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ネット時代の貧困大学生支援プログラム
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2017年07月26日

中国における奨学金の制度に関する記事が、人民網日本語版に掲載されていたという。大学が提供する支援金で学業を終えた著者にとって感動物語であったという……。
 

貧困大学生への「秘密援助」

最近、貧困大学生は在学中に、大学側からこっそりと食費補助金をもらったというネット上の書き込みがヒットした。

その学生は現在、米国在住の杜さんという人だ。人民網日本語版に掲載された記事によれば、事のいきさつの次のようなだ。

2004年、杜さんは中国科技大学に合格したものの、家庭の経済状況が思わしくなかったため、一日三度の食事にかける支出をかなり抑えた。もともと安いことで知られる学生食堂でも、昼食と夕食は半人前しか注文していなかった。こうして、1日の食費を6元(約100円)以下に抑えることができた、という。

05年初め、杜さんは学校からのメールを受け取った。そこには、「昨年12月の補助金360元(約6000円)を受け取るために、学食カードを持ってくるように」と書かれていた。家庭の経済事情を大学に隠していたため、その通知の内容に驚いた杜さんは、学校側の間違いだと思った。

その後、杜さんは学校の職員から、「学校は各学生の食堂での学食カード利用状況をモニタリングしている。1カ月の利用額が200元(約3300円)以下の場合、学校がそれ相応の補助金を支給することになっている」と伝えられた。

すでに卒業して12年間も経ったが、前のそのエピソードを思い出すたびに、杜さんはやはり感動を覚える。しかも、「受給している学生以外には、その援助について知っている学生はほとんどいない。学校も支給している学生のプライバシーを保護するために工夫してくれている」と感激している。

今年7月7日、杜さんは中国科技大学在学中に経験したこの「不思議なエピソード」をネットに紹介したら、あの書き込みがわずか1週間ぐらいで、「すでに『いいね!』を4万回以上、コメント1800件以上が寄せられおり、その数字はまだ増え続けている。多くの人がこのエピソードに感動している」と杜さんもその反響の大きさにびっくりしている。

中国版教育ローンも誕生


中国科技大学はこのため、一気に注目を浴びたが、実際、この援助プログラムは2004年から始まったものだ。ただ学生たちのプライバシーに関わるため、プログラムの詳細については公表しておらず、このプログラムの存在さえ知らない人も多いから、いままでは社会的に知られていなかったのだ。

関係責任者のインタビューによれば、同大学は毎年、夏休みと冬休みを除く10カ月間、この援助プログラムを実施しており、援助金は一人当たり1カ月160元(約2640円)となっている。これまでに延べ4万人以上の学生に計600万元(約9900万円)を支給してきた、という。

40数年前に、大学が提供する支援金で学業を終えた私たちの世代には、身に染みるような感動物語だ。貧しい農家の子供は昔ほど、一流大学に進学できなくなっていると聞かれているだけに、このニュースにほっとしたところがある。よく調べてみたら、中国政府は2007年以降、学生に対する援助政策の体系構築に力を入れ、援助額を10年連続で引き上げ、辺鄙な地域や貧しい地域の子供が良い教育を受けることができるよう条件を整えている、と報じられている。

中国教育省が公表した「2016年の学生に対する援助の発展報告」によると、同年、援助を受けた学生の数は前年比7.6%増の延べ9000万人を超えた。援助額は前年同期比8.24%増の1600億元(約2兆6400億元)に達した、という。

さらに、日本の教育ローンに相当する、返済が必要な補助金もテスト的に始まった。中国学生援助管理センターという機構はすでにテストポイントを設置して、その教育補助金の事前申請業務を展開している。高校通学の時点で援助を受けた学生は大学入学後、無条件で、返済が必要な補助金を受け取ることができる。16年、計62万人の大学生がその中国版教育ローンを受け取った、という。

こういった中国社会の情報がもっと増えてほしい。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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