拙著の中国人読者が増えた
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜
更新日:2015年01月07日
来日から30年・・・日中民間交流の草分け的存在である著者が新刊を上梓された。
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この日本、愛すればこそ ―新華僑40年の履歴書 莫邦富著(岩波現代文庫) 価格1,188円(税込) |
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この日本、愛すればこそ
2014年の年末が迫るところで、拙著『この日本、愛すればこそ─新華僑40年の履歴書』は岩波現代文庫として出版された。
本の帯には「日本語と出会って40年、在日30年。民間交流草分け世代が綴る日本への激励メッセージ」と書かれている。
裏表紙には、さらに「同時代の証言としてすべての日本人に贈る自伝的日本論」という説明文も入っている。
身に余る言葉ではあるが、わかりやすく言えば日本語と出会ってからの私、そして私たちの世代が日本と日本人をどう見てきたのかを1冊の本にまとめたのである。2002年に出版された単行本『これは私が愛した日本なのか』を書き足したうえ、改題して文庫本として出版したものだ。
言うまでもなくこの本のおもな読者は日本人だ。細かい計算はしていないが、これまで共著、共訳なども含めておそらく私が日本で出版した本は50冊を超えただろう、と思う。日本語で書かれ、日本で出版された以上は、読者はもちろん、日本人を想定している。
いままでほとんど中国人社会に自分の本をアピールしたことはなかった。10数年前に、一度、講演会の場を借りて中国人社会に働きかけたことがあるが、100人以上も集まる会場で、大勢の人から読みたいと本をもらいたい希望は示してくれたのに、実際の販売実績を見ると、1冊も売れていなかった。この苦痛の記憶が鮮明に残っているから、それ以降、拙著を中国人社会に積極的にアピールしないようにした。
日中関係の改善を求める読者の意思表示
しかし、今回の出版で時代の流れが大きく変わったのをすぐ肌で感じることができた。まず本が出版される前の段階で、facebookにアップした同書の紹介を見て、大勢の人が購読を申し込んでくださった。
内容も内容だけに、出版社に1回目の注文部数を教えたとき、担当編集者が感激してくれた。「出版不況の今のご時世に、莫さんのように一度でこんなにたくさん本を購入する著者はあまりいませんよ」と。
だが、1回目に注文した冊数は見本が到着する前にすでに底を突いていた。そこで慌ててさらに数百冊を注文した。これも本が店頭に並べられたとき、ほとんど売れた。本が出版されてから3日も経たないうちに、3回目の注文を出した。
本を買い求めてくれた方々の名簿を見ると、中国人が大半を占めた。なかには一度に100冊という単位で買い求めてくれた人も複数いた。20冊、10冊といったように買い求める人も多かった。
私の知名度が以前より上がったとは思わない。やはりfacebookや中国版SNSの微信、微博の威力だと思う。中国の見知らぬ大学生や普通の市民も買い求めてくれたのを見ると、力を覚えた。
もちろん、日中関係が悪化したことも生活が安定したことなども日中関係を論じる拙著への関心を高めてくれただろうが、より根本的なのがこれ以上日中関係を悪化させたくないという人々の意思もそこに現われているのではないかと思う。
その意味では、帯に書かれている「日本への激励メッセージ」だけではなく、「日中関係に携わる人々への激励メッセージ」と理解したほうが正しい。
新しい1年が始まる。国境を越えた読者のみなさんと一緒に日中関係の改善にさらに汗水を流したいと決意を新たにしたところだ。
著者プロフィール |
莫 邦富(Mo Bang-Fu) |
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