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コンプライアンスの重要性
さかもと未明の言わずにはいられない

更新日:2012年03月07日

※月刊WizBizバックナンバー(2012年2月号)よりお届けいたします。
 


 

さかもと未明氏 顔写真

 
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コンプライアンス(法令順守)が重要視されるようになってきた。

オリンパスが企業ぐるみで損失隠しをしたり、大王製紙の御曹司が会社の資金をギャンブルで使い果たしたりと、企業や経営者としての「良心」を問われる事件が相次ぎ、巷に「襟を正そう」という空気がみなぎったのは当然だと思う。

しかし、改めて「コンプライアンス」という言葉を調べてみて、その説明に私は少し違和感を覚えた。

この言葉は一般に「法令順守」と訳される。コンプライアンスについて解説するウェブサイトや本を見てみると、狭義の意味で単に「法を守ればいい」というわけではなく、企業が期待に応えるべき相手、すなわち「消費者・従業員・取引先・株主・社会」に対して責任を負うことだと説明されていた。「顧客よし、世間よし、社員よし」の「三方よし」が理想だと書いてあるものもあった。それはもちろん立派なことだ。しかし、企業として利益をあげることは本来とても難しく厳しいものだ。それをこうした「八方美人」な態度で成しうるのかと、疑問に思った。

私なりに20年以上働いてきて実感するのは、従業員に泣いてもらい、自分はそれ以上に働き、無理をして取引先の希望に応えなければ、なかなか利益は生まれないということだ。まして私は官能漫画家としてスタートした。読者という「顧客」に満足してもらうためには、「世間」や「親」に眉を顰(ひそ)められる表現でなければならなかった。私にとって「お金を稼ぐ」ことは、「世間に対する自分の値打ち」とひきかえだったのだ。「そんな仕事なら、しなくてもいいではないか」と言う人がいれば、その人は幸福な人だと思う。経営のため、生活のために、法を犯すことは論外だが、世間体をかなぐり捨てなくてはならない時はある。そして、「汚れ仕事」や「効率の悪い努力」を、私は恥とは思わない。それを必要としてくれる人のために働き、お金を稼ぐことには価値があると確信しているからだ。

そういう労働の影を踏まえていない「コンプライアンス」を、私は危険だと感じている。消費者も従業員も取引先も株主も世間もみんなハッピー。そういうサービスや商品があれば素晴らしいだろうが、味も素っ気もない「無難」なだけのものとなる場合があるのではないか。

「いいもの」は、従業員に少なからず負担を強いてつくられるものだと思う。そして、株主や消費者の期待をいい意味で裏切ってこそ、世間に一石を投じる新しい事業を起こすことができるのだ。

「コンプライアンス」という立派な言葉が独り歩きし、企業を「優等生化」することや、若者たちが「就職するなら社会貢献をしている企業がいい」と、働く厳しさを実感する前から過度な理想を語ることに、私は危惧を覚えている。

「社会貢献」は素晴らしいが、それは私財をなげうってすることだと思う。もちろん、消費者が喜ぶ「もの」や「サービス」を提供できるのが一番いい。だが、そのとき、より大きな満足度や欲望を刺激し、より沢山のお金を稼いでこそ企業として存続できるだろう。

企業の本質は「利潤の追求」だ。だからこそ、企業はより安い労働力を求め、コスト削減を図る。利益を生む時点で、それは多少なりとも「悪」を孕むはずだ。しかし、不正をして利益を得たり、利益とひきかえに従業員を酷使しすぎたりといった看過できない逸脱行為があっては会社は続かない。そうなることを防ぐために「コンプライアンス」という倫理が求められるのだ。

コンプライアンスとは、会社を桃源郷のように理想化し、それを追い求めることではないだろう。自衛のための、実に厳しい掟なのである。

著者プロフィール

さかもと未明
1965年神奈川県生まれ。玉川大学文学部卒。商社OLを経て89年に漫画家デビュー。レディースコミック誌を中心に活躍、2000年には作家としての活動も開始。作品は硬軟問わず幅広い。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『神様は、いじわる』(文藝春秋)など