シンプルでパワフルなデザインでスニーカーをブランディング
THEY New York
更新日:2017年09月22日
白地にサークルやトライアングルの黒がデザインされたスニーカーが、インスタグラムで一定のファンの獲得に成功。この夏からは、おしゃれなブティックが立ち並ぶニューヨークのソーホーで、積極的にポップアップショップでの販売を展開している。
ジャック・リン氏は23歳でTHEY New Yorkを設立
靴は自分のデザインを表現するメディア
──いつ頃から起業を考えるようになりましたか。
大学ではブランディングやデザインを勉強しました。1年前に大学を卒業し、広告会社でジュニアデザイナーとして働き始めたのですが、半年くらいすると、大学でやっていたように自分のデザインを追求したいという気持ちがとても強くなりました。大学の先輩が卒業後に服のブランドを立ち上げたのを見て、自分にもやれるかもしれないと。本当はこんなに早くビジネスを立ち上げるとは思っていなかったんですが。
──靴のデザインを始めた理由は?
私にとって、靴は自分のデザインを表現するメディアなんです。靴の製造は祖父の代から続くビジネスで、私にとって靴は身近なものだったので、靴のデザインを始めましたが、家業が家具メーカーだったらカウチなどのデザインをしていたかもしれません。将来的には商品は多岐にわたっていくかもしれませんが、それでも靴はブランドの核として大事にしたいと思っています。
──どのようなデザインに影響を受けましたか。
例えば、ドイツのバウハウス・ムーブメント。バウハウスのデザインはシンプルで幾何学的なデザインが特徴なのですが、日本のモダンデザインにも影響を与えています。
日本のモダンデザインも好きです。ロゴデザインを始め、エッセンスだけを残して必要のないものを省いている無印良品の商品が好きです。しかも、使いやすくて、消費者に好まれていますね。
色では黒と白のコントラストに惹かれます。私のデザインは黒と白が基本で、そこから他の色に展開していく感じです。
私は年に2、3回、家族と日本に旅行していましたが、刺激を受けたのは街中に見られる看板などのデザインや、レストランのメニューなどの漢字のデザインの美しさ。漢字とひらがな、カタカナがあるのは日本だけです。それをさらに英語と美しく組み合わせてデザインすることができる。アメリカには基本的にアルファベットしかありませんから、いくつもの文字を組み合わせるデザインは日本だけのものです。
──THEYのデザインはニューヨークで受けると思っていましたか。
THEYのシンプルでパワフルなデザインは、これまで誰も見たことがなかったようなものなので、一定の人たちの支持は得られると思っていました。靴というより、履いて楽しむアートという感覚で楽しんでほしいです。
当面はオンラインでの販売に注力していこうと思っていたので、ニューヨークの百貨店から引き合いがあったのは嬉しい驚きでした。小売店での販売ももちろん視野に入れていますが、まず、オンラインで世界中のどこからでも購入できるようにするのが課題で、急がずに確実にブランディングを進めて行きたいと思います。
──日本での展開の予定は?
まず、アメリカでブランドを確立して、次にヨーロッパ、そしてアジアへ。アジアでは日本をメインに考えています。日本の消費者はこうしたデザインを好んでくれると思います。現在、6カ国でTHEY New Yorkを購入していただけるようになりました。
サークルやトライアングルをモチーフとしたシンプルで印象的なデザインと、従来の靴にはなかった、靴の上部と底の部分がシームレスな構造が特徴のスニーカー
インスタグラムでマーケティング
──社員は何名ですか。
私と妹の二人です。私はブランディングを、ビジネスパートナーである妹は大学でマーケティングを専攻しており、彼女がマーケティングを担当しています。あと友人のフォトグラファーが撮影を担送しています。
──メディアの反響はどうですか。また、何がメディアにアピールしたと思いますか。
世界中の200以上のメディアで紹介されましたが、短期間でこれほどの反響があるとは予想していませんでした。サークルのデザインが受けたようです。黒と白のサークルのデザインは、これがすでにTHEYのロゴとしてアピールしているんです。多くのメディアに取り上げられたのは、このデザインが力強い印象を与えたからだと思います。
──人気があるのはどのデザインですか。
やはり、黒と白のサークルとトライアングルのデザインですね。ユニークで強く印象に残りますから。
──購買層について教えてください。
スニーカーはユニセックスなんですが、予想していたより若い女性が多いですね。年齢的には24、25歳から35歳が中心です。
──マーケティングはどのように行いましたか。
インスタグラムです。最初の1カ月はフォロワーは数百人程度でしたが、雑誌やウェブサイトで紹介されて大きく増え、今では約1万人です。
──ポップアップショップの反響はいかがでしかか?
ニューヨークのソーホーというブティック街でポップアップショップを展開したところ、予想以上の反響がありました。ウインドーを見て入ってくる観光客や、インスタグラムで知って、実際に手に取ってみたいという人たちが来てくれました。
9月と10月、またホリデーシーズンにもポップアップショップを予定しています。素材がスエードの新しい商品もご紹介する予定です。
──お父さんからアドバイスはありましたか。
実家は靴の製造業なので、父は靴業界の知識や工業生産に際してのアドバイスを与えてくれました。
──ビジネスがここまで順調に展開した理由は何だと思いますか。
私が美しいと思うデザインを求めている人たちが必ずいるという確信を持っていたことと、そうした人たちに満足してもらえるものを提供することができたからだと思います。アディダスやナイキのようなブランドになるつもりはなく、私たちが提供するデザインを求める人だけに伝わればいいと思っています。ブランドネームをTHEYとしたのも、全ての人がターゲットでなはなく、こうしたデザインを好む彼ら(THEY)をターゲットとしたいというコンセプトからです。
──今後はどのように展開していく計画ですか。
オンライン販売を確立して世界中どこでもTHEYの靴を購入してもらえるようにすること。私たちの商品を扱ってくれる小売店を増やすこと 、新しい商品の開発、違う素材や色、新しいシルエットへの展開などで新しいエクスペリエンスを提供することです。
今年8月のニューヨーク、ソーホーでのポップアップショップでは、予想を上回る反響があった
プロフィール&会社概要 |
THEY New York クリエイティブ・ディレクター |
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