志を貫くためなら命がけの覚悟で
更新日:2009年02月10日


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※月刊ベンチャー・リンクバックナンバー(2008年11月号)よりお届けいたします。
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福田首相の辞任劇には、開いた口がふさがらなかった。確かに、今の『ねじれ国会』では物事を進めにくかろう。しかし、誰かが舵取りをしなくてはならないのである。それを総理総裁がやらなくてどうするのか。自分ではまとめきれないから辞めますとは、どういうことか。大仕事を目の前に石にかじりついてでも国を守る気持ちがないのなら、初めから総理になるな。国民と総理の職を裏切り、汚すようなことをしておきながら、議員を辞職するわけでもない。こんな行動を、自民党は、国民は許しておいていいのか。どうにもならない怒りと、それを通り越した侮蔑、落胆に私は襲われた。
1977年に日航機ハイジャック事件が起きた際、時の総理として「人命は地球より重い」との理由から犯人側の要求をのみ人質解放の苦渋の決断を下したのは、かの首相の父だが、そんな理念で育てられた子息は、ご自身の命も尊びすぎて、どうやら男の沽券や誇りといったものは、まったく身につけずに成長されたようだ。確かに命は大切だろう。どんな人も故なく命を落とすことがあってはならない。
しかしである。命というのは、何かの志を遂行したり、責務を成し遂げるために使うものではなかろうか。誤解を恐れずに言えば、命を失ってでも遂行すべき仕事が存在するのではあるまいか。国民を守り国の舵取りをする総理という職務は、首相にとっては命をかけ、男子一生の仕事とするに足るものではなかったのか。
アフガニスタン東部で非政府組織『ペシャワール会』の職員として農業支援活動にあたっていた伊藤和也さんが今年8月、何者かに拉致・殺害された。本当なら亡くならずにすんだのではと思う情報が多々あり、まことに遺憾なことだ。伊藤さんご自身の崇高な理念と行動に加え、ご両親の凛りんとした振る舞いに私は感銘を覚えずにはおれなかった。おそらく、ご両親は様々なことを覚悟されたうえで、和也さんを送り出されたのだろう。一連の報道を見るうちに、私は大学時代の友人から受けた、心に染みる意見を思い出した。
それは、私が漫画家として身を立てるかどうかをまだ迷っていた時である。
「漫画家になりたいんだけど。なれるか分からないから就職しようか悩んでる」と言う私にその友人は言った。
「漫画家になりたいなら就職なんかしないで漫画家になれよ。会社員は厳しいよ。会社員をやりながらほかでプロになれるほど甘くないと思うけどね」
「でも、なれるか分からないし」
「じゃあやめなよ」
「そんなのひどい。普通は、会社務めをしながら夢を追えばって言うんじゃない?」
甘えたことを言う私に、彼は言った。
「夢を追うのに、普通の生活してきれいな服を着て楽しもうなんていうのが甘いんだよ。やりたいことがあれば、そのことだけを考えて命がけで必ず成し遂げなよ。人生に保険をかけるなよ」
鋭い指摘に驚いた私は、「なぜ、そんな考えを身につけることができたの」
と聞くと彼は言った。
「俺は、親に志のために死ねっていわれて大きくなったから。犬死はしたらだめだけど、男子一生の仕事は命をかけないとできないことがある。そのために、お前が砂漠や大海原で死んだとしても、お父さんとお母さんは誇りに思うよってね」


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| プロフィール |
1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月〜金、午前8時〜)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。 |
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