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数字が語るこの市場の深層
高価格帯の一部車種により、拡大する自転車市場

更新日:2011年10月26日

 通勤や買い物など、日常生活に欠かせない自転車。東日本大震災が発生するや、帰宅難民のにわか需要で脚光を浴びた。ロードバイクで通勤する「ツーキニスト」も増える昨今の市場の動向を探る。


景気に左右されない業界

   オフィスが密集する都市部では通勤ラッシュ時の混雑が付きもの。そんな中、渋滞で身動きが取れない車列を横目に、颯爽と駆け抜ける自転車通勤の人々を目にする機会が増えた。

   営業担当者に自転車を使わせる企業が現れるなど、その利便性は車社会において見直されつつある。自転車の存在感は高まっているが、その市場はどのように推移しているのだろうか。

   自転車産業振興協会で毎年発表している調査、「自転車生産・輸出入・出荷状況」によると、直近5年間で国内の自転車供給台数(1年間で市場に出回る数)は微減傾向にある(グラフ1)。2008年のリーマン・ショックの影響と推測したくなるが、同協会の統括事業部の君塚美雪氏は「昔から景気に左右されることの少ない業界のため、微減の理由は特定できない」と語る。

ここ数年の供給台数は微減

   戦後二度にわたるオイルショックやバブル崩壊、その後の景気低迷期など、ほかの業界が伸び悩む時期であっても自転車市場は順調に拡大してきた。それが04年に供給台数が1159万台を記録して以降、少しずつ減少している。

   その理由として、保有台数(国内にある台数)の増加により、飽和状態に達したとの見方がある。過去10年間の供給台数を合計するだけで1億722万台。これを国内総人口1億2750万人(10年)から計算すると、所有率は84%を超える──。

増え続けてきた中国製品

   00年以降、1000万台前後で推移してきた自転車供給台数だが、その内訳を見てみよう。

   供給台数を表す「国内生産台数」と「輸入台数」を見ると、10年前より輸入台数が大幅に伸びている。 一方で国内生産の減少は著しい(表2)。この数値について君塚氏は「ほかのものづくり産業と同じ変化が起こっている」と語る。

   1985年のプラザ合意以降の円高を背景に、日本企業が生産拠点を海外に移転する動きは長く続いている。自転車メーカーの間では、2000年前後に中国への工場移転を進めたという。

   中国からの自転車の輸入台数の推移を見ると、1999年に247万台だったのに対し、10年後の09年には823万台と3倍以上に膨らんでいる(表2)。

輸入品が大半を占める

   今では自転車の部品も含めて、生産拠点が中国に集中している。日本メーカーであっても、国内で部品の製造から完成状態まで行うことはない。

   00年代前半、1000万台を超える供給台数を維持した背景には、中国メーカーの安価な製品が流入し続けたこともある。

   低廉な人件費を武器に価格競争力を発揮する中国製が数多く出回り、「価格競争が激化、自転車の平均価格は下がった」(君塚氏)

   とはいえ低価格と引き替えに品質のよくない自転車が増えたのも事実。安全性が脅かされる中でこれを問題視した自転車協会(自転車メーカーを中心に構成された団体)では、04年に自転車安全基準を制定している。存在感を見せる高級車種 自転車の供給台数と同様に、「平均販売価格」の変化も興味深い。国内の供給台数がピークを迎えた04年の1台あたりの平均販売価格は3万8456円(グラフ3)である。次年度に一度は下がるものの、その後は年々上がり続け09年には、4万3275円まで上昇している(グラフ3)。

平均価格は上昇傾向に

   君塚氏は「平均販売価格は原材料の高騰や輸入価格の上昇などいくつかの要素が絡み合っている」と分析した上で、ここ数年の上昇は、「高価格帯の一部車種による押し上げと見られる」と指摘する。

   ここで言う一部の車種とは、スポーツ車(ロードバイクやマウンテンバイクなど)と電動アシスト車のことだ。

   この2車種だけに関していうと、国内の出荷台数は毎年伸びている(グラフ4)。

   特に電動アシスト車は00年度時点で国内出荷台数が14万6145台。これが、この10年でおよそ2倍まで増加、10年度の国内出荷台数は38万1721台(グラフ4)となっている。1993年の発売開始から18年目にして初めて国内バイク全体の出荷台数38万242台を上回った。

電動アシスト車などが好調

売れ筋のキーワードを兼備

   電動アシスト車の出荷台数が伸びる理由は、運転免許のいらない手軽さや車種の充実が考えられる。さらに09年の「3人乗り自転車」の解禁にともない、各自転車メーカーで前と後ろに幼児を乗せても安全な強度と運動性能を持つ電動アシスト車の開発が進んだ。

   実際に商品化され市場に送り出されると、子どもの送り迎えや買い物にニーズのある主婦層から支持を受けた。脚力が落ちた高齢者でも乗りやすいことから、電動アシスト車の伸び代はまだまだありそうだ。

  「電動アシスト車は、一度乗ると普通の自転車との違いが実感できる。値は張ってもそれだけの価値があることを、まだ試していない人が体感すれば今後も伸びるだろう」(君塚氏)。

   スポーツ車に関しては、初心者やライトユーザーでも手が届く価格の車種が増えたことが大きいようだ。

   通勤や休日のサイクリングなど、健康志向の消費者に「ママチャリ」とは異なる利用シーンをメーカーが演出、ユーザーが増えている格好だ。

   自転車は自動車と違って二酸化炭素を輩出しない移動手段。「環境にやさしい」「健康づくりに最適」は消費者の心の琴線に響くうたい文句だ。

  「エコ」「健康」と、昨今の売れ筋商品が持つキーワードを備えた自転車。この流れは今後も大きくは変化しないだろう。微減傾向とはいえ景気に左右されない、堅実な推移をこれからも見せそうだ。