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空きビルの有効活用と収納ニーズのマッチングで新規ビジネスが花開く
ベンチャー・リンク2008年10月号

更新日:2008年12月03日

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収納スペースを貸し出すトランクルーム業界がにわかに活況づいている。従来はトランクルームといえば法人向けが中心で、倉庫会社が自社の倉庫に置いたコンテナを貸し出す方式が一般的だったが、90年代末頃から不動産会社など異業種からの参入が目立ち始めた。


自宅の納戸の感覚で利用できる収納場所

大きめの家財道具も出し入れしやすくするため、トラストワンの「オレンジBOX」は廊下の幅1m20cmを確保。
大きめの家財道具も出し入れしやすくするため、トラストワンの「オレンジBOX」は廊下の幅1m20cmを確保。
《東京郊外在住のある会社員男性は、趣味で買いそろえている高級自転車の台数が増えて自宅に収納しきれなくなり、近所にある4畳半のトランクルームを借りた。ビルの各階に細かく区切られた個室タイプの収納スペースが並ぶ。建物の出入り口はオートロックで、エレベーターもあり、24時間いつでも出し入れできる。男性は、月額4万4000円と割安なうえに屋根付きの車庫よりも安全で満足している》

《東京都心のマンションに住む某家族は、子供が成長して手狭になり、神奈川県厚木市にある約2畳のトランクルームを借りた。月額1万4000円。暖房器具やスキー用品など季節が過ぎると使わないものを置いている。厚木市は東京・新宿から約40kmとやや離れているが、保管物の出し入れは1年に数度で、何より都心より賃料が安いのが魅力だ。やはりビルの一室という印象で、空調完備で衛生的だから、かさばる冬物衣類も置こうかと考えている》

加瀬倉庫の「東京トランクルーム」の標準的な室内。各部屋の天井近くと扉の下には空気穴があけられ、換気に配慮している。
加瀬倉庫の「東京トランクルーム」の標準的な室内。各部屋の天井近くと扉の下には空気穴があけられ、換気に配慮している。
収納スペースを貸し出すトランクルーム業界がにわかに活況づいている。従来はトランクルームといえば法人向けが中心で、倉庫会社が自社の倉庫に置いたコンテナを貸し出す方式が一般的だったが、90年代末頃から不動産会社など異業種からの参入が目立ち始めた。遊休地や空きビル、空き室の有効活用策として注目され、土地やビルを売れないまま放置するよりも収益が得られるからと転用を望む不動産オーナーも増えている。それにより、ビルやマンションの中を0.5畳〜8畳程度に仕切ったスペースを貸し出す形態が一般化し、自宅の延長のように気軽に利用できることから消費者の認知度も高まった。

また、近年は都心のマンション需要が急速に伸びているが、収納スペースが手狭な物件も多く、トランクルーム需要を喚起していると見られる。市場がにぎわいを見せるなか、各社は過当競争でいずれ淘汰の波がやってくることも視野に入れている。これまでは管理・警備体制、利用時間帯、温度・湿度の管理、取り扱い品目などが差別化の要件だったが、警備会社との提携や2重ロック、空調完備、365日24時間利用可能などが当たり前となり、さらなる付加価値が求められている。

左/濃紺とオレンジの鮮やかな2色が目をひくエリアリンクの「ハロートランク」。東京都北区にある中十条店は、駅から徒歩約3分の好立地。 右/トラストワンが経営する「オレンジBOX」。ブランドの名称通り、オレンジカラーでアクセントをつけた室内。<br />
左/濃紺とオレンジの鮮やかな2色が目をひくエリアリンクの「ハロートランク」。東京都北区にある中十条店は、駅から徒歩約3分の好立地。 右/トラストワンが経営する「オレンジBOX」。ブランドの名称通り、オレンジカラーでアクセントをつけた室内。

出店を増やし認知度を高め
利便性を訴求し顧客を獲得


トランクルームは、自宅に近いほど便利――。エリアリンク(東京都港区)と加瀬倉庫(神奈川県横浜市)は、“コンビニ感覚”で利用できるサービスを提供している。駐車場や宿泊施設、貸会議室の経営と幅広く不動産業を営んでいたエリアリンクは、時代の変化に対応し、2008年度からストレージ(レンタル収納スペース)業が中心である賃料収入を基盤とした体制に移行した。2万8000室を確保した首都圏を中心に、全国展開を図る。

同社の武器は、長年の不動産業で蓄積した土地の開発や活用のノウハウと業界での信頼の厚さだ。一層の売り上げ増とブランド強化を図るため、物件の借り上げに注力しているが、「他社と競合になった場合でも、経験と実績による信頼から、当社を選んでくださる不動産オーナーが多い」とエリアリンク広告・広報・マーケティング部の松本美奈部長は話す。

加瀬倉庫は出店エリアを関東に絞り、特定地域に集中することで経営効率化と認知度向上による相乗効果を狙う。これまでに2万室以上のトランクルームを提供しているが、そのほとんどが自社ビルで、競売にかけられた中古ビルを積極的に購入して室数を増やしている点も特徴だ。競売物件は市場流通価格よりもはるかに安く入手できる一方、構造や内装が時代遅れだったり、不当に権利を申し立てる人物が現われたりして、買い手がつきにくいものだ。

しかし、トランクルームはあまりリフォームせずに賃貸が可能であり、経験を積んだことで不法占拠者の対処法も心得ている。「仕入れコストが安く済む分、損益分岐点が低く、実際に保有物件のほとんどが利益を生み出しています」と加瀬倉庫の瓜生佳久(うりゅうよしひさ)社長は言う。

両社ともに今後もサービス拠点を増やし、売り上げ増とともに市場シェアの拡大を目指しつつ、運営の効率化やコスト削減を図る意向だ。エリアリンクは室数と比例して増える管理業務や決済業務をIT(情報技術)システムの積極的導入で効率化し、運用コストの削減を図る。加瀬倉庫は中国企業と提携し、ビルをトランクルーム化する際に必要な間仕切りなどの設備やコンテナなどの製造・販売も行なっている。

「企業として成長するには、売り上げの元となるトランクルーム数を増やさなくてはなりませんが、出店数とともに様々なコストや労力も増えます。今後、業界ではM&A(合併・買収)なども加速するでしょう。市場で勝ち抜くには企業規模と体力が必要になると思います」(エリアリンクの松本部長)

左/押入れ産業は倉庫業に沿ったトランクルーム業を主に展開。コンテナを利用した場合、年4回までなら無料で出し入れが可能。 右/押入れ産業が法人向けに展開する文書保管サービス「サイファス」。過去の帳簿や契約書などを保管し、必要に応じて検索・閲覧などが可能。 <br />
左/押入れ産業は倉庫業に沿ったトランクルーム業を主に展開。コンテナを利用した場合、年4回までなら無料で出し入れが可能。 右/押入れ産業が法人向けに展開する文書保管サービス「サイファス」。過去の帳簿や契約書などを保管し、必要に応じて検索・閲覧などが可能。

 

 

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