経営者の味方「社長・経営者のための経営課題解決メディア WizBiz」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  市場分析  >  航空業界  詳細

熱戦 高級化と低価格化がともに加速
航空業界
ベンチャー・リンク2008年4月号

更新日:2008年05月29日

  • 最初へ
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ
  • 最後へ

2010年の大競争時代を控えてサービス合戦に突入


より快適な空の旅の提供がゆとり世代の顧客に受ける

「日本の航空業界が、未曾有の大競争時代に突入する」
航空業界関係者は口をそろえてこう言う。熱戦の火ぶたが切られるのは2010年。羽田空港第4滑走路の完成と、成田空港暫定滑走路の延長による発着枠の拡大が発火点となる。発着枠の限界を迎えていた両空港に、新たな滑走路ができることでスペースにゆとりができ、新規発着枠をめぐって航空各社が争奪戦を繰り広げるというのだ。

あと2年に迫った今、国内の2大航空会社がプレミアム戦略を展開している。日本航空(東京都品川区)は07年12月、羽田−伊丹路線に国内線では初めてとなる「ファーストクラス」を投入した。今後も羽田−福岡、羽田−札幌など「ドル箱路線」と呼ばれる高収益路線に拡大していく。

国内線最上位席に位置づけられるファーストクラスには、上質な本革素材を使ったソファー感覚の大型シートを採用。広い座面と背もたれ、約130cmのゆとりある座席間隔、傾斜角度を大きく取ったリクライニングと足掛けで、高級ホテルのソファーにゆったり座っているかのような快適空間を提供している。どの時間帯でも機内食とアルコール類のサービスが無料で受けられる。このファーストクラスは、国内線運賃プラス8000円で利用可能だ。

日本航空は国内線運賃プラス1000円で、人間工学に基づくリクライニングシートでくつろぎ、月ごとにメニューが変わる茶菓子を楽しめる上位席「クラスJ」を04年6月からスタートした。現在、利用率が約85%を維持し好評を得ている。さらに、「もっと上質なサービスを」という要望に応え、ファーストクラスを用意した。

日本航空広報部は自信たっぷりの表情で話す。「日本航空では、いわゆる上位層のお客様に満足していただけるように定点観測・調査を行なっています。その結果を具現化したのが『ファーストクラス』です。おかげさまで導入以来、全便でほぼ満席状態が続いています」

対する全日本空輸(東京都港区)も、08年4月から国内線に「プレミアムクラス」を導入すると発表した。現在の上位席である「スーパーシートプレミアム」よりも座席間隔を3割ほど広げ、約127cmにする。食事の時間を自由に指定できるのに加え、新シートにはパソコン利用者を想定して各座席に電源を用意するなど細かな気配りも見せる。プレミアムクラスの運賃は普通よりも1000〜5000円高く設定。当日空席があれば、普通運賃プラス7000円で利用できる。

「これまで上位席を設けていなかった地方路線にも採用することで、09年度末には全国の約7割の路線でプレミアムクラスを提供する予定です」。全日空広報室の岩井善明氏は、数多くの路線で展開することで他社にない強みを出し、需要拡大を図ると説明する。

国内2大航空会社の1社が新たなプレミアムサービスを展開すれば、もう1社はさらに付加価値を高めたサービスで対抗するといった構図だ。両社とも「他社が仕掛けるなら当社も仕掛けるというわけではない」と言うが、互いにプレミアム戦略の手綱をゆるめる様子はない。

左/中期経営計画で経営合理化を発表した日本航空。他社に先駆けて国内線で上級席を導入し、顧客の囲い込みを狙う。右/日本航空は07月12月から国内線の一部に「ファーストクラス」を導入。「クラスJ」よりもさらにサービスを向上させた。
左/中期経営計画で経営合理化を発表した日本航空。他社に先駆けて国内線で上級席を導入し、顧客の囲い込みを狙う。右/日本航空は07月12月から国内線の一部に「ファーストクラス」を導入。「クラスJ」よりもさらにサービスを向上させた。


省燃費の新型機を導入多頻度運航体制を強化

では、両社ともに国内線のプレミアム戦略を展開するのはなぜか。航空業界専門誌『週刊ウイングトラベル』の石原義郎編集長は次のように指摘する。
「エコノミークラスと上位席では運賃にかなり開きがあります。航空会社にとっては、利益率の高い上位席に力を入れたいところでしょう」

上位席利用客は航空会社の収益性を高める貴重な存在だ。このため、機内に広々としたスペースを設けたり、空港内に豪華な待合室を提供したり、利用回数などによって特典がつくマイレージサービスで厚遇するなどして囲い込みに余念がない。

「上位席利用客に焦点を絞って経営戦略を練るのは、海外の航空会社も同じです。極端な例を挙げれば、国際線では利益率の低いエコノミー席に1人も乗っていなくても、ビジネスクラス以上が満席だったら採算が合うということも少なくありません」(石原編集長)

航空各社がプレミアム路線による収益増にこだわる背景には、燃料油の高騰という問題もある。昨年来、原油価格は1バレル90〜100ドルで高止まりしている。航空業界は装置産業であり、1機当たり100億円以上する航空機の迅速かつ高効率な減価償却を図っている。だが、燃料油の高騰はコスト対策の大きな障害となっているのだ。

例えばここ数年、経営が順調な全日空は、07年3月期決算で売上高が1兆4897億円に上るが、営業利益は922億円にとどまる。利益率低迷の主な要因は燃料油を中心とするコスト高だ。同社の場合、燃料油1バレルにつき10ドルの上昇で数百億円の利益が吹き飛ぶという。

燃料油の高騰を受け、日本航空、全日空ともに4月からの国内線運賃を2.6%値上げすることを決めた。だが、過度な値上げは客足を遠のかせることになり、結果として収入の減少を招きかねない。そのため、ボーイング787に代表される省燃費性に優れた新型機を積極的に導入し、燃費の悪い大型機と世代交代させることで、燃料油リスクの低減に努めていく方針だ。大競争時代に突入する10年には、小型機による多頻度運航体制を確立して顧客獲得を図る。

左/増収増益が続いて好調の全日空。08年1月の中期経営戦略では、羽田・成田空港拡張に向けて先行投資を進めると発表した。右/08年4月から導入される全日空の「プレミアムクラス」。これまでの「スーパーシートプレミアム」より座席スペースもサービスも向上。
左/増収増益が続いて好調の全日空。08年1月の中期経営戦略では、羽田・成田空港拡張に向けて先行投資を進めると発表した。右/08年4月から導入される全日空の「プレミアムクラス」。これまでの「スーパーシートプレミアム」より座席スペースもサービスも向上。

 

  • 最初へ
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ
  • 最後へ