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「IT×教育」オンライン教育の可能性
タイムリーで役にたつ、ビジネステーマの核心を取材しました。

更新日:2013年12月18日

世界中の著名大学が相次いで始めているインターネット上で開講するオンライン講座「MOOC(ムーク)」に注目が集まっている。従来の「e-ラーニング」とは異なる特徴をもつオンライン講座によって様変わりする教育市場を紹介する。
 


 
「IT×教育」オンライン教育の可能性

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 だれもがハーバード大学の講義を受けられる時代の到来

アメリカ・ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「白熱教室」がNHKで放送された。著名大学の講義がテレビで観られるとあって、日本でも話題になったのは記憶に新しい。このような価値ある講義を、いつでもどこでもインターネット(以下、ネット)を通じて無料で受けられる時代が到来している。

MOOC(ムーク)とは、Massive Open Online Courseの頭文字を取ったもので、大規模公開オンライン講座と訳される。この新しい教育手法に、いま世界中が注目している。その名のとおり、大学がネット上で動画などを使って公開する講座で、多くの場合が無料で、学歴や職業の条件に関わらず、誰もが参加することができる。このオンライン講座によって様変わりする教育市場を、その特徴とともに見ていこう。

デジタル環境の発展がオンライン講座を加速

ネットを活用した学習方法という点では、1990年代に増えた「e-ラーニング」やWeb上での資料公開などがあったが、ムークはそれらとはやや異なる。ムークの特徴として、次のような点が挙げられる。

・年齢、学歴、職業に関わらず、誰でも受講できる
・講師への質疑応答が可能である
・テスト参加やレポート提出が可能である
・SNS(ソーシャル・メディア・サービス)を使って受講生同士のディスカッションが可能である
・原則、無料(一部、有料あり)である

ムーク登場の背景には、ネットインフラの急速な発展やスマートフォンやタブレットの普及、そして回線の高速化による動画視聴の円滑化に加え、SNSが受講者同士の相互学習を可能にさせたこともあると言える。

この新しい教育手法が、受講生、そして教育機関にもたらすメリットは大きい。受講生としては、環境や経済力に関わらず、ネット環境さえ整えば誰もがハイレベルな教育を受ける機会が与えられる。また、転居を伴わずに、世界中の大学の講義を受けることができる。一方、大学などの教育機関は、大学のブランド認知の拡大や、優秀な学生の誘致につなげられる。将来的には、ビジネスモデルを確立し、収益化を図っていく狙いもある。

世界200カ国以上230万人以上が登録


ムークは、とくに欧米で急速に広まっており、ワシントンポストの記事によると、教育の市場規模はアメリカの国内総生産の9%を占め、1兆3,000億円を超えると言われており、「IT×教育」のビジネスチャンスに既存の教育機関やベンチャー企業の期待が集まっている。

もっとも有名なムークである「Coursera(コーセラ)」はアメリカ・スタンフォード大学の2名の教員が2012年に設立し、サイト上では、ハーバード大学、スタンフォード大学をはじめとする世界トップクラスの大学が講義を配信。世界200カ国以上230万人以上が登録している。また、東京大学も2013年9月に参画し、世界中から約3万8,000人(2013年8月時点)の履修登録が集まり話題になった。

ほかにも、「教育の民主化」を目指して2011年に設立された「Udacity(ユダシティ)」や、2012年設立の「edX(エデックス)」は、ハーバード大学の有名講義であるマイケル・サンデル教授の講義があるほか、京都大学が来春にも配信をスタートする。

これらは現在のところ、おもに英語による講義となる。日本語でのサービスとしては「iTunes U」で配信されている大学講義のコンテンツがある。国内外の大学の講義を配信しており、一部日本語で受講できるものがある。

大学の講義だけでなく、プログラミングやデザインといった専門知識を教えるサービスも登場している。日本では2012年1月にスタートしたスクーが展開する「schoo WEB-campus」がある。おもに社会人を対象に、ビジネス実務などの講義をネットの生放送で配信するサービスだ。約100本の講義を配信してきており、無料会員は4万人を超え、一部有料サービスも行っており、有料会員も増加しているという。このように、日本でもITを活用した教育分野に参入するベンチャー企業が増えてきている。

オンライン講座の今後の課題と展望

ムークは新しい教育手法のため、さまざまな視点からの課題も挙げられる。

まず、ビジネスという視点からは、運営側は採算よりも普及に注力しているのが現状であり、収益化という点ではやや時間がかかるのではという見方がある。対策としては、単位を取得できる講座を有料化するほか、広告、受講生(学生)と企業のマッチングなどが考えられる。

また、従来の大学には存在する、学びの成果としての単位や学位の整備がまだ不十分であるという難点もある。現状、オンライン講座のみで単位や学位を認定している大学は極わずかであり、今後、受講生のモチベーションアップや、学歴として残る体制が求められていくだろう。

将来的には、これまでのような高額な学費をかけて大学へ行くより、安価なオンライン講座を選択する学生が増えた時、リアルの教育現場や、教師の意義が問われてくるかもしれない。しかし、オンライン講座という特性上、個人のモチベーション維持が難しいケースも多くあり、やはり教師が直接学生を指導することで、学びが深まり、継続性が高まるとも考えられ、リアルとオンラインでの教育の場は、互いに連携し過不足を補い合う存在になっていくのではないかと考えられる。