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『南仏プロヴァンスの12か月』がくれたヒント
〜莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2013年10月30日

美ら海水族館などを訪れるため名護市内を素通りしている観光客を名護の市街地に呼び込むために、映画『南仏プロヴァンスの12か月』を企画。「通過客は年間300万人以上で、そのうち30〜40代の子ども連れの女性で関東圏在住の30〜40万人に照準を絞る」とする。


 
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映画による観光経済の効果に狙いをつける名護市

10月20日より、沖縄の名護市で「沖縄・中国映画週間」が開催された。映画上映以外に、「“映画と観光”日中合作映画シンポジウム」も同時開催された。私はそのシンポジウムのモデレーターを命じられ、日中映画関係者、観光経済の行政担当者などが集まり、日中合作映画製作実現の可能性と沖縄観光のさらなる発展に向けて、活発な意見交換が行なわれた。

映画と観光は非常に親和性のよいテーマで、しかも、2009年に北海道を舞台にし、中国で大ヒットを飛ばした映画「非誠勿擾」(邦訳:狙った恋の落とし方)という成功例もある。その映画の影響で、北海道を訪れた中国人観光客が5倍も増えたと言われる。映画の効果を目の当たりにした日本の地方自治体が映画ロケ誘致に積極的になっている。シンポジウムとしては、語られやすいテーマだと思っていた。

折しも、沖縄は8月に、名護市を舞台にした映画製作で地域再生を図る取り組みを補助事業として採択している。映画は12月から来年1月にかけて撮影、来夏に全国公開する計画。総製作費は3億円で国の補助は2億円。映画製作の一環で商業拠点整備や特産品も開発する。9月上旬にシナリオを公募する。出演者は全国区の俳優を予定する。国の補助金で地域再生を図る本格的な映画作りは全国で初めて、と地元の新聞では報じられている。

美ら海水族館などを訪れるため名護市内を素通りしている観光客を名護の市街地に呼び込むのが、その映画の狙いだ。計算は細かいところまでされている。「通過客は年間300万人以上で、そのうち30〜40代の子ども連れの女性で関東圏在住の30〜40万人に照準を絞る」とする。

映画シナリオ作家などをまず誘致したら、と提案したい

しかし、シンポジウムのなかで、中国の監督たちがこうした安易な映画作りに否定的な意見を発表している。中国映画監督協会の理事長をも務める何平監督は、映画のロケ地の選定基準を紹介した。

「美しい海や山があるから、監督はそこに赴いて映画を製作するというようなことはまず考えられない。映画を作るには、まず観衆の心を掴んで離さない、いい物語が必要だ。次に、映画は工業製品でもあるという意識も持つべきだ。工業製品である以上は、製作コストの安さを自然に求められる。空撮ができるのか、エキストラを大量に動員できる力があるのかなども問われる。さらに、映画の舞台にするためには、その土地に対する監督の愛情や理解も欠かせない」

その意見に私は大いに賛成している。ちょうどそのシンポジウムの前に、私はダイヤモンド・オンラインにもつコラムの中で、観光関連に携わる行政の方々にイギリス人作家ピーター・メイル氏が書いた『南仏プロヴァンスの12か月』という本を読んでほしいと書いている。

英国のロンドンをビジネスの舞台にしていたピーター・メイル氏が、癒しを求めてプロヴァンスへ移住し、その最初の1年間の体験を記録したのは、『南仏プロヴァンスの12か月』だ。間もなくして同書は世界的に読まれ、プロヴァンス人気ブームの火付け役と言われるほどのミリオンセラーになった。

だから、「“映画と観光”日中合作映画シンポジウム」の前に、私は「シナリオは『劇本』と呼ばれる。つまり芝居や映画など物語性の強い作品の根本をなすものだ。作家がいい劇本を書けてこそ、素晴らしい映像作品がはじめて誕生できるのだ」と主張して、映画ロケの誘致だけではなく、沖縄で創作休暇を楽しめるように、作家やシナリオライターなどの方々を呼び寄せる制度を設立したら、と提案したのだ。

シンポジウムの会場で何平監督から「映画を作るには、まず観衆の心を掴んで離さない、いい物語が必要だ」という発言が出たのを聞いて、思わず手を叩いた。

映画ロケ誘致に熱心な沖縄とその他の地方自治体の関係者の皆さんに、ぜひともこうした角度から映画を捉える視点ももってもらいたい。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/