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数字が語る この市場の深層
実店舗販売の不振の中、伸長を続ける通信販売市場

更新日:2011年01月05日

 百貨店を筆頭に従来型の小売業の売り上げ不振が指摘される中、着実な伸びを見せているのが通信販売だ。割安感や手軽さで消費者を引き付けるこの市場は、今後もさらなる伸長が予測される。
 


インターネットの普及で拡大に弾みがつく

一昔前までは通販といえばカタログが一般的で、注文する人は電話やファックスを使っていた。だが、今ではカタログだけではなく、インターネット、テレビなどそのチャネルはさまざまな分野に広がっている。

現状について、社団法人日本通信販売協会(東京都中央区)の柿尾正之理事は「インターネットや携帯電話などチャネルの多様化によって、消費者の選択肢は広がった」と語る。今まで以上に利便性が増し、通販を利用する消費者が増えた。

このような状況からインターネット通販の存在感が増している。その結果、通販利用者の属性にも変化が見られる。

カタログでの購入は中高年が中心だ。しかし、インターネット通販の利用者は比較的若い世代が多く、そうした世代による通販の利用件数の増加が市場の拡大を支えている。

数字を見てもインターネット通販市場の伸びは著しい。2005年は1兆2060億円だったインターネット通販市場は、09年(見込み)には2兆4802億円と約2倍となった(グラフ1)

富士経済(東京都中央区)・東京マーケティング本部の栗田洋一郎主任は、インターネット通販の長所として「短時間での価格比較が容易である点」を挙げる。

実店舗で購入する場合、見て回れる店舗数には限度がある。しかしインターネットであれば、短時間でさまざまなウェブサイトを見て価格を比較できる。さらに、「価格.com」を始めとした価格比較サイトでは複数のサイトをまとめて比較できる。そのため、より安い商品の購入が可能だ。

「インターネットは時間も場所も選ばない。忙しい消費者にとっては便利」(栗田氏)

通信販売市場推移

節約志向で外出を避け家の中で買い物をする

また、携帯電話を使った通販の伸びも顕著だ。05年は1404億円だった市場が、09年(見込み)には3661億円と拡大している。今後について栗田氏は「まだ携帯電話サイトでの通販は伸びる余地があるだろう」と話す。

携帯電話の機能が進歩し、買い物をする上での利便性が増したことが、市場の伸びの一因だ。

その結果、08年の通販業界全体の売上高は4兆1400億円(推計)だった(グラフ2)。前年比で2600億円も増加しており、調査開始以来、最高額となっている。

通信販売売上高の推移


市場全体を見た場合、市場の拡大には、不況の影響も大きいと柿尾氏は指摘する。「家に消費者がこもる傾向が強まる中、家で購入できる通販が注目されている」

だが、通販には現物を見ての購入ができないというデメリットがある。そのデメリットを補っているのが情報量の多さだ。買い物中に、商品の詳細を知りたいと思っても店員とのやりとりを煩わしく感じる。そんな消費者にとって、通販カタログやウェブサイトの情報量の多さは魅力的なのだ。

販売する側にとっても同じだ。とりわけインターネット通販の場合、商品とともに詳細な説明を載せられる。販売する側のコメントだけではなく、実際に購入した人の感想も紹介できる。商品のよさを伝えやすいのだ。

好調な健康食品は情報量の多さがポイント

では、どんな商品が売れているのだろうか。顕著な伸びを示しているのが健康食品だ(グラフ3)。09年4月と5月は、売上高が前年同期比を下回ったものの、ほかの月はすべて前年同期を上回った。

2009年度売上高月次調査集計

「健康食品は、情報量の多寡で売り上げが変動するため通販が向いている」(柿尾氏)のがその理由だ。店頭では一つひとつの商品について店員が詳細に説明するのは時間の面で難しい。通販であれば多くの情報を掲載でき、商品の特性を消費者に知ってもらいやすい。見た目だけでは商品の特性を伝えにくい健康食品は、通信販売に合った商品なのだ。

あわせて注目したいのが、サービス・デジタルコンテンツの伸びだ(グラフ4)。市場規模は、07年は6800億円、08年は7380億円、09年(見込み)は7640億円、10年(予測)は7900億円と着実な伸びを見せている。

この背景には、音楽・映像・ゲーム配信や電子書籍などを当たり前のように利用できる若い世代の存在がある。「デジタルコンテンツの市場は今後も伸びが予測される」と柿尾氏は指摘する。

通信販売市場推移

実店舗と通販が消費者を奪い合う

通販市場の拡大によって、ほかの市場はどのような影響を受けるのだろうか。

「インターネット通販の利便性を知る世代が増えていけば、その分小売業界はマイナスの影響を受けるだろう」と柿尾氏は話す。

ただでさえ不況の影響を受け、消費者はものを買わなくなった。そこに通販会社が参入することで実店舗を持つ小売にとっては苦しい状況となっている。

また、過疎化が進む中、採算が合わないスーパーなどは次々と閉店している。そのあおりを受けるのは、過疎地で暮らす高齢者だ。買い物はしたいが車の運転はできず、遠くまで買い物に行くことができない。そんな高齢者にとって通販は心強い味方だ。

「まだインターネットを使えない高齢者は多い。インターネットが使えるように行政が支援をすれば、利用率は高くなり、通販市場はさらに拡大するだろう」(柿尾氏)

外で買い物ができないという悩みを解決する手段として通販の必要性は増す。ただし、使いやすさを向上させることも求められる。

今後の伸びが予測される通販市場。通販ならではの特性を生かして消費者にアピールできるかどうかが、企業の分かれ道になると言えるだろう。