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労務Q&A
給与計算のポイント(応用編)

更新日:2012年08月01日

当社は従業員数が少なく、経理担当者には総務関連の業務をも兼任してもらっている状況です。このため経理担当者にかかる負担は大きく、特に細かな給与計算面ではミスも散見されます。給与計算においてミスを防ぐなど参考になるポイント等があればご教示ください。


 
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回答

 前回「給与計算のポイント(基礎編)」では、「正しい給与計算の必要性」をテーマに、給与計算の基本となる事項についてご説明しました。応用編となる今回は、給与計算の中でもある程度の知識が必要となる「保険料や税金に関する項目」や、給与計算業務の効率アップに欠かせない「給与ソフトの活用」、その他、給与計算に関する最近の話題などもご紹介したいと思います。

解説

【保険料や税金に関する項目】

保険料や税金を、給与等からを差し引く(控除する)ことを、源泉徴収(もしくは単に徴収)と言います。給与から徴収する保険料や税金の一例としては、以下のものが挙げられます。
・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
・所得税
・住民税 等

まずは、給与から差し引く保険料の金額を算出する際に必要となる「保険料率」について確認していきましょう。保険料率は、保険料算出の際に欠かせないものですが、改定が多いため、正確な金額を控除するためには、行政などからの情報をこまめにチェックすることが必要です。近年では、3月に健康保険と介護保険料率、4月に雇用保険料率、9月に厚生年金保険料率がそれぞれ改定されました。特に、健康保険料率は都道府県により異なりますので、事業所所在地の料率を適用します。

保険料控除の有無は「従業員の年齢」によっても異なりますので、こちらも注意が必要です。以下に、保険料の種類ごとに、従業員の年齢に応じた給与計算のポイントをまとめます。

保険料の種類 従業員の年齢に応じた給与計算のポイント
介護保険料 ・40歳の誕生日の前日が属する月から保険料の控除を開始
(介護保険第2号被保険者となるため)
例:7月1日生まれの場合は、誕生日の前日が属する月(6月)分(保険料翌月徴収の場合は、7月に徴収する分)の保険料から控除開始
・65歳の誕生日の前日が属する月以降、保険料を控除しない
(介護保険第1号被保険者となるため)
例:7月1日生まれの場合は、誕生日の前日が属する月(6月)分の保険料から控除しなくなる
雇用保険料 当年4月1日時点で、満64歳以上の人は、保険料を控除しない
(免除対象労働者となるため)
厚生年金保険料 70歳の誕生日の前日が属する月以降、保険料を控除しない
(被保険者資格喪失のため)
例:7月1日生まれの場合は、誕生日の前日が属する月(6月)分の保険料から控除しなくなる
健康保険料 75歳の誕生日の当日が属する月以降、保険料を控除しない
(健康保険被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度加入のため)
例:7月1日生まれの場合は、誕生日が属する月(7月)分の保険料から控除しなくなる

なお、雇用保険を除いた、社会保険である健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料は日割計算ができません。月末まで在籍して退職した場合は当月分(保険料翌月徴収の場合は、翌月に徴収する分)の保険料を控除しますが、月の途中で退職した場合は、当月分の保険料は徴収しません。

その他、所得税は、扶養家族の人数によっても税額が変わりますので、家族に異動があった場合は、速やかに届け出るよう、従業員に周知しておくことが必要です。

【給与ソフトの活用】

従業員が増えてきたら、給与ソフトを利用すると、給与計算の業務効率が格段にアップします。給与計算は、前述の通り様々な知識や情報を収集し計算することによって、ようやく正確に行なえるものです。その手間を、給与ソフトを使いこなすことによって、簡素化できますので、事業主であれば、本来の業務である経営や従業員の育成などに専念することができます。

給与ソフトは、多種多様なものが販売されていますが、使い勝手や価格、サポート契約の有無など、特徴は異なります。そのため、自社の給与体系や、給与計算の手順などに合った給与ソフトを選ぶことが重要と言えるでしょう。給与ソフトでは、基本的に「従業員情報、会社基本情報、勤怠情報」を入力することで、基本給、手当などの支給項目、保険料、税金といった控除項目について自動計算することができます。また、体裁の美しい給与明細書や、賃金台帳等の管理帳票を簡単に作ることができます。

とはいえ、給与ソフトへの頼りすぎはミスにつながる場合もあり、注意が必要です。入力した情報に誤りがないか自身の目で再度チェックしたり、給与計算開始前に、給与計算に関わる法律の改正や、従業員の異動等がないか、といった情報を確認することも重要です。

■残業手当等を正しく計算しよう(給与計算に関する最近の話題)
最近よく耳にする言葉で「未払い残業代」というものがあります。以下では、近年増加傾向にある「未払い残業代請求」をされないために、会社が注意すべきポイントをご説明します。
「未払い残業代」が発生している一例として、次のような事項が当てはまります。

・「1日8時間」「1週40時間」という法定労働時間を超えて労働させているが、超えた労働時間に対して、残業代が全く支給されていない、もしくは法定割増率による計算がされていない。
・毎日の残業代を、30分、もしくは1時間単位などで日ごとに切り捨てしている。
・管理職という肩書のため、残業代が支給されていないが、労働基準法で言う管理監督者には当てはまらない。
・タイムカード等による勤怠管理がなされていないため、正確な労働時間は不明だが、法定労働時間を超えていることは確かである。にもかかわらず、残業代が支払われていない。
など

今、自社が抱えている悩みは、他社で経験済みであることも多いものです。「法律通りにやっていたら会社がもたない」と嘆く前に、一度専門家に相談してみることも一つの方法です。上記に当てはまる場合でも、所定の手続に則って「変形労働時間制」を導入し、法定労働時間を弾力的に運用することで、問題が解決する場合もあります。

また、特定の職種については、「裁量労働制」を採用し、労働時間や業務の進行に関して、ある程度従業員に委ねることで、会社も安心して、従業員に伸び伸びと仕事をしてもらうこともできます。とはいえ、「変形労働時間制」を採っていても、当初予定していた労働時間を超える場合は、残業代の支払いが必要ですし、「裁量労働制」の対象者であっても、夜22時以降の勤務については深夜割増手当の支払いが必要となりますので、運用の際には注意が必要です。

「未払い残業代請求」は、近年、企業にとってリスクの高い問題であると言えます。「未払い」とされた残業代はもちろんのこと、遅延損害金や付加金に加え慰謝料までも請求される可能性があるからです。

また、従業員にとって、在職中になかなか言えなかったことでも、いざ退職するとなると、会社に対して強気になれるものです。一人の請求に応じたところ、次々と退職者から請求が来たという事例もあります。会社を大きく成長させていくためにも、今のうちに、リスクの芽は摘み取っておきましょう。

■会社と従業員が成長するために大切なこと
単に給与を上げれば従業員はやる気を出してくれる、と考えられていた時代は終わりました。ここまで、給与計算のポイントを細かくお伝えしてきましたが、大切なのは従業員が働きたいと思う職場作りです。従業員が本当に必要としているのは、正しい評価と自身を成長させてくれる環境です。給与を、従業員を評価する一つのツールとして活用し、従業員とともに会社も成長させていきましょう。

著者クレジット

社会保険労務士 岩野麻子(いわの・あさこ)
勤務時代から、350社の中小企業に対する労務コンサルティング業務に従事し、企業内人事部では、従業員約3,000人をサポートした経験を持つ。現在は独立開業し、就業規則の作成や助成金の申請等を行なっている。