交通系ICカードはなぜJR津駅では使えないのか
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜
更新日:2017年11月27日
全国どこへ行ってもスイカなどのICカードを使えるかと思っている方が多いと思うが、どうもそうではないらしい。著者の出張先であった三重県の県庁所在地・津市で、ショッキングな事実に直面したという・・・。
時代への対応が遅れている香港の問題点
先月、仕事のため、数年ぶりに香港を再訪した。香港市内での移動には、以前からもっている「八達通(オクトパスカード)」と呼ばれる交通カードを使った。空港から市内に向かうエアポートエクスプレスにも、八達通カードで乗ることができた。香港駅に降りて、タクシーで予約したホテルに移動した。
ホテルに着いてタクシー代を支払うとき、わざと八達通カードを差し出してみた。支払うことができるのかチェックしたいと思ったからだ。しかし、タクシーでは相変わらず使えないまま。中国国内ではよく見られる「支付宝」(アリペイ)や「微信支付」(WeChat Pay)もまだ利用できない。香港は、いまだキャッシュレス時代への対応が遅れていることを実感させられた。
思わずスイカなどのICカードを使う日本と比較した私は、同行するメンバーに感想を述べた。
「香港の地下鉄は日本企業がその建設にかかわっていた。しかし、いまの日本ではJR東日本のスイカを関西にもっていっても交通機関を使うときは、自由自在に使えるのに、香港はまだこの状態では、その立ち遅れもひどすぎる」
「世界の亀山」の隣、津市における信じられない事実
ところで、先週、三重県津市に出張したとき、信じられない体験をした。JR津駅では、スイカなどのICカードは使えないという事実が判明した。三重県の県庁所在地で、県内では四日市市に次ぐ人口を有する都市でもある、ということを考えると、嘆くしかできなかった。
不思議に思いながら、調べてみたら、さらにショッキングな事実に直面せざるを得なくなった。
三重県では、関西本線四日市駅以東(JR東海TOICAエリア)を除き、JR線でICカードが使えない。津駅・松阪駅・伊勢市駅・鳥羽駅では、近鉄を利用する場合はICカードが使えるが、JRを利用する場合は、ICカードが使えない、というのだ。
念のために、JR津市の所属先をもう一度確認してみた。やはりJR東海ということを知って、逆に妙に納得できた。以前、東京駅構内ではどの店もスイカが使えるようになっているのに、東海道新幹線のホームにあるキヨスクで飲み物をスイカで買おうとしたら、使えないと言われた。そのとき、私は見当がつかず、どうして使えないのか、と質問した。すると、店員さんから涼しい顔で、「こちらはJR東海だから」と言われた。
あのJR東海のエリアなら、いくら津市が県庁所在地であっても、無視されてしまう可能性は十二分にもあると思うからだ。
リニアモーターカーの開発に力を入れるJR東海なのに、所轄運行エリアの主要駅へのIC導入など時代の新しい需要にそもそも関心を払っていない。
考えてみれば、香港と日本は同じく経済的地位の低下などの問題に悩まされている。交通システムにICカードが使えないというのは、単なる交通系ICカードの利用快適度の問題ではなく、むしろ、香港社会と日本社会の体質にかかわる重大な問題だ。その解決案はまだ見つけていない。
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