来、栄養ドリンクやビタミン剤も薬剤師がいる場所でしか販売できなかった医薬品の一部だ。だが2004年の規制緩和により、医薬部外品として今ではコンビニやスーパーマーケットなどで販売できるものが増えた。
これら医薬部外品も含むOTC医薬品は、販路拡大により消費者との接点が増している。規制緩和の波に乗って、市場も拡大しそうに思われる。
ところが、矢野経済研究所(東京都中野区)ライフサイエンス事業部チーフマネージャーの生貫(うぶぬき)彦三郎氏は「実際はそれほど市場が拡大していない」と指摘する。
同研究所が発表した09年のOTC市場規模は、およそ7900億円。3年連続でプラス成長を達成したことになる(表1)。
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しかし、成長率は前年比0.7%に止(とど)まっている上、プラス成長といっても、3年間いずれも1%未満の微増に過ぎない。
また過去に遡っても前年比が大きなプラスを示したことはない。04年以降、同じような水準で横ばいが続いている(グラフ2)。
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インフルエンザは薬が売れない
この伸び悩みの背景には、不況の影響で消費者が買い控えをしていることもあるが「それだけではない」と生貫氏は語る。
「09年にはドリンク剤や総合感冒薬の売り上げが落ち込んだことも要因の一つ」と話す。
OTC医薬品市場の中で、ドリンク剤は最大の割合を占める。栄養ドリンクなどの滋養強壮飲料には、100mlのドリンク剤≠ニ、それ以下のミニドリンク剤≠ェある。両方を合わせると全体のほぼ4分の1になる。
「これらのドリンク剤の売れ行きは気候の影響を受けやすい。09年は冷夏だった」と生貫氏は分析する。不況で残業が減り、ドリンク剤を飲む機会が少なくなる。加えて、夏バテ防止にと飲む人も減ったのだ。
また、この年は新型インフルエンザの流行で、医療機関で治療を受ける人が増えた。ドラッグストアで自分が選んだ風邪薬を買うよりも、医療用医薬品に頼る傾向が強かったため、総合感冒薬が落ち込んだという。
OTC医薬品市場の中で大きな割合を占めるドリンク剤と総合感冒薬の減少が、市場全体の伸び悩みを招いた格好だ。
前年から一転して猛暑となった10年。新型インフルエンザの流行も前年を越えるほどではないと予想される。そのため「ドリンク剤の売り上げは回復するほか、総合感冒薬の売り上げも戻りそうだ」と生貫氏は語る。
09年に1310億円(前年比97.8%)に落ち込んだドリンク剤は1330億円(前年比101.5%)へ、また725億円(前年比94.8%)となった総合感冒薬は7500億円(前年比103.4%)へ。矢野経済研究所は、10年はそれぞれ前年比プラス成長を予測しているという(表3)。
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