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好意を受ける難しさ

更新日:2011年05月18日

※月刊WizBizバックナンバー(2011年4月号)よりお届けいたします。
 


 

さかもと未明氏 顔写真

 
バックナンバー
 
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私見、後継者問題
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決断するために
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相互の敬意が時代を支える
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「甘えすぎはいけないよ」
そう、久しぶりに叱られてしまった。もう十年以上お世話になっている方からだ。

その方には私の仕事で使う衣装のお手入れをお願いしてきた。ちょっとしたサイズ直しから、洗い物まで、いろいろと相談に乗ってくださり、無理も聞いてくださった。私のいる業界は派手に見えて実は収支が大変なところだ。そんな裏の事情をよくご存知で、料金などでもずいぶん融通を利かせてくださった。

「あなたは娘のようなものだから、何でも相談してごらんなさい」と言ってもらえることが本当に嬉しくて、洗い物の相談は、その方にほとんどお願いしてきた。

でも最近「テレビの仕事が一段落したから衣装をすべて手入れしておこう」と考えた時、私は図に乗ってしまった。一つのお店ではとても引き受けきれないような量を一度に出したのだ。

「これは、大変だなあ」
ちょっと困った顔をしたものの、なじみの店主は手入れ物を数回に分けて、車に積んで引き取ってくださった。

一週間ほどしてお支払いの相談をしにお店にいったら、ちょっと疲れた顔の店主にこう叱られた。

「今回は言わせてもらうよ。年寄りの苦言と思って聞いておきなさい。正直、今回の仕事は大変だった。あなたは仕事で衣装を着る人だし、都合もあると思って工場に頼んだけれど、向こうは『通常の仕事が滞る』と困惑気味だったし、私も伝票をつけたり、しみを確認してから発送したりで三日もかかってしまってね。ほかの仕事ができませんでしたよ」

はっとしてお詫びすると店主は笑って許してくださったが、さらにこう言われて恥じ入った。

「仕事は『お金を払えば何でも頼んでいい』というものじゃない。相手の都合も考えて、量や期限に無理のないよう頼む思いやりが必要ですよ」

私は何と配慮の足りない人間だったのだろう。だが実は、昔にも似たようなことを言われたことがあるのだ。その時は漫画の仕事があまりに忙しかった。そして「お金ならちゃんと払えますから」と、腕の立つアシスタントに休む暇もなく仕事を頼み続けた。そしてある時、「もう勘弁してください」と言われてしまったのだった。

「さかもとさんが気の毒なくらいに忙しいのは見ているからわかる。だからこちらも頑張ってきたけれど、ものには限度がありますよ。忙しい時に新しい人を探すのは大変でしょうが、人を使う立場である以上、過労にさせない配慮をする責任があるでしょう? あなたはおんぶしてやろうというと、抱っこもといってくる人ですよ。少しなら可愛いと思うけど、度が過ぎると本当に嫌になるんです」

まったくその通りだった。この時も言われて本当にへこんだのに、また私はやってしまった。

昔は忙しさゆえ、今は私の病気ゆえに、いろんな人がよくしてくれることに甘え、気が付けば矩(のり)を超えてしまう。私はこんな風に自分によくしてくれる大切な人を、何度失ったり傷つけたりしてきたのだろうか。

悪気など無論ない。しかし無自覚だということは、悪意よりもっと罪ではなかろうか。相手も「悪気がないから」と、何も言わぬまま、その人と距離を置いてしまうだろう。

件の店主は、私がずっと気付かなければどんどん孤独になっていくだろうと、まさに親心で苦言を呈してくださったのだと思う。

今後、何があっても、人の好意に甘えすぎるような、品のない振る舞いはするまいと肝に銘じた。

人間、悪意に出会った時は気をつけるものである。しかし、好意を受ける時こそ本当に難しい。

著者プロフィール

さかもと未明
1965年神奈川県生まれ。玉川大学文学部卒。商社OLを経て89年に漫画家デビュー。レディースコミック誌を中心に活躍、2000年には作家としての活動も開始。作品は硬軟問わず幅広い。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『神様は、いじわる』(文藝春秋)など。

「さかもと未明の和みカフェ?」
http://blog.goo.ne.jp/sakamoto-mimei/