遅すぎた日本のSIMロック解除
〜莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜
更新日:2014年07月09日
総務省は、携帯電話会社が端末を他社で使えないように制限する「SIMロック」の解除を、2015年度にも義務づける方針を固めたことが報道されました。海外へ出かけることが多い著者は、遅すぎると言いつつも歓迎しているようだ。
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中国訪問前の不安
6年ぶりに香港に行ってきた。しかし、出発する前に、自分でもそわそわしていたのを自覚していた。ある種の不安感にずっと付きまとわれていたからだ。ほかならぬ携帯電話のことだ。
これまで中国本土や香港などに行くとき、いつも空港か宿泊先のホテルの近くにあるコンビニで、現地の携帯電話用SIMカードを入手して、自分の予備用かSIMを自由に取り換えられる海外専用の携帯電話に差し込み、現地の携帯電話料金で携帯電話を使っていた。
しかし、今は3G型の携帯電話はスマートフォンにとって換わった。果たして順調に現地のSIMカードをアップルのスマートフォンに挿しこめるのか、差し込んでからは果たして難なく使用できるのか、ずっと心配していた。それが私をそわそわとした心境に陥れたのだ。
結果から言うと、私の心配は杞憂だった。香港のホテルに到着したら、ホテル内では自由にWiFiを利用できるので、Lineの無料電話機能を使って順調に最初の取材対象と連絡が取れた。そして取材が終わったあと、その方の案内でコンビニに行って、アップルのスマートフォンに使う携帯電話のSIMカードを入手し、店の若い女性店員に私の携帯電話に入れてもらった。
香港で入手したこのSIMカードは海外から訪れた観光客やビジネスマン向けのもので、2日間WiFiフリーという嬉しいサービスもついている。通話料込みの60香港ドルだったが、通話料が60香港ドルを超えた場合は、再度チャージすればいい。こうして日本に住む私は地元の携帯電話料金で電話サービスを利用できるだけではなく、WiFiも使える通信環境を確保できた。
深センを訪問したとき、香港のSIMカードを差し込んだままの携帯電話を中国本土用に順調に戻した。さらに、翌日、深?から香港空港に移動したとき、その電話にもう一度香港SIMカードを差し込んだ。まったく問題はなかった。これで香港を訪れる前に覚えたあのそわそわとした不安感がすっ飛ばされた。
しかし、同じアップルのスマートフォンではあるが、日本用スマートフォンには中国本土用のSIMカードを差し込む勇気はなかった。日本の携帯電話に勝手にSIMカードを差し替えることができないとずっと前から聞いているからだ。
日本もいよいよSIMロック解除へ動き出す
固定電話や国際電話をおもな業務内容として発展してきた日本の電話会社、その後の携帯電話会社が海外ではほとんど評価されておらず、存在感もほとんどない。その原因はさまざまだと思うが、SIMをフリーにするのを頑なに拒否してきたことがあげられる。そのため、日本の携帯電話には他のSIMを差し込んで自由に使うことができないのだ。このことも日本の携帯電話会社の海外進出を失敗させた敗因の一つと見ていいだろう。
遅れすぎた措置とは言え、その日本もいよいよ目指すべき方向へ思い切って動き出した。
総務省が携帯キャリア各社へSIMロックを解除させる方針を決めたそうだ。平成26年度中に解除が始まるという。つまり2015年3月末までに、日本人も日本に居住している私たち外国人もSIMロックが解除された新しい携帯電話が使える時代を迎えた。
メディアの報道によれば、総務省が2010年にすでに省内向けのSIMロック解除ガイドラインを作成した。しかし、携帯キャリア各社から無視された。SIMロックフリーの早期実施を促した総務省の今度の態度には、真剣味が滲みだし、意思も堅い。おそらく携帯電話をめぐる世界の流れの変化をキャッチしたためだろう、と思う。
早くSIMロックフリーの携帯電話を使いたい! その時代の訪れに、拍手を送りたい。
著者プロフィール |
莫 邦富(Mo Bang-Fu) |
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