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年間3万4000個を販売
柚子トマト/かめくら

更新日:2011年11月16日

 サラダを筆頭に、日々の食卓に顔を見せるトマト。“洋”のイメージが強いが、かめくら(京都府亀岡市)では漬物としてヒット商品になっている。「トマト」と「漬物」。一見マッチしないこの二つはいかにして融合したのか。
 


 
 
柚子トマト
■柚子トマト
柚子の香りがほんのり利いたデザート感覚のお漬物 525円(税込み)/1個
主役はトマト。パッケージは飾らず、中の野菜が引き立つよう、透明のビニールに入っている
 
 
西村貴之社長
かめくら・西村貴之社長。「あきらめずに根気よく続ける。そうすれば必ず道は開ける」(西村氏)
 
 
ほどよい甘みと酸味がサラダに合う
トマトを覆うジュレはドレッシングになる。ほどよい甘みと酸味がサラダに合うという
 
 
 

偶然で生まれた新しい漬物

トマトが日本人の口に入るようになったのはそう昔のことではない。江戸期までは観賞用だったというから、和食とトマトの接点が少ないのも納得できる。

だがそんなトマトがかめくらでは漬物になっている。「ほんとうに偶然から生まれた産物」とかめくら・西村貴之社長は、このトマトの漬物が誕生した秘話を語る。

商品の原型が生まれたのは1993年。前職で西村氏が漬物の新しい調味液の開発を担当していた時のことだ。開発のかたわら、惣菜の下ごしらえのためにトマトの湯むきをしていた。「気がつくと湯むきしたはずのトマトが一つ足りなくなっていた」(西村氏)

翌日。開発中の調味液に漬けた野菜の味を見ようと中を覗くと、前日なくなったはずの湯むきトマトが入っていた。本来は惣菜として使われるはずだったトマト。それを開発中の漬物液の中に落としてしまっていたのだ。

西村氏はこれを食べてしまう。「証拠隠滅してしまおうと思って」(西村氏)。こうして食べてしまったトマトだが、西村氏はその味に驚いた。トマト特有の青臭さがなく、酸味もない。昆布ベースの出汁にトマトのうまみだけが濃縮されている。もともとトマトが苦手だった西村氏が、その時初めてトマトをおいしく食べられたという。

売れたのは最初だけ長き不遇の時代を越えて

「トマトの漬物はおいしい」と西村氏は自信満々に商品化を進めた。販売を開始するや、目新しさもあったのだろう、1カ月に約1500個を出荷するなど、手作業でつくる30種超の漬物の中でも、群を抜く売れ行きを見せた。

だが湯むきしたトマトはデリケートだ。水分を含めば含むほど柔らかくなり、形がなくなってしまう。賞味期限を4日と設定したが、4日と持たず水分を含みすぎて破裂し、赤い水になってしまうこともあった。そのためクレームが多く、割高なこともあり、発売から約1年で出荷量は激減した。

会社では「廃番商品か」と揶揄され、一番少ない時期でその出荷個数は月240個にまで落ち込んだ。

それでも西村氏は「あきらめきれなかった」と当時を振り返る。

「問題はすぐに形が崩れてなくなってしまうこと」(西村氏)。少しでも形を保つ工夫をするために試行錯誤を重ねた。

以前トマトの漬物と同時期に出された惣菜の中に、先輩が開発したトマトのジュレ(ゼリー)があった。「湯むきしたトマトを、ジュレで包んでしまえばいいのでは?」と西村氏は考えた。

この試みが大成功。ジュレで包んだトマトは4日を越えても型崩れすることなく、賞味期限は7日に延長された。

実は西村氏は、弟子入りしていた漬物店で二度の倒産を経験している。かめくらは三度目の正直とばかりに、西村氏が同僚たちと2005年10月に立ち上げた。「これまでの伝統を受け継いでいくだけでは同じことの繰り返し」(西村氏)。経験に裏づけられた新しいお漬物をつくることこそが、これから生き延びていく道だと考えた。

空前の大ヒット 人を惹きつける赤い色

「いつか必ず日の目を見る日が来る」。トマトの漬物は、ネット限定販売とし、改良しながら細々とつくる日々が続いていた。転機は新会社設立から半年後。ジェイアール京都伊勢丹から、トマトの漬物を催事で販売できないかと依頼がきたのだ。

「最後のチャンスだと思った」(西村氏)。改良を重ねたトマトの漬物が百貨店で販売される──最初に完成してから15年の月日が経っていた。ここで販売したのは、プチトマトを使った「プチっ子トマト」とトマトと一緒にレモンを漬けた「レモントマト」。

広告の品として打ち出した「プチっ子トマト」は想定以上の人気となり、1週間で600個売れたという。

この成功をきっかけに同百貨店では、常設でトマトの漬物を販売できるようになった。

さらにその年の9月。同社の看板商品となる「柚子トマト」が開発される。

もはや、以前のように買ったそばから溶けて赤い水になってしまうことはない。1週間に1000個以上売れる月も出てきたという。「今度こそ、本当のヒット商品になった」(西村氏)

その理由として「味だけでなく見た目の斬新さも大きく関係しているはず」と西村氏は言う。

漬物に少ない天然の赤い色。そしてトマトを漬物にするという意外性。目に鮮やかな赤が、来た人を惹きつける。

催事では、ほかの野菜とあえてサラダにするなど、食べ方の提案までする。逆に「刻んでそのままパスタの具にしてもいいね」などと、試食した人から提案されることもある。

一度はお蔵入りになりかけたトマトの漬物。それが復活し、定着し得た背景には「いつか絶対に売れるようになる」というつくり手の信念があった。

Company Profile

かめくら
京都府亀岡市稗田野町奥条門田4
資本金:1000万円
従業員:8人
0771-21-8730
http://www.kyo-kamekura.jp/