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人事の力
さかもと未明の言わずにはいられない

更新日:2012年04月04日

※月刊WizBizバックナンバー(2012年3月号)よりお届けいたします。
 


 

さかもと未明氏 顔写真

 
バックナンバー
 
コンプライアンスの重要性
2012年3月7日
世界に通じる日本の可能性
2012年2月8日
いざという時にどう備えるか
2012年1月11日
リーダーシップとは
2011年11月30日
セルフモチベーション
2011年11月2日
彼岸に思う
2011年10月5日
祭りに見る人間の底力
2011年9月7日
ボランティアが熱い
2011年8月3日
無自覚な享受から脱する時
2011年7月6日
大震災に思う──“真っ当”な国になるために
2011年6月8日
好意を受ける難しさ
2011年5月18日
仕事を失って見えた「初志貫徹」の道
2011年4月6日
裸の心で得る縁
2011年3月9日
私見、後継者問題
2011年2月9日
「らしさ」を超えて
2011年1月5日
われらが父祖に学ぶ
2010年12月15日
順境の時にできること
2010年11月16日
毀誉褒貶と苦難のとき
2010年10月19日
 
バックナンバー一覧
 

年が変わると、運気が変わるのだろうか。我が事務所では、突然にいくつかの仕事が舞い込むなど、思いがけない動きがあった。一方、サービス業を営む知人の事務所では、人の入れ替えに伴い発注ミスなどが頻発するようになったそうだ。それで、人事についての相談を受けた。

「タイムカードを無断で持ち帰られて、会社の計算と数十円合わないと言われたり、通勤に必要だからと駐輪場代を請求されたり、勤務時間を従業員個人の都合に合わせて変更することになったり……。まいっちゃうよ」とため息をつく知人に私は言った。「私も仕事が激増して人を増やした時、似たようなことが起きたからわかりますよ」と。

しかし、そういう「雇われる側の都合」だけで会社の制度を変えなければいけない状態には、雇う側に落ち度があるんだと思う。そこで、「そろそろ事業の規模に合わせて、決め事や、人事の工夫が必要な時かもしれませんね」と提案した。そうして、私の経験を生かし、その会社のスタッフと面接をしたり、業務のマニュアルを作成したりという動きが始まった。

まずはスタッフの希望を聞くが、会社の都合に反するものに関しては聞き入れない。その方針に従ってもらえない場合は辞めていただくことを明確にした上でだ。雇う側が、「君にいてもらわなくては困る」という態度では、交渉はできない。

私も特殊な技術を必要とする漫画のアシスタントを新しく探すことを面倒に思って、経営に負担になるほどの人件費を払っていたことがあった。「でも、それは互いにとってよくないこと」と私は知人に話をした。

作家は読者のほうを見て、経営者は顧客のほうを見て考えるべきで、スタッフの機嫌を取るのが仕事ではない。互いに辛い部分があろうとも、それをともに乗り越え、ともに顧客のほうを向くのが、経営者とスタッフの正しいあり方だろう。

「だから、事業所の『事業目標』や『スタッフの心得』をつくり、志を持って働けるようにするといいかもしれない」と私は知人に言った。

時給を稼ぐためだけに業務をこなすような人がいる職場はだめだ。「自分の仕事は事務だから」と、付帯的な業務である掃除を嫌がったり、勤務時間ぎりぎりに飛び込んできたりする人にも、態度を改めてもらえるよう徹底することにした。その代わり社長にも同じようにしっかりしてもらう。

そうして話し合いを始めると、ほとんどの場合、スタッフに「そうですよね」と同感してもらえた。それどころか、「もっとこうしたらいいと思うんですが」とか、「できればもっと働きたいんです」と言ってくれる人までいた。「スタッフが横並びなので、誰が指示を出せばいいのか困ることがある。リーダーを立てて欲しい」と言ってくれた人もいた。意見を出してくれた一人にまとめ役をして欲しいと頼むと、業務が増えるだけで大変なのに、「ぜひ」と言ってくれたのは嬉しかった。

そんなやりとりの中で、私は人が「化ける」という人事の力を目の当たりにし、感動せずにはいられなかった。「同じお金なら楽をして稼ぎたい」という怠け心も人の中にはもちろんある。だが、志や責任感、働く喜びをうまく引き出すことができれば、同じ人が生まれ変わったように動いてくれる。それこそが、会社の力であり、経営の喜びだろう。

件の知人も「辞められることを恐れるのではなく、辞めたくない職場にすればいいんだね」と喜んでくれた。春は出会いと別れの季節だ。別れなければならない場合も、理由をはっきりと示すことで互いの人生勉強になるはずだ。人に宿る前向きな力を信じて、春を迎えたい。

著者プロフィール

さかもと未明
1965年神奈川県生まれ。玉川大学文学部卒。商社OLを経て89年に漫画家デビュー。レディースコミック誌を中心に活躍、2000年には作家としての活動も開始。作品は硬軟問わず幅広い。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『神様は、いじわる』(文藝春秋)など
さかもと未明の和みカフェ?
http://blog.goo.ne.jp/sakamoto-mimei/