危機広報管理がなっていない有名企業の実例
〜莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜
更新日:2014年05月07日
著者のオンラインの記事に大反響があったという。掲載後5日間で20万ほどのページビューが……。
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名指しで批判された日本の企業名
26年ぶりに日本を訪れてきたドイツ在住の従妹を関西旅行に案内した。一旦中国語を使いだすと、普段、日本語を使って暮らしている私には全然感じなかった問題を、強いショックを受けるほど体感できた。そのショッキングな現場を見て、日本がもっとも自慢すべきだと思っているサービスが崩壊し始めているという錯覚に陥るほど驚いた。問題の重大さに気付いた私は、ダイヤモンド・オンラインにコラム記事を書き、一流企業を含む問題企業を実名で取り上げ、サービス問題の改善を求めた。
記事が掲載されたあと、大きな話題となった。そして、中国のSNS「微博」にもその内容を140字で紹介し、サイトのリンクを張ったが、転載された翌日(4月17日)1日だけで11万9000人が読んだ。5日後にはこのコラムを読んだ人は約20万人に上った。
ダイヤモンド・オンラインでもコラム記事がアップされた翌日、過去1時間枠で3位、1週間経った時点でも、1週間枠で4位を獲得した。ソーシャルランキングでは、facebookにおいてもtwitterにおいても1位になった。しかも、ランキング上位5位までの評価ポイント数の平均を大きく上回った。
ここまで話題が広がるとは予想しなかったが、社名を公表された企業もそれなりに動いているはずだ。できるだけ、名指しで批判された企業にも名誉挽回のチャンスを与えたいと思って、東京・ミッドタウンにある5つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトン」とマカロンなどを主要商品とするフランスのお菓子専門店・ダロワイヨ(DALLOYAU)ジャポン本社に意見交換を求めたいとメールを送った。
顧客の声に傾聴すると自負しているザ・リッツ・カールトンからは何の返事もなかった。一方、ダロワイヨ ジャポンからは電話はあったが、意見交換の場を持ちたいというこちらの要望については、時間がないので、お断りしたい、ときっぱりした返事だった。もちろん、「莫邦富さまにはご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。 今後、このようなことがないようにしていきたいとお伝えください」 とのメッセージはあった。
危機管理広報に力を入れるべきだ
こうした企業の姿勢を目の当たりにした私はそのまま、facebookにやり取りを公開した。フォロワーたちからの声をここに拾ってみよう。
S氏という女性:「ちょっと進歩がない企業ですかね? とりあえず謝ってはいるようですが、隠したい。がうかがえるように思います。」
T氏(男性):「社内倫理劣化進行中の御様子かとも??」
広報を担当したこともあるK氏:「ああ、何も学ばない会社ですね。企業広報的にはこういうクレーム対応が必要なときこそむしろチャンスですのに! もしかしてアジア系の人には来て欲しくないというブラックな本音が見え隠れしてたりしませんか?」
元モバイル端末を製造する企業の社長であるM氏:「折角のチャンスを逃している企業ですね。経営トップの姿勢そのものの問題です。」
出版社の社長T氏:「外からの声をありがたいと思わない企業に将来はないと思います。『時間がない』というのは全く理由になりません。腹の底が透けて見えますね。」
在日中国人のB氏:「時間がないので、お断りしたいとは、笑止千万。物言わぬ顧客相手にしか商売したくないのでしょう。」
北海道在住の経営者T氏:「日本のサービスの全体像とここの企業の温度差を感じました。今回は対応能力の低さが見えました。」
大学教授のK氏:「うまく話し合う自信がないのだと思います。体質が古く、当惑しているのだと思われます。」
企業や組織などには危機が発生することはよくある。危機発生時に「危機管理広報」をきちんとしないと、傷口がさらに広がる。事件・事故など危機的な状況が発生した時、初動の段階におけるメディア対応が特に重要だ。この巧拙によって、その企業や組織をめぐる社会的評価や世論は大きく左右する。
その意味では、今度の私の批判を受けた上記の2つの会社は危機管理広報という視点から見ると、その対応がともに不合格としか言えない。日本の企業はこれからもっともっと危機管理広報に力を入れるべきだ。
著者プロフィール |
莫 邦富(Mo Bang-Fu) |
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