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偉大なる部下の“やりすごし”

更新日:2009年03月11日

産経新聞に連載されている「話の肖像画」で元ソニー上席常務の天外伺朗さんが“始まった人間性経営学”というテーマで面白いことを書かれていたので、著作である『マネジメント革命』(講談社)を読むことにした。


 
マネジメント革命/ 天外伺朗
マネジメント革命/ 天外伺朗
 

相乗りの潮流とは無縁

日本のメディアが取り上げ、書店に書籍が並ぶような経営知識には時代によってあからさまな潮流があり、アメリカ式の合理主義/成果主義経営がもてはやされたと思えば否定され、顧客満足度を重視する傾向が尊重されたかと思えば、ステークホルダーとして従業員を最重要とする主張が正義だと書かれていたりするのだが、これらを「あくまでメディアが得意とする適当な相乗り」の類で皮肉に捉えると収拾がつかなくなる。そこで、たまには経営本にも目を向ける必要があると思う。

この本は、元ソニー上席常務の天外伺朗さんが書かれた。ソニーというクリエイティブを体現し、かつ標榜もする集団のなかで42年間を過ごし、次々と出現する新しい経営手法やその潮流を体現してきた著者が書いているというところに話題性があるように思うが、中身は至って相乗りの潮流とは無縁なものだ。

これからの経営者には、成果主義の管理型マネジメントを超えた“長老型マネジメント”が必要だと、天外さんは説く。長老たる経営者は「人の上に立つ者はまず自らの人間性を磨かなければならない」し、そうすれば、社員との信頼関係が確立され、燃える組織ができるという。

社会で仕事をする大多数の“従業員”という立場の人間にとって、仕事をする最終的な目的はおそらく“利益の追求”ではなかろう。家族がいて生活があって人生があってその中に仕事があるのだから、“利益の追求”を最終目的とした合理性の追求のなかから生まれただけの成果主義は、その根本においてモチベーションを生まないのではないか?と考えていたので、天外伺朗さんの産経新聞が目にとまり、同氏の著作を読むきっかけとなった。

天外さんが経営効率を高める要諦のひとつとしてあげているのが、“信頼関係”である。信頼関係が通じている状況において大切になるのが、“やりすごし”というコンセプト。これにはなるほどと思わされた。

「御社は、義理人情が通じるほど経営者や社員との間に信頼関係があるだろうか、これまで日本において企業という集団を円滑に動かしてきたのは、上司の無茶な指示に対して偉大なるやりすごしという手法があったからで、これには信頼関係がなくてはいけない」と著者は言う。 “人間は本来合理的な存在である”という合理主義の根本的なコンセプトは否定される。

同書は見出しを格言風に表現しているため、見出しを読むだけでポイントが把握できるような本の作りになっている。そのいくつか抜粋しよう。
「健全な組織はゆるぎない信頼感に支えられている」
「技術に命をかけるスーパー・エンジニアたちには、従来の管理型マネジメント・スタイルはそぐわない。彼らが生き生きと仕事に没頭するためには、特殊なマネジメント・スタイルが要求される。それを私は『長老型マネジメント』と名付けた」
「人間が理性と論理で自分自身を十分にコントロールできるというのは、とんでもない錯覚。実際には無意識からこみ上げてくる様々な衝動の支配下にある」
「純粋さが保てたとき、サラリーマンはスーパーマンに変身する」

仏教や儒教の知識があって当然

天外さんは、仏教や心理学の豊富な見解を駆使し、社会、会社、社員を見通しつつ、ソニー創業期から上席常務になるまで42年間勤めた自身の経験を盛り込み、具体的な考え方を示していく。新たな方向性の示唆もさることながら、豊かな経験から生み出される正確な現状分析が本に逞しい厚みを増していて、社員にどうしたらやる気を起こさせることができるか悩まれている経営者には考え方の一助となると思う。

いわゆる宗教的な要素が入ってくると、色メガネで見る人が多いがそうではなかろう。経営者として多くの社員の人生に決定的なかかわりをもつのだから、仏教や儒教の知識くらいはあって当たり前ではなかろうか。