『狭き門』が真の本物を生む
更新日:2008年12月09日


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※月刊ベンチャー・リンクバックナンバー(2008年9月号)よりお届けいたします。
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最近、公務員のレベルの低い汚職が多すぎる。『居酒屋タクシー』問題もひどいが、大分県教員採用試験の『点数上乗せ』事件には、開いた口がふさがらない。教員が『世襲』であることが常態化しているとは、何事か。しっかりした魂を育成すべき立場の人間が汚職をして、自分の子供や縁者に実力以上の評価をつけて仕事がまわるようにする。当人たちは「これも親心」と、自分に過ちを許してしまったのだろうか。それとも、「こんなのはよくあること。殺人や強盗よりは、罪が軽い」と思ったのだろうか。
殺人などの重大犯罪にはもちろん、行き場のない悲しみや怒りを覚える。しかし、こうした『ちんけな汚職』には、どうしようもない情けなさを感じる。華やかな業績を残さないまでも、こういう情けない事件だけは起こさずにすむようにと願わずにいられないほど、当事者への侮りと落胆はいかんともしがたい。恥や美学のない汚職は、人間の尊厳を根源から揺るがすのである。それが命にかかわらなくとも、人としての心と存在感を捨て去るに等しい行為なのである。
この事件を私が出演していたテレビ番組が取り上げた時、コメンテーターの皆さんはそろって「不正があることで、合格すべき人が落とされるなど許されない」とおっしゃっていた。無論、同感である。しかし同時に、「すべてが公正に行なわれることは今後もないのだろうな」と私は思ってしまった。番組ではうまく説明できなかったが、全員に平等に門戸が開放されるべき公務員の世界であっても、「どんな手を使ってでも採用されたい」とか「少しでも楽をしたい」などと願う人がいる限り、今後さらに巧妙な汚職は行なわれうる。
私が案じたのは、汚職がはびこるのが現実だからといって、「縁故がないからどうせ無理だろう」と、採用試験の受験をやめる若者が多発することだ。そして「どうせ今どきの教員なんて信用できない」と、子供たちが罪のない先生方の指導に逆らい始めることである。どちらとも現実に起こりうることだが、まず大人が襟を正し、汚職のないきれいな世界を作らなければ子供は育たない、というようなことを言う限り、逆説的だが子供に公正さを指導することはできない。そんな立派な世界を子供に提示することはまず不可能だからだ。
「世の中が汚いから自分もきれいに生きられない」。そんな考えもまた、汚職に手を染めるのと変らないほど卑しいことではなかろうか。人に品行方正を求めるのはたやすい。しかし他人や親や現代の教師がそれをなしえないなら、自分こそが公正に生きて、いつかそれを実現する大人になるべきなのである。


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| プロフィール |
1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月〜金、午前8時〜)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1〜3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。 |
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