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労働者なら日本!と言わしめた江戸期の農村
歴史のひとコマから、生き方、経営、ビジネスを学ぶ

更新日:2012年01月25日

テレビ・映画の大人気シリーズ『踊る大捜査線』は、従来の刑事ドラマと一線を画すとよく評せられる。それは警察VS犯人という構図だけではなく、警視庁VS所轄署という警察組織内の身分階級の軋轢をドラマの軸に置いているからだ。
 


 
日本の農村部には世界を股にかけてきた当時の外交官たちですら感嘆する生活文化があった
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「労働階級なら日本に住みたい」

この稿でも何回となく取り上げてきた劇画『カムイ伝』(白土三平)。江戸時代、社会の最下層に生まれたカムイや正助という主人公たちが、身分制度に対して 真っ向から戦いを挑むという社会派の歴史ドラマだが、ここでもまた身分階級がストーリーの軸となっている。

そこで描かれている姿こそ、おそらくは私たちが日頃イメージしている江戸時代の農村の姿だろう。ともすれば領主の年貢の徴収に、使役に疲弊し、汲々として いる農民たち。その農民の心根をくみとり、政治を施す領主こそが名君と崇められた頃だ。

ところが最近、NHKで放映されてたシリーズ『明治』によれば、その様相が少しばかり違ってくる。幕末開国以降、日本に居をかまえ日本人と接した外国人たちは、汲々とした農民とはまったく違った姿を発言として残しているのだ。

「1850年の時点で住む場所を選ばなくてはならないとすれば、私が裕福ならイギリスに、労働者階級なら日本に住みたいと思う」(アメリカの学者スーザン・B・ハンレー)

1850年といえば、ペリーが浦賀に来航する数年前のこと。天保の大飢饉が収束する一方で、老中水野忠邦による天保の改革が挫折し、少しばかり世が騒々し くなってきたときだ。そのときに「労働者階級なら日本に住みたい」といわしめる農村は、従来のイメージを覆すに十分な発言である。

外交官たちが驚嘆する生活文化

それだけではない。いまなお幕末史に名を残す外交官たちも同様な発言をしている。

「彼ら(日本の農民)は皆よく肥え、身なりもよく、幸福そうである。一見したところ、富者も貧者もない。これがおそらく人民の本当の幸福の姿というものだ ろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であろうかどうか、疑わしくなる」(ア メリカ駐日総領事ハリス)

「この封建制によって日本人は、われわれの考えている意味では自由でないにしても、多くの幸せを享受することができた。西洋諸国の誇るいっさいの自由と文 明をもってしても、同じくらい長い年月にわたってこの幸せを確保することはできなかった。国家の繁栄・独立・戦争からの自由・生活の技術における物質的な 進歩----これらはすべて、日本人が国民として所有し、そして何世代にもわたって受け継いできたものだ」(イギリス駐日公使オールコック)

よく肥え、身なりもよく、幸せそう。何世代にもわたって受け継いできた国家の繁栄、独立、戦争からの自由、生活の技術における物質的な進歩。これらは 270年におよぶ鎖国政策の中で、日本は独自の豊かな文化を築き上げてきた証左だ。世界を股にかけてきた当時の外交官たちですら感嘆する生活文化だったの だ。

維新後海外の事物・制度を取り入れ、急速に欧化していった日本。そのとき失ったものははたして何であったのか。昨今の国内のありようを見るにつけ、その検証は急務なのかもしれない。