地方創生に欠かせない外国人人材
更新日:2016年11月04日
中国からのお客さんを連れて清里高原を回る小旅行に出かけた筆者。行きかう人の姿がほとんどないこの寂しげな風景・・・20数年前、清里駅前を通るために40分間はかかると言われたのだが・・・。
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寂しげな駅前風景
先日、中国からのお客さんを連れて、山梨県の清里高原を回る小旅行をした。ちょうど紅葉の季節が始まろうとしているところなので、色の変化に富む森と山の豊かな表情に、同行者たちから感動の嘆声が何度も漏れてきた。そのため、途中、何回も車を止めて、みんなのために写真撮影の時間を設けた。笑い声が止まらない同行者たちの満足げな表情を見て、企画を担当した私もちょっぴり自慢に思った。
もちろん、私の企画だから、単純な旅行では済ませない。それでは芸がないと思うからだ。清里駅に到着したとき、私はまた車を止めるように指示した。メルヘンチックな店舗が並ぶ駅前の風景に、みんなは、おそらくここは日本? と不思議がっていた。
駅舎から30秒も離れていないある大きいレストランだった建物の前に立って、私は説明した。
「20数年前、私ははじめて清里に来たときも車だった。この清里駅前を通るために、40分間はかかると言われた。その混雑を避けるために、私たちは回り道して目的地に直行した」
私が強調したこの40分間という言葉にみんなが信じられないという表情を見せた。それも無理のない話だと思う。行きかう人の姿がほとんどないこの寂しげな風景を目の当たりにしたみんなが清里の栄光のある昔を知らなかったからだ。
外国人観光客誘致と地方創生の課題
当時の清里は「高原の原宿」ともてはやされ、大勢の人がこの八ケ岳山麓の小さな町に押し寄せた。まさに「清里ブーム」の真っ只中だった。アクセサリー、雑貨、ファンシーグッズのショップやカフェテラスなど、清里らしいメルヘンチックな店がいくつもあった。
建物も童話の世界に誘い込むような特徴のある外観をしている。例えば、ミルクポットの形をしたオブジェクトが置かれている店もあれば、北欧の童話によく出てくる赤い色の尖った屋根のレストランもある。
しかし、いまはこれらの建物は寂しげに駅前に広がるこの小さな町に突っ立ったまま、寒さをだんだん強める高原の秋風にさらされている。
私は背後にあるこのレストランを指してさらに説明した。
「つい数年前、私は大勢の大学生を連れて清里に社会調査に来たとき、学生たちがよくこのレストランで昼食を食べていた。しかし、いまは店はもう閉店して久しい。建物は売り出し中だが、いまだに買い手がいない」
レストランだったこの建物の前にある店舗などの位置を案内する表示板を掲げている柱みたいな工作物も倒れたままになっている。その寂しい風景にさらに寂しさを添えているような感じだった。
中国からのお客さんは理解に苦しんだ。「なぜ中国人観光客を誘客しないのか」との質問が出た。
私も回答に窮した。なかなか簡潔に答えられない問題だ。ただ、結論的な回答案はある。つまり、観光客の客源も含む外国人人材は地方創生に欠かせないということだ。しかし、なぜそこまで踏み込まないのか、と聞かれると、私も知りたいことだとしか言えない。
著者略歴 |
莫 邦富(Mo Bang-Fu) |
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