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いざという時にどう備えるか
さかもと未明の言わずにはいられない

更新日:2012年01月11日

※月刊WizBizバックナンバー(2011年12月号)よりお届けいたします。
 


 

さかもと未明氏 顔写真

 
バックナンバー
 
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2011年11月2日
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2011年10月5日
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大震災に思う──“真っ当”な国になるために
2011年6月8日
好意を受ける難しさ
2011年5月18日
仕事を失って見えた「初志貫徹」の道
2011年4月6日
裸の心で得る縁
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私見、後継者問題
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われらが父祖に学ぶ
2010年11月16日
順境の時にできること
2010年11月16日
毀誉褒貶と苦難のとき
2010年10月19日
決断するために
2010年09月22日
師と出会う
2010年08月24日
相互の敬意が時代を支える
2010年08月03日
 
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いざという時にどう備えるか。3・11以降、あらゆる日本人と企業が考えたテーマだと思う。個人にせよ企業にせよ、防災用品を備蓄したり、万一の時の対応についてどうするか決めておき、訓練したりすることは大切だ。今回の震災においても、被災した際にどうするか、事前に有事の際の操業プログラムを組んでいた企業は、驚くべきことに、被災後数週間以内に、事業を再開したと聞く。

しかし、それ以上に大切なのは、“心の備え”ではないかと思う。被災後すぐに何らかの行動が起こせた人たちには、「万一に負けない精神」があった。そして、それは何かと言えば、常に万が一を考える精神、すなわち常に「死」についての覚悟をしているということではないだろうか。それを、私は大学の時の友人の言葉で気づかされた。

将来や、就職について話をしていた時のことである。本当は漫画家になりたい。でも、それで稼げるかどうかわからないし、親も反対している。「だから、まずどこかに就職しないと」。こう言う私に、友人は言った。「そんな気持ちで会社に就職して働いても、勤まらないと思うよ」と。だが、やはり生活していかなければならない。それには、どこでもいいから就職しないといけないと思う。私がそう告げると、「漫画が描きたいなら、それで食べることができるまで、頑張るしかないじゃん」と言われた。

稼げる保証もないのに、なぜそんな風に考えられるのか──。自分の夢に対して、「もしだめだったら」と夢破れた時のための予防線を張ることばかりを考えている私に、友人は自分の考えをこう語った。

「『もしだめだったら』と最初から考えているくらいなら、自分ならそもそも夢は持たないよ。なぜなら『志を持ったら、命がけでそれを叶えなさい』ってずっと教えられてきたから」と。そしてこう続けた。「たとえ志のために、砂漠の真ん中で朽ち果てたとしても、そんなお前を誇りに思うから、命がけでやれることを見つけろ」そう親から言われ、育ってきたのだと。

その言葉に、私は脳天を殴られたような衝撃を受けた。そんな考え方に、私は生まれてから一度も出会ったことがなかった。

それまで、親も学校の先生からも、「命が何よりも大切」「危険な目にあったり食うに困ったりしないように」と、安全に生きる道を勧められてきた。「夢は夢、現実を見なさい」「公務員や大企業。そういうところに入れるように、偏差値のいい学校に行かないとだめ」。そう言われて育った私は、「命をかける価値のある志を持つ」という発想自体を持っていなかったのだ。

だからこそ、この友人の言葉に、私は強く影響を受けた。「命は、ただ永らえればいいってものじゃない。それを使って何かをしなくてはいけないんだ」。そう思った私は、「もし明日死ぬとしたら何をしておきたいか」を考え抜いた。すると、自分が大切にしたいものの順番が見えて来た。同時に、命がけで守りたいものを持っていなかった自分を、恥じるしかなかった。死を見つめていなかったからこそ、真剣に生き、愛することもなかったのだと。

「万一に備える」とは、すなわち「死」を覚悟して生きることなのだと思う。さすれば何を優先すべきか、今日をどう行動すべきかが、見えてくるはずだ。

たとえば、もし身ぐるみを剥がれることがあったとしても、それは何とでも取り返せるものだと思う。しかし、人との関係や自分の人生に対して、「悔い」が残るようなことだけはしたくない。そのためにこそ、私たちは常に「死」を覚悟していなくてはならないのだ。それに勝る「備え」はない、そう思う。

著者プロフィール

さかもと未明
1965年神奈川県生まれ。玉川大学文学部卒。商社OLを経て89年に漫画家デビュー。レディースコミック誌を中心に活躍、2000年には作家としての活動も開始。作品は硬軟問わず幅広い。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『神様は、いじわる』(文藝春秋)など
さかもと未明の和みカフェ?
http://blog.goo.ne.jp/sakamoto-mimei/