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ゲームセンターにおける新しい風景
タイムリーで役にたつ、ビジネステーマの核心を取材しました。

更新日:2012年12月19日

かつて若者で賑わったゲームセンターに、シニア層の出入りが活発になるなど、新しい動きがみられるようになった。少子化という社会問題の影響や、家庭用ゲーム機やスマートフォンを介したソーシャルゲームの普及の影響もあり、ゲームセンターを取り巻く環境は一層厳しくなった。そんななかでの、業界の新規ターゲット設定について解説する。
 


 
ゲームセンターにおける新しい風景

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 シニア層にとってのゲームセンターの魅力はコミュニケーション

ここ2〜3年、ゲームセンターにある変化が起きている。これまで10代から20代の若者が利用者の中心だったが、シニア層の利用が注目されている。ゲームセンターは、1980年代くらいまでは若者のみをおもなターゲットとしていた。その後、「ガチャガチャ」の人気で子どもの集客に成功し、「プリクラ」の登場などが起爆剤となり、中高生を中心とした女性層にまで徐々に浸透していった。

しかし、近年、少子化という社会問題の影響や、家庭用ゲーム機の普及やスマートフォン(以下、スマホ)などを介したソーシャルゲームの台頭もあり、ゲームセンターの利用者が激減している。そんななか、新たな需要として、シニア層の利用が注目されているのだ。

実際に、平日の昼過ぎ、郊外の大手スーパー内のゲームセンターに行くと、スロットなどのメダルゲームや、ぬいぐるみを取るクレーンゲームに熱中している、60代くらいの男性がいた。別のある日は、60代後半くらいの夫婦を見かけた。シニア層がゲームセンターに出入りする理由は、純粋にゲームを楽しむといった以外にもいくつかあるようだ。

ひとつに、コミュニケーションの場として捉えている人たちがいる。ゲームが好きな人ばかりでなく、暇つぶしの人であれ、その場所に行くと決まって同じ顔ぶれとなれば、自然と会話が生まれる。年齢を重ねるとともに新しい出会いは少なくなるため、こういった気軽な場所でおしゃべりに高じることができる。これは、特に女性のシニア層に多くみられる傾向だ。

もうひとつ大きい要因として、孫との交流がある。現在の60代といえば、1970年代に登場した「スペースインベーダー」に熱中した世代だけにゲーム好きは多く、孫とゲームセンターへ行き、一緒に楽しむことができる。また腕が上がってくれば、孫にカッコイイところを見せようとさらに没頭する。これは、特に男性のシニア層に多く見られる傾向。子どもが好きな「プリクラ」を一緒に撮って思い出にする利用者もいる。さらに、手先を起用に動かすことは「ボケ防止にいい」という利用者もいる。

ゲームの種類については、若者が好むような過激なシューティングゲームやロールプレイングゲームというよりは、スロットマシーンやクレーンゲームの人気が高い。複雑過ぎず、かといって簡単過ぎない、適度な難易度が受けているようだ。

ゲームセンター市場縮小に影響を及ぼす、ソーシャルゲームの台頭

前述した通り、若者のゲームセンター利用が激減していると同時に、業界全体をみても市場の縮小が如実になっている。

日本生産本部の調べによると、ゲームセンターの市場規模は、2010年度で4760億円となり、ピークだった2007年度と比べ3割も縮小。また、日本アミューズメント産業協会によると、施設用のゲーム機器の市場は、2010年度の1732億円となり、2006年度と比較して500億円の減少となった。

市場の縮小は、少子高齢化という社会問題ばかりが影響しているのではない。大きな影響を受けているのは、ソニーの「PlayStation(r)3」マイクロソフトの「XBOX」などの家庭ゲーム機や、任天堂の「ニンテンドーDS」や、ソニーの「PlayStation(r)Portable」などの携帯ゲーム機の普及もさることながら、ここ数年では、ソーシャルゲーム登場の影響が大きい。ソーシャルゲームの二大巨頭といえば、GREEが運営する「GREE」DeNAが運営する「Mobage」が有名で、スマホで提供されている。調査会社のシード・プランニングによると、国内スマートフォンゲーム市場の調査を行った結果、2010年の国内スマートフォンゲーム市場は85億円と推計。2015年には2010年の30倍の2550億円に達する見込み。ゲームセンターの市場規模が2010年度で4760億円を考えると、徐々にその差が縮まっていくことが予想される。

「地域コミュニティの活性」という新しい役割

このように、かつて5000億円市場といわれたゲームセンター業界も影を落とし始めている。そこに歯止めをかけるべく業界が取り組みはじめたのが、シニア層へのアプローチだ。

ゲームセンターを運営する企業としては、少子高齢化への対応として、若者だけに特化するのではなく、需要拡大が期待されるシニア層の利用が進めば、平日の稼働率の向上が見込める。そこで、新たな集客策を打ち出す必要がある。これまの若者向けの様式から、シニア層の利用を増やすためのポイントとして、次のようなことが有効と考えられる。

・気軽に出入りしやすく、店内は明るく
・長時間の滞在を見越して、椅子の座りやすさを改善
・店内の安全・安心のため、店員の巡回
・定期的にゲームレッスンの開催

また、シニア層の利用が進むことで、彼、彼女たちを基軸として、祖父母と孫といった集客のほか、アットホームな店内が受け入れられ、親子利用も期待される。

首都圏中心にゲームセンターを運営する「アドアーズ」もシニア層への取り組みを強化している。その一例を紹介する。

・お茶菓子の用意
・ゲームフロアに老眼鏡や毛布をさりげなく設置
・午前中だけ、店舗照明を明るめする

さらに、同社は地域コミュニティの活性をうたっており、昨年(2011年)の敬老の日には、アミューズメント施設全72店舗のうち、メダル取り扱い全64店舗において、60歳以上のお客様へ、1000円分のメダルサービスを実施するほか、お連れのお客様にクレーンゲーム機などが遊べる無料チケットを配付するイベントを開催し、積極的に地域に根ざすコミュニティの場を作っている。

ゲームフロアに老眼鏡や毛布をさりげなく置く

今回、ゲームセンターの新規ターゲット設定についてみてきたが、すべての業界が、可処分所得が多いであろうシニア層にアプローチすることが答えとは言い切れない。業界の新規ターゲット設定についは、時代の変化により余儀なくされるものであるが、実は、既存客と新規開拓の2方向を大事にすることがひとつのキーワードとなっている。ゲームセンターの例では、店舗設計やサービスを、これまでのターゲットの主である若者向けから、シニア向けに全面リニューアルするわけではない。曜日や時間帯に応じた最適なターゲットを見据えて、店内レイアウトや照明の変化のほか、サービス内容の変更をするという戦略である。これまで収益が望めなかったアイドリングタイムを、新しいターゲットを設定することで、活用を考えるということだ。

また、世間で考えられている以上にシニア層向けのビジネスは難しいともいえる。時間と資金に余裕があるとされるシニア層は、「シニア向け」とされることを望まないだろう。そんななか、彼、彼女たちが気持ちよくモノやコトに関心をもってもらうような、アドアーズの例でいうところの「ゲームフロアに老眼鏡や毛布をさりげなく置く」といった「自然なサービス」がポイントになるのだろう。