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修理するのは、顧客の心。旧式の電気製品の修理で起業

更新日:2015年06月17日

永年愛用していたオーディオが壊れてしまったが、愛着のある機械なので、捨てたくはない。メーカーの修理期間は終わったが、どこか修理をしてくれるところはないか・・・。そんな願いに応えたサービスを提供する会社、ア・ファンを立ち上げたのが、元ソニーのエンジニア、乗松伸幸氏だ。
 


 
 
 「お客さんの喜びの声を聞くことが、仕事のやりがいにつながっている」と語る乗松氏
「お客さんの喜びの声を聞くことが、仕事のやりがいにつながっている」と語る乗松氏
 
 
 純正部品が無くなった古い機種でも、代替部品などを使えば、修理することはできる
純正部品が無くなった古い機種でも、代替部品などを使えば、修理することはできる
 
 
 

メーカーの修理期間を過ぎた製品を修理

――御社の事業内容を教えてください。
メーカーの修理期間を終えた古いモデルのオーディオ機器やカメラ等の修理のほか、カビ・傷等で見られなくなったビデオテープの修復・ダビングも請け負っています。依頼のなかで一番多いのが、ソニーの犬型ロボットAIBOの修理ですね。2014年春にメーカーが修理を打ち切ったこともあり、依頼が急増した結果、現在、300台くらいが“入院待ち”です。

――修理は、どのような体制をとっているのですか。
現在、全国各地に15名のエンジニアがおり、得意分野ごとに修理を担当しています。修理依頼の受け付け窓口と代金や部品のやり取りは会社が行い、具体的な修理については、各エンジニアが直接お客さんと相談しながら進めます。

――メーカーの修理期間が終わっていると、部品がないのではないですか。
これだけ電気製品のコストダウンが進んでいると、部品の共通化も進んでいるため、専門店等を探せば、古い機種にも使える部品はあります。また、海外などから良品中古の部品を調達して対応することもできます。ちなみに、AIBOの場合は、使わなくなったり、持ち主がいなくなったりしたものを“献体”してくれるケースもあります。献体してもらったAIBOは、お寺で合同供養を行った上で部品を使わせてもらっています。さらに、どうしてもない部品は、部品メーカーに依頼して作ってもらうこともできます。ただし、そうした場合には、あらかじめお客さんに連絡して、その旨を伝え、了承を得た上で対応しています。

――修理費は、どのように設定しているのでしょうか。
修理する機材の状態やお客さんがどこまで修理したいかにより、かかる費用は異なります。ですから、当社は、料金を設定していません。まず、お客さんの要望を聞き、機械の状態やどこまでの修理を望むのか、想定している金額の範囲などを確認します。その後、要望に対応できる技術者を選び、その技術者とお客さんが詳しい打ち合わせをし、見積もりを提示します。そして、それにお客さんが納得すれば、修理を受けるのです。

なお、修理した製品は、新品のようにはならないため、お客さんがまず使って満足したら代金を振り込んでもらうようにしています。それでも、これまで不払いになったケースはありません。

顧客とエンジニアをつなぎ、双方のニーズに応える

――乗松様は、2010年にソニーを早期退職して、翌年、ア・ファンを立ち上げられたそうですね。安定した大企業の仕事を辞めて、なぜ起業の道を選んだのでしょう?
1999年まで中東やインドなどの新興国を中心に、海外で15年ほど働いていました。その間、大金持ちの国から貧しい国まで、さまざまな国を訪れ、いろんな価値観を見てきました。また、海外にいると、トップの海外出張をアテンドすることも多く、井深氏、盛田氏、大賀氏などから直接、経営哲学や理念について話を聞く機会がたくさんありました。“理想工場”を謳った経営者たちの言葉を直接聞くなかで、「自分も小さくていいから、楽しく働け、社会に貢献できる仕事がしたい」と思うようになりました。

また、10年、20年先を考えたとき、自分らしく働いていたいという思いもありました。仕事に軸足を置き、私生活を犠牲にすれば、人生は、薄っぺらになってしまいます。しかも、年齢を重ねるに従い、病気になりやすくなったり、親の介護が必要になったりと、若い時のようにがむしゃらには働けなくなります。そこで、私生活も大切にしながら、働き続ける方法として、起業の道を選んだのです。

――古い製品の再生を事業にされたのは、なぜだったのでしょうか。
利用してくれるお客さんがいるにもかかわらず、「部品の保有期間が終わったから」と、自社製品の修理を断るのは、お客さんの立場を無視したものだと思ったからです。古い製品を使い続けたい人がいるのであれば、そうした人たちの声に応えるサービスがあってもいいのではないかと思いました。同時に、優れた技術を持ちながら、それを活かせていないリタイアしたエンジニアたちに働く機会を提供したいとも思いました。そこで、古い製品の修理サービスなら、消費者とエンジニアの双方の希望に応えられると考え、事業化を決めたのです。

お金を追わないビジネスのあり方を示したい

――事業経営においてどんなことを意識されていますか。
AIBOの修理依頼は爆発的に増えていますが、利益の追求や会社を大きくすることは考えていません。会社名に“ファン”という言葉を入れている通り、お客さんに喜んでもらえる修理サービスを自らも楽しみながら提供することを心がけてしています。

お客さんは、「亡くなった奥さんのビデオを見たい」、「介護施設にAIBOを連れていきたい」など、さまざまな理由から、古い機械やテープの修理を依頼してきます。ですから、我々は、お客さんの心を修理するつもりで、機械を修理しています。AIBOの修理も当初は、対応できるエンジニアは1人でしたが、他のメンバーが「我々が修理をすることで、お客さんがハッピーになってくれるのなら、やろう」と、修理技術を進んで習得した結果、たくさんの依頼に対応できるようになったのです。

――今後の展望を教えてください。
近年は、“損か得か”という考え方が幅をきかせ、お金にならないビジネスは切り捨てられる風潮がありますが、本来、ビジネスは、金儲けが目的ではありません。お金を追いかけなければ、お金がついてきます。一生懸命サポートすれば、対価が払われるのです。そのことを、次世代の人たちに、自分の生き方を通じ伝えていかなければと考えています。最近は、40代の人も修理スタッフに加わってきたので、まずは、仕事を通じ、彼らにそれを伝えていきたいですね。

プロフィール

株式会社ア・ファン A・FUN 〜匠工房〜 代表取締役社長 乗松 伸幸(のりまつ・のぶゆき)
1955年4月1日。愛媛県出身。永年エンジニアとして勤務したソニーを2010年に退社、2011年7月にア・ファンを設立。
http://a-fun.biz/

組織名:株式会社ア・ファン A・FUN 〜 匠工房 〜
所在地:〒275-0012 千葉県習志野市本大久保5丁目9番13-402号
電話:080-2045-5774
Fax:047-470-8484
E-mail:info@a-fun.biz