日中間の風向きが変わった〜アリペイとニューシルクロード経済圏
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜
更新日:2018年01月09日
対中輸出額は総輸出額の約2割(2016年)、対中輸入額は総輸入額の約2.5割あり、中華人民共和国は日本にとって大きなビジネスパートナーである。その中国が「一帯一路」なる経済圏構想を提唱しているが、2017年末、「日中与党交流協議会」にて大きな進展がみられた。
自民党幹事長への厚遇を通じて出された政治的なメッセージ
2017年も残り僅かとなったので、私は日中経済関連の友人たちに、「風向きが変わった」とメッセージを送った。
その一つが、自民・公明両党と中国共産党が対話をする「日中与党交流協議会」が中国福建省で閉幕し、習近平国家主席が提唱する「一帯一路」経済圏構想に日本が積極的に協力していくことで一致した、というニュースが伝わってきたからだ。
「一帯一路」とは中国からアジアを経てヨーロッパまで海と陸の交易路でつなぐ経済圏のことを言う。わかりやすく表現すれば、ニューシルクロード経済圏と考えればいい。
メディアの報道によれば、福建省はそのニューシルクロード経済圏の海の起点にあたり、宋濤中国共産党中央対外連絡部長をはじめ、中国側の参加者からは日本の協力を期待する声が相次いだ、という。
これに対して、団長である二階俊博自民党幹事長が「中国側の熱意を強く感じたというのが、大きな収穫であった。」とメディアに感想を述べている。
今回初めて参加した経団連の代表らも、「政府にしっかりとした対話のチャンネルを作って進めてもらいたい」と日本企業としての期待を見せている。
二階氏はさらに北京清華大学から「名誉教授」の称号を授与されたり、中国共産党の幹部教育機関「中央党校」で講演したりもした。中央党校での講演のなかで、二階氏は日中両首脳の相互往来の早期実現に期待感を示し、アジアにおける両国を「共に未来を創る共創の関係」として、新たな未来志向の日中関係の必要性を訴えた。
中央党校は中国共産党の高級幹部を養成する機構で、日本の政治家が同校で講演する機会が少ない(河野洋平元衆院議長が2000年と2009年に講演した)だけに、二階氏への厚遇ぶりが注目された。
しかし、私から見れば、これは二階氏への厚遇ぶりというよりも、自民党幹事長に対する厚遇ぶりと見たほうがよいと思う。だから、日中間の風向きが変わったと思う。来年、つまり2018年は日中関係にとっても、日中間のビジネスにとっても、かなりいいムードになると楽観的に考えられる。
ニューシルクロード経済圏の動きは日本にも広がる
一方、ビジネス的に見ると、日本も焦らないといけないところまで来ている。
最近、中国のテレビ番組のなかで、キャスターが「国に一番持って帰りたい中国製品」と訊いたら、一帯一路沿線諸国からの留学生たちの多くが中国の電子決済を選んでいた。
実際、アント・フィナンシャル(中国名は“蚂蚁金服[螞蟻金服]”)に代表される中国のフィンテック企業はすでにインド、タイ、インドネシア、フィリピンなど一帯一路沿線国に中国のプランを提供し、現地の提携パートナーによる金融サービスの飛躍的発展の実現を後押ししている。
2015年、アント・フィナンシャルは初めてインドに入り、現地の電子決済企業ペイティーエム(Paytm)と戦略的提携を行った。2016年にタイのデジタル決済企業アセンド・マネー(Ascend Money)と戦略的パートナーシップを結んで、アント・フィナンシャルの方式をタイにコピーした。2017年2月にはフィリピン最大のデジタル金融企業ミント(Mynt)に資本注入を行った。同4月12日、インドネシアのエムテックグループ(Emtek)と合弁企業を設立し、モバイル決済商品の開発を行うことを発表した。4月19日、東南アジア最大の電子商取引企業ラザダ(Lazada)傘下のオンライン決済企業ハローペイ(HelloPay)を買収し、その名を「アリペイ」に変更すると発表した。
それだけではなく、スマートフォン(スマホ)最大の市場である中国でシェア1位のOPPO(オッポ、広東欧珀移動通信)も、2018年春に日本市場に参入すると宣言した。
2018年に、ニューシルクロード経済圏との連動が絡んでくると、こうした動きはさらに拡大するだろうと思う。
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