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労働時間管理:変形労働時間制

更新日:2013年07月10日

当社の経理部門では、月の中旬は業務が少ないのですが、月末と月初は忙しく長時間の残業をしている状況です。このように繁閑の差が激しい職種や業種では、法定労働時間を守ることが難しいと思うのですが、何か良い労働時間管理の方法があれば教えてください。
 


 
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回答

変形労働時間制の導入を検討しましょう。例えば、「1カ月単位の変形労働時間制」なら、1カ月の労働時間の総枠を超えなければ、1日の労働時間を弾力的に設定することができます。

解説

【変形労働時間制とは】

前回は、法定労働時間や、労働時間の考え方そのものなど、労働時間管理の原則についてご説明しました。今回は、労働時間管理の応用編として変形労働時間制についてご説明します。

そもそも、法定労働時間は、労働基準法で、1日8時間、1週間40時間(小規模事業場の特例を適用する場合は44時間)と定められています。一方、変形労働時間制は、原則として、あらかじめ労使協定等を締結し労働基準監督署に届け出ることで、一定期間における法定労働時間の総枠を超えなければ、労働時間を弾力的に運用することが認められる制度です。

<変形労働時間制の具体例>
週休2日、法定労働時間の総枠が4週間で160時間の企業が変形労働時間制を導入した場合、例えば、以下のような労働時間の運用が可能になります。
・1週目:45時間/週、9時間/日
・2週目:35時間/週、7時間/日
・3週目:35時間/週、7時間/日
・4週目:45時間/週、9時間/日(4週間の合計:160時間)

変形労働時間制を導入すると、時間外労働・休日労働に関する協定届(通称「36協定」)の締結や、時間外労働割増賃金の支払なしに法定労働時間を超えて労働させることができるようになります。変形労働時間制は、事業所全体はもちろん、特定の職種や部門についてのみでも適用することが可能です。貴社に合った変形労働時間制を導入することで、業務の繁閑に応じて労働時間の配分等を行なうことができ、労働時間を効率的に短縮することも可能になります。

労働時間の原則と変形労働時間制を導入した場合の違いをまとめると、以下のようになります。

労働時間の原則 以下のように法定労働時間が定められている。
【1日8時間、1週40時間(特例44時間)】
※上記を超える場合は、割増賃金の支払等が必要。
変形労働時間制を
導入した場合
一定期間における法定労働時間の総枠を超えなければ、
労働時間を弾力的に運用できる。
※法定労働時間の総枠を超えなければ、割増賃金の支払等は不要。

【変形労働時間制の種類】

変形労働時間制には、以下のような種類があります。
(1)1カ月単位の変形労働時間制(労働基準法 第32条の2)
(2)1年単位の変形労働時間制(労働基準法 第32条の4)
(3)1週間単位の非定形的変形労働時間制(労働基準法 第32条の5)
(4)フレックスタイム制(労働基準法 第32条の3)

以下では、上記(1)〜(3)の制度の概要と具体的な導入方法についてご説明します。(4)のフレックスタイム制については、次回のコラムでご説明します。

(1)1カ月単位の変形労働時間制
1カ月単位の変形労働時間制とは、1カ月以内の一定期間について、法定労働時間の総枠を超えない定めをした場合には、特定された週または日に、法定労働時間を超えて労働させることのできる制度です。

具体的には、企業の財務・経理部門など、「月初と月末は忙しいが、月の中旬は暇である」というように、月内に繁閑の差がある部門等について適用すると効果的な制度です。

・変形期間における法定労働時間の総枠の計算方法(1カ月単位の変形労働時間制)

例)変形期間:1カ月、週法定労働時間:40時間、その月の歴日数:31日 の場合
40時間(週法定労働時間)×31日(歴日数)÷7日(1週間の日数)=177.1時間
⇒ 1カ月の労働時間が177.1時間を超える場合は、時間外労働となります。

<導入方法>
1カ月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則等により以下の内容を規定し、労働基準監督署に届け出る必要があります。また、各月の労働日や労働時間については、変形期間開始前までに労働者にも周知しておきましょう。
・変形期間(1カ月以内の一定期間)
・変形期間の起算日
・変形期間における各日、各週の労働時間
・変形期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない定め
・労使協定による場合、労使協定の有効期間の定め

(2)1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制とは、1カ月超〜1年以内の一定期間について、法定労働時間の総枠を超えない定めをした場合には、特定された週または日に、法定労働時間を超えて労働させることのできる制度です。

具体例としては、季節的な業務など年内で繁忙期と閑散期がある建設業や製造業、運輸業、教育関連業種等での導入割合が高い制度です。ただし、週法定労働時間を44時間とする特例は併用できませんので注意が必要です。

・対象期間における法定労働時間の総枠の計算方法(1年単位の変形労働時間制)

例)対象期間:6カ月、週法定労働時間:40時間、その期間の総日数:184日 の場合
40時間(週法定労働時間)×184日(総日数)÷7日(1週間の日数)=1051.4時間
⇒ 6カ月の労働時間が1051.4時間を超える場合は、時間外労働となります。
【注意点】
以下の限度を超えないように規定する必要があります。
・年間労働日数:対象期間が3カ月を超える場合は、1年当たり280日
・1日の労働時間:10時間
・1週間の労働時間:52時間

<導入方法>
1年単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定により以下の内容を規定し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
・対象となる労働者の範囲
・対象期間(1カ月を超え1年以内の一定期間)
・対象期間の起算日
・特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)
・対象期間における労働日、および労働日ごとの労働時間
・労使協定による場合、労使協定の有効期間の定め

各月ごとの労働日や労働時間については、初月は期間の開始前までに、その後の期間については初日の30日前までに書面で労働者に通知します。

(3)1週間単位の非定形的変形労働時間制
1週間単位の非定形的変形労働時間制は、1日の法定労働時間にかかわらず、1週40時間の範囲内で、労働者を1日10時間まで労働させることのできる制度です。本制度では、忙しい日にはある程度労働時間を延長する代わりに、業務量の少ない日には労働時間を短縮することによって、全体として労働時間の短縮を図ることができます。
ただ、比較的小規模な事業場が対象となるせいか、認知度も低く、導入例は少ないようですが、日々の業務において繁閑の差が激しく、かつ不定期で、1カ月単位の変形労働時間制では業務の繁閑に機敏に対応することが難しい場合に効果的な制度と言えます。

・法定労働時間の総枠(1週間単位の非定形的変形労働時間制)

週法定労働時間:40時間 
⇒ 1週間の労働時間が40時間を超える場合は、時間外労働となります。
【注意点】
・1日の労働時間は10時間を超えないように規定する必要があります。
・週法定労働時間を44時間とする特例は併用できません。

<対象となる事業>
1週間単位の非定形的変形労働時間制は、次の全てを満たす事業のみが対象となります。
・日ごとの業務に著しい繁閑の差を生ずることが多い事業
・繁閑を予測した上で、就業規則等により各日の労働時間を特定することが困難であると認められる事業
・小売業、旅館、料理店、飲食店の事業
・常時使用する労働者数が30人未満の事業

<導入方法>
1週間単位の非定形的変形労働時間制を導入するためには、労使協定により以下の内容を規定し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
・対象となる労働者の範囲
・1週間の所定労働時間は40時間以内とし、各従業員の1日の所定労働時間は10時間以内とする定め

1週間の各日の労働時間は、少なくとも開始の1週間前までに労働者に書面で通知する必要があります。なお、緊急でやむを得ない事由(台風の接近等)があり、労働時間を変更する場合は、変更しようとする日の前日までに書面により労働者に通知します。

【よくある質問】

Q.業務の都合で、急遽残業させた場合であっても、法定労働時間内の総枠を超えていなければ、割増賃金の支払は不要でしょうか?
A.使用者が業務の都合で任意に労働時間を変更し、あらかじめ定めた労働時間外に労働させた場合は、変形労働時間制に該当せず、別途割増賃金の支払が必要になりますので、ご注意ください。

次回は、変形労働時間制導入時の注意点とフレックスタイム制についてご説明します。

著者クレジット

社会保険労務士 岩野麻子(いわの・あさこ)
勤務時代から、350社の中小企業に対する労務コンサルティング業務に従事し、企業内人事部では、従業員約3,000人をサポートした経験を持つ。現在は独立開業し、就業規則の作成や助成金の申請等を行なっている。