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中華料理の新しい情報発信元を見る
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2014年09月10日

意外なことに、横浜中華街が、中華料理の情報発信源になっていないという……。


 
莫邦富氏
 
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横浜中華街は情報発信に遅れた

7年前のことだと思う。当時、全国紙のコラムのなかで横浜中華街に対する不満を述べた。

ランチタイムをのぞくと、1980円、2980円、3980円と値段はいろいろあるが、基本的なメニューはどれも似たり寄ったりだ。麻婆豆腐にチンジャオロースー、エビチリにふかひれ、さらにチャーハン、小籠包、ギョーザ、杏仁豆腐。夏になっても冬が来てもメニューはあまり変わらない。そしてどこの店頭でも巨大な肉まんを売る。

広東料理がメインの横浜中華街だが、香港や広東に行くとよく見かける、焼きたてのアンパンに似ているが、中身が熱々の肉汁がおいしいチャーシューである「餐包(can1bao1)」はない。江南あたりでよく目にする「春餅」もない。ちなみに、春餅とは小麦粉を薄く焼いた生地で緑豆もやし、豆腐乾、肉などを包んで食べる人気スナックである。中国の各地でよく見かける「豆腐脳」(豆腐花)も、横浜中華街で出合ったことがない。豆腐脳はしょうゆ味の温かい豆乳プリンといった食べ物だ。おいしくてヘルシーで、女性に人気が高い。ネギと油を麺にかけた上海の「葱油拌面」もない。

いっぽう、小籠包、刀削麺、火鍋……、近年、日本で認知されつつある新中華料理のいずれも、横浜を発信地にしていない。横浜中華街が、中華料理の情報発信源になってほしい、というのは私の論調だ。

上海のお肉の月餅の日本上陸

今年の中秋の節句が早い。例年だと、9月の後半のほうが多いのに、今年は、9月8日だ。日本では、西洋暦で伝統的な祭日を祝うが、中国では、歴史と伝統を重んじる旧暦で祭日を迎える。こうした暦上の違いも、日本に生活の基盤を移した私たちから端午、中秋、重陽などの節句を祝う習慣を奪っていってしまった。

しかし、近年、風向きがまた少し変わってきた。中秋の節句を改めて意識しはじめた在日中国人の家庭も大幅に増えているようだ。

今年はそのさらに進んだ一歩を踏み出した印象を受けた。東京の新橋駅の近くに「味上海」という小さな上海料理のレストランがある。レストランという言葉のイメージに合わず、ギュウギュウ詰めになっても最大20名しか入れない小さな店だが、伝統的な上海料理の味が評価され、高い人気を集めている。

その味上海からは、中秋の節句の祝いとして常連客に「お肉の月餅」が配られた。日本では馴染みは薄いが、お肉の月餅は上海の名物菓子だ。日本でそれを手にできた意外性とその味の美味しさに、常連客たちが一様に歓声を上げた。

意外なことに、同様な光景が遠い北海道札幌市でも見られた。中国版SNSである微信(WeChat)に、同市にある中華料理の店「運城飯店」も来店の中国人客に広東スタイルの月餅をふるまうことになっている。

そのどちらも自分の店を宣伝する意向もあるだろう。しかし、こうした動きは実は、新しい中華料理の情報発信に繋がっていく。私は評価すべきだと思う。ひょっとしたら、数年後あるいは十数年後、お肉の月餅が日本で人気土産品になるかもしれない。そうすると、今回の味上海のふるまいもそのスタートラインになる。来年はきっともっと多くの中華料理店が月餅のふるまいを行なうだろうと思う。新しい味の月餅は果たして日本に根を下ろして行けるのか、楽しみがまたひとつ増えた。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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