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「キングメーカー」に真のキングはつくれない

更新日:2009年12月22日

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※月刊ベンチャー・リンクバックナンバー(2009年10月号)よりお届けいたします。
 


 

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「宰相の器」という言葉がある。最近の政局を見るにつけ、正直この器を備えた宰相にお目にかかっていない気がする。「外国の首脳からすれば、あまりに短期で交替する日本の首相と本気で付き合う気になれないだろう」という批判はもっともである。

しかし、実は日本の総理大臣というのは、もともと短期政権であるようだ。

戦後の歴代首相の在任期間を調べてみたが、吉田茂首相でさえ、7年(途中に片山・芦田政権を挟む)である。また佐藤栄作が7年と長かったほかは、1年か2年が通例で、近年の小泉首相の5年におよぶ長期政権は、偉業だったとすら言える。

最近の政争を見ていて思うのは、「日本人は『一丸となって』戦うのが苦手な国民性なのではないか」ということだ。

ことあるごとに自分たちの宰相の欠点をあげつらい、隙を見つけては叩き落そうとする。こういう世界では、なかなか個人の力ではのし上がっていけないのが現実なのかもしれない。郵政選挙を思い出せば、日本の政治家は集団的な『恐怖』や『利益誘導』『取引』に支配されて、なんとかまとまるのが現実だろう。

それにしても数カ月前、麻生首相が「本当は郵政民営化には反対だった」と発言し、すぐに撤回したのはあんまりではないか。自分の意見を貫かず、党則に屈する人物では、首相として国の舵取りなどできまい。「キングメーカー」という言葉がある。集団の力学に従順な人物を、誰かが引き立て、短期間トップに据えるような慣習が、「宰相たるにふさわしい男」を育て損ねてきたのだと私は思う。

組織力は無論侮れないだろう。だがそれにおもねる人間ばかりが集まっては、この国は腐敗していくばかりである。

最近、フランス・ニースにレストランを持つシェフの松嶋啓介氏と話をする機会があった。彼は日本人として最年少でミシュランガイドの一つ星を獲得している。そんな彼に「いい食材に出会い、いい料理を作るコツは?」と尋ねてみた。返ってきた答えは次のようなものだった。

「セオリーなんてないですよ。毎日の出会いの積み重ねです。いい料理を作りたいと思って野菜を探しに市場に足を運び続けるうちに、少しずついい野菜を分けてくれる農家の人が増えていく。料理を作ったら彼らを店に招き、『こいつにもっといい野菜を譲ってみるか』と思ってもらう。その積み重ねだけなんです。『ここに行けば、良いものが買える』なんてことはない。すべては時間がかかり、常に努力が必要なんです。積み重ねることでしかいい料理はできない。デジタルに『こうすればできる』なんてものではありません。人を作るのも国を作るのも同じだと僕は思います」

実に意義深い話ではなかろうか。権力から最も遠い仕事をする彼が、じつは権力の世界に通じる見識を持っていた。

「キングメーカー」を気取る老人たちは、自分たちがどれだけ日本を矮小にしたかに気付かないのだろうか。

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プロフィール

さかもと未明
1965年神奈川県生まれ。玉川大学文学部卒。商社OLを経て1989年に漫画家デビュー。レディースコミック誌を中心に活躍、2000年には作家としての活動も開始。作品は硬軟問わず幅広い。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『未明日記ハイパー』(芳文社)など