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イチジクの甘露煮の虜になり、イチジク農家に転身
花果家(かかや)オーナー 塩路 ゆか氏

更新日:2013年04月17日

大好きなイチジクの甘露煮をいちから自分の手で作るべく、ずぶの素人が覚悟を決めて都心のマンションを引き払い、静岡県で無農薬のイチジク栽培をスタート。
 


 
 
 イチジクの苗木を持つ塩路ゆか氏
イチジクの苗木を持つ塩路ゆか氏
 
 
お茶、お酒やワイン、ヨーグルト、クリームとの相性もいい「いちじく蜜煮」
お茶、お酒やワイン、ヨーグルト、クリームとの相性もいい「いちじく蜜煮」
 
 
2年目にして1600個のイチジクを収穫
2年目にして1600個のイチジクを収穫
 
 
 イチジクにもさまざまな種類が
イチジクにもさまざまな種類が
 
 
 稲作にも挑戦。田植えと稲刈りには友だちが大勢参加して楽しいイベントに
稲作にも挑戦。田植えと稲刈りには友だちが大勢参加して楽しいイベントに
 

イチジクを仕入れるより自分で栽培しよう

──農業を始めたのはいつですか。
2011年5月からです。

──前職は何をなさっていましたか。
東京で、フリーランスのデザイナーとして働いていました。

──イチジク栽培を始めた経緯をお聞かせください。
友人のお母さんが埼玉までイチジクを育てていて、彼女が作るイチジクの甘露煮の大ファンだったんです。ぎゅっと詰まった甘さとねっとりとした食感、でも後味はさっぱり。生のイチジクとはまた別のおいしさでした。ところが、お母さんが高齢になられて、そろそろイチジクの甘露煮を作るのがむずかしくなってきたので、「何とかしなくちゃ」と、後継者として名乗りを上げました。

でも、何から手を付けていいかわからなかったので、東京都が主催している起業セミナーに参加したり、ネットで見つけた起業支援団体の講座を受けたりして勉強しました。それまで私は、イチジクを仕入れて加工して売ることしか考えていませんでしたが、この講座に出て、「自分で栽培するのもあり」ということに気がついたんです。仕入れて売る場合、販売価格を高くしないと儲けは薄い。でも、自分でイチジクを栽培すれば、生の果実を売ることもできるし、かたちが悪いものはジャムにするとか、煮汁からも何か作れるかもしれないし、幅が広がり、無駄もなくなります。そうなれば価格も抑えられると。

──農業の魅力はどんなところにありますか。
イチジクだけでなく野菜も含めて、何かを育てて実りを得るということが魅力的。とてもリアルで充実感があります。また、作物を育てるだけでなく、パッケージや売り方まで自分で手がけることができるのは楽しいですね。

──未経験でまったく新しい仕事を始める不安はありませんでしたか。
やらずに後悔するより、やって後悔するほうがマシと考えるほうなので、不安よりも楽しみのほうが大きかったです。東京での仕事は今でも少し続けています。インターネットのおかげで東京にいる必要性がなくなったことは大きいですね。

──パートナーの理解は得られましたか。
偶然にも、彼も農業に興味を持っていたようで、二つ返事でOKでした。

──土地はどうやって探しましたか。
不動産屋さんに通って探しましたが、家を借りると、農業に対する本気度が低いと見られて土地を借りるのがむずかしいと言われました。家を建てるか買うかすれば、空いている耕地はあると。そこで、家を建てることにしたんです。

──初期投資額と耕地面積はどのくらいですか。
初期投資は、土地の購入と家の建築費を含めて1700万円ほど。耕地面積は一部借りていますが、それも含めて3300平方メートルくらい。耕地の約4割をイチジクの栽培に当てています。

──これまでの売り上げと今後の売り上げ目標は?
1年目は台風が原因でイチジクの木が病気になり、収穫はゼロでした。2年目の去年は10万円ほど。できた分で試作品を作ったり、知り合いへの手みやげ等にしたので。収穫量は1600個で、そのまま商品化して売れれば30万円くらいにはなったと思います。今年のイチジクの収穫量は7000個が目標。5年後には、農業からの年収を300万円くらいにしたいです。

害虫や台風の苦労はあれど、ストレスフリー


──「いちじく蜜煮」の価格と販売ルートについてお聞かせください。
小売価格は、イチジクの大きさによって3個または4個入り600円です。販売ルートはまだ確立していません。朝市に出店してみたり、Yahoo!オークションに定価で出してみたりしました。バーやカフェに卸したり、自分でサイトを立ち上げて販売することも考えていますが、まだどうするか決めかねています。

──イチジク以外に売る予定の作物はありますか。
トマトは売りたいですね。いろんな種類があって楽しいし、自分も好きだし。見たことのない種類を見つけると、つい植えてみたくなります。去年植えてヒットしたのは、「カーボロネロ」という黒キャベツ。おいしいし収穫がしやすいし、あまり売られていません。こういう作物をどれだけ見つけられるかは重要だと思います。

──農業を始めて良かったと思うことは何ですか。
農業は世話した分、結果になって返ってきます。実がなる、というのはとてもわかりやすい。安全な食べ物と規則正しい生活のおかげで健康になりました。

──では、苦労と感じることは?
害虫や台風などの自然災害。でも、自然相手だとおおらかな気持ちになれるのか、ストレスにならないのが不思議です。人間関係のほうがストレスになりますね。

──フェイスブックで農業の日々のレポートをする理由と反響は?
個人的なメモの意味合いもありますが、毎日がオドロキの連続で、それらを書いていたらみんなも楽しんでくれるので、続けています。知らないことを知るのは、みんな面白いんだと思います。

──「いちじく蜜煮」の食べ方は?
乾燥イチジクほど固くなく、もっちりした食感とツブツブ感があり、梅酒を使っているので、コクがあるのにあと味がさっぱり。そのまま食べてもいいし、お茶、紅茶、お酒やワインにもよく合います。半生状態なので、ヨーグルトや生クリームを添えて食べるのもお勧め。パウンドケーキなどのお菓子の材料にもなります。

──今後の課題と、将来の夢をお聞かせください。
課題は耕地をどう増やすか。農地法の制約などがあって、素人には土地を借りるのがむずかしいんです。夢は、もちろん、イチジク屋として生計を立てること。パティスリーなどとコラボができたら楽しいですね。そのためには、まず安定的に収穫できるようになることが目標。無農薬で作っているので、その点はセールスポイントになります。買ってくださった方の中に、無農薬でないと体が受け付けないという方がいて、とても喜んでもらえました。そう言われると、こちらもうれしいです。

プロフィール

塩路ゆか(しおじ・ゆか)氏
大阪出身。大阪での制作会社勤務の後、リクルートを経て、フリーランスのデザイナーになる。2011年5月に静岡県富士宮市に引っ越し、イチジク栽培・「いちじく蜜煮」の製造販売を開始。

名称/花果家(かかや)
TEL&FAX/0544-66-0689
Email/shio_kakaya@yahoo.co.jp