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数字が語るこの市場の深層
不安定要素はあるものの東南アジアの発展に連動するネジ市場

更新日:2012年09月26日

ネジは私たちの身近にある機械から建物まで、さまざまなものに組み込まれている。普段はあまりじっくり見ることも少ないが、国内だけでなく世界経済にも影響している。そんなネジ市場の動向を探る。

国内市場は頭打ち状態

私たちの身の回りにある液晶テレビや携帯電話など、精密機器の内部には小型ネジが使われている。また、自動車や大型トラックのパーツとしても、ビルや橋など建設用の部品としても、ネジは欠かすことができない存在だ。

普段はあまりネジを直接意識する機会は少ないが、身近にあるさまざまなものに使用されているため、それらの製品の売れ行きにも左右されやすい。そのため、ネジ市場の動きをよく見れば、景気の動向を知ることができる。

日本ねじ工業協会の資料によると、国内のネジの生産量は、2005年には295万7351トン。生産金額は、7658億7300万円だった。その後、2007年には生産量が333万5488トン、金額は9005億4200万円へと共に増加。10%以上の伸び率を見せていた。(図表1)

リーマンショックからは若干の回復

ところが2008年に起こったリーマンショックの影響により、2009年のネジは生産量・金額共に急落。2009年の生産量は222万3483トンへ、金額は6273億8300万円へと減少。共に20%前後の大きな下げ幅となった。

その後は、2010年以降はやや回復しているものの、東日本大震災後の国内消費の低迷の影響は大きい。また、海外で起こった欧州通貨危機やタイの大洪水などの影響により、輸出用に国内で生産されていた自動車や家電の生産が減ったこともネジ市場に影響している。これらの要因から、ネジの生産量・金額は2005年とそれほど変わらない水準に戻ったままになっている。

メーカーが20年で半数に

こうした先行きの見えない状況の中で、ネジの製造を担う国内メーカーの事業所数は年々、減少の一途となっている。

経済産業省が発表した工業統計表によると、1991年に2882軒あった国内の4人以上の事業所数は、減少を続けている。2002年には2000軒の大台を割り込み、1892軒へと減少。その後も長引く不況が続く中、さらに減少を続け、2009年には1571軒まで減ってしまっている。この軒数は、1991年の軒数を100とした場合の54.5%に当たる。約20年の間に国内のメーカーがほぼ半数になったことになる。(図表2)

年々減り続ける事業所数

これは不況の影響でネジの需要そのものが減少した影響もあるが、ネジ生産の受注先からの値引き圧力が強まっていることがその背景にある。交渉が熾烈になるに伴い、価格競争に巻き込まれ、原価割れしても生産を請け負わざるを得なくなる事業者が少なくない。

そうした中で、ネジは構造がシンプルな製品だけに、メーカーは他社との差別化を図り難い。そのため指定された規格に沿った製品を、決められた本数だけ納品するという受身の姿勢に陥りやすくなる。価格交渉が行われると引き受けざるを得ず、影響をダイレクトに受けてしまうのだ。

タイとインドネシアに注目

国内での需要が減る一方で、海外へのネジの輸出は大きな伸びを示している。

財務省が発表した貿易統計によると、2006年にはネジの輸出量は26万6364トン、輸出金額は2227億6300万円だった。その後、数量・金額共に徐々に増加。2009年にはリーマンショックによる世界的な経済混乱の影響で若干減少したものの、翌年には急回復。2010年には輸出量は32万5649トンへ、金額は2573億3500万円へと急増。数量・金額共に20%前後の大きな伸び率となった。(図表3)

海外向けは数量・金額ともに好調

輸出先としては、中国が最も多く、2010年の輸出量は8万2408トン。輸出量全体のほぼ4分の1を占めている。次が米国の6万9822トンで輸出量全体の約20%。続いて欧州が3万6093トンで約10%を占めている。(図表4)

タイやインドネシアへ抽出が急増

中国・米国・欧州の3つは市場規模が大きいので、輸出先としてそれほど大きな揺るぎのないトップ3だ。だが、これらに続く勢いのある市場が、タイやインドネシアなどの東南アジア諸国だ。

タイへの輸出量は2009年には2万5796トンだったが、翌2010年には4万4483トンに増加。72.4%の急激な伸び率を示している。またインドネシアへの輸出量は2009年には1万3239トンだったが、2010年には1万2195トンに増加。67.6%の伸び率だ。

東南アジアの発展と共に


近年、急速な勢いで発展する東南アジア諸国では、都市部から郊外へと建設ラッシュが続いている。そこではネジの需要も多く、日本製の品質のよいネジを求める企業も数多くある。

また海外輸出では、常に気になるのが為替レートだ。円高が進んでいることは、せっかくの海外での売り上げも為替レートの交換の際に目減りしてしまうため、輸出産業には不利になりかねない。

だが一般に言われる“円高”とは、対米ドルや対ユーロでの話だ。隆盛の著しいタイやインドネシア相手の取り引きでは、タイの通貨バーツやインドネシアの通貨ルピアの価値も上昇している。そのため円対バーツや円対ルピアの交換レートではドルやユーロとの交換ほど大きな目減りにはならない。このことも東南アジア相手の輸出で有利に働いている。

ただ2011年7月に発生したタイの大洪水では、洪水被害を受けた自動車メーカーを始め、数多くの日系進出企業が生産停止の状態に追い込まれた。2010年には一時、欧州への輸出量を抜き、3位に上ったタイへのネジ輸出量だが、この大洪水の影響もあり、2011年は再び減少していることが予想される。

こうした不安定要因はあるものの、全体的に見ると今後も東南アジアの経済発展は続く。大局的に見れば、大きなチャンスと言えるだろう。