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数字が語る この市場の深層
教養重視から軽い読み物に移行 読者の幅を広げてヒットを狙う
月刊ベンチャー・リンク2009年1月号掲載

更新日:2009年07月28日

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本が売れないといわれて久しい出版業界で、新書は売れ筋の貴重な存在だ。さらに現在は、文章が硬い教養系から、エンターテインメント性のある教養読み物へと比重が移り、新読者層を獲得して活況を呈している。

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棚を確保するため題名や内容に工夫

 ワンテーマを400字詰め原稿用紙300枚程度にまとめた新書の歴史は古く、1938年の岩波新書創刊が起源だ。その後、何度か新書ブームが起こったが、第1次ブームといわれているのが54年から55年。この1年間で100冊以上が刊行された。62年には中央公論社(当時)の中公新書、64年に講談社の現代新書が創刊、この時期が第2次ブームといわれ、両社と岩波書店を合わせて「新書御三家」と呼ばれた。

 90年代に入ると、『大往生』(岩波新書)『ゾウの時間、ネズミの時間』(中公新書)などヒットが続いた。また、文春新書、集英社新書、光文社新書など大手出版社の新書創刊が相次ぎ、03年には新潮新書創刊10冊のうち、『バカの壁』が400万部を超えるヒットとなる。現在は『バカの壁』から続く第3次ブームといわれ、『国家の品格』(新潮新書)、『女性の品格』(PHP新書)などが売れている。

『新文化』の石橋毅史編集長
『新文化』の石橋毅史編集長

 新書が普及した背景として、出版社と読者の双方に利点があることが挙げられる。まず、出版社側の理由を石橋編集長はこう分析する。
「新書はワンテーマを1冊で扱います。雑誌の特集ではもったいない、でも単行本にするほどではないというテーマを吸収したことで、出版できるジャンルが広がったといえます」

 一方、読者にとっての利点は、何といってもあらゆるジャンルを700円程度で手軽に読んで理解できることだ。「最近は教養新書といえども、軽く読みやすい感覚のものに変わってきていることが、読者の幅を広げ、興味を引き付けている要因になっています」(石橋編集長)

 本の大きさやデザインで差別化はできないが、本のタイトル付けには知恵比べがうかがえる。例えば『大往生』や『バカの壁』などは「はっ」とする言葉を用いたタイトルで読者に強烈な印象を与える。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』(光文社新書)などは、日常のささいな疑問をタイトルにすることで、会計学の初歩を端的に表わし、ミリオンセラーとなった。なかにはタイトルのほかにサブタイトルを付け、棚に置かれても背表紙で内容をアピールする新書もある。

 各社のこうした努力は、1冊でも多く売って書店の棚を確保するためだ。「本としては、細々とでも長く売れ続けるのが理想かもしれないが、現実はベストセラーがさらに部数を伸ばし、ロングセラーになる傾向があります」(同)。

 できるだけ早く成果を上げて返品を減らしたいという販売側の本音がある。今後の新書動向について石橋編集長は、内容のよさはもとより、専門性がカギになると見る。「新書の扱うジャンルは多岐にわたりますが、なかでも読者にアピールしやすいのは専門分野に特化したテーマです。同じジャンルが棚に並べば、興味のある読者を呼び込みやすいという効果もあります」

 08年10月には、小学館が新たに参入した新書業界。テーマの選び方、内容の工夫、タイトル付けなど、各社の知恵比べはさらに激しさを増しそうだ。

 



※記事は作成日時点のデータですので、あらかじめご了承ください。

 

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