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「外国人可」という表示から見る日本の不動産賃貸事情の変化
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2013年03月19日

莫邦富氏が来日した頃、赤羽の不動産屋で、「外国人、水商売の女、シングルマザー、ペット不可」という貼り紙を見て、大いに怒った記憶があるという……。
 


 
莫邦富氏
 
 
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かつては日本でアパートを借りるのに苦労した

天安門事件が発生した1989年前後から始まった私の日本での言論活動と著述活動は大きく見れば、ひとつの境目がある。1997年の香港返還までは、私の関心は主に日本をはじめとする海外に暮らす中国人に注がれていた。『新華僑』『蛇頭』をはじめその頃まで出版された著書のほとんどは海外に移住した中国人をテーマにしている。1997年以降は、目線を中国本土に移し、経済関連の著述が急速に増えてくる。

私の前期の作品には、外国人が海外に生活基盤を作るのがいかに大変だったのかを取り上げたものが多い。そのひとつは、排他的傾向が強い日本でアパートを借りることの大変さだ。礼金、敷金など理不尽な請求にはここでは敢えて触れない。マンションややや上質なアパートとなると、外人不可といった人種差別的な但し書きが不動産屋の店頭に堂々と飾られている。憧れの気持ちを抱いて日本にやってきた外国人留学生の多くは、いろいろ苦労してようやくアパートを借りることに成功したときは、相当、反日感情を持つようになってしまった。

こうした社会問題にメスを入れようとして、私は日本のメディアにこれまでこの問題を取り上げた原稿を何度も書いた。講演会などの舞台を借りて、この問題に容赦なく批判の砲火を浴びせたことも何度もあった。

しかし、いつの間にか、こうした問題は次第に私の関心の域から消えてしまった。日本滞在年数が増えるに従って、多くの外国人の居住事情も改善した。今流行りのタワーマンションには、在日中国人が住んでいないものはもうないと言われるほどだ。

大きく変わった賃貸事情

マンションなどの賃貸事情も大きく変わった。「礼金、敷金0月」でアピールする賃貸住宅もあれば、「更新料も要らない」と強調する大家もいる。さらに「フリーレント」と大々的に宣伝するマンションやオフィスもよく見かけるようになった。

この間、仕事のため市ヶ谷駅の近くを通ったら、「外国人可」と大書した不動産屋の看板を目にした。以前、赤羽の不動産屋の入り口のところで、「外国人、水商売の女、シングルマザー、ペット不可」と大きく書かれたのを見て、大いに怒った記憶が蘇り、時代と空気の変化を痛感した。

ところで不動産斡旋業をやっている中国人の知り合いにこのような感想を述べたら、その中国人は淡々と答えた。「外国人が家賃を滞納しないのを日本人の大家たちがようやく認識したからです」。

言われてみると、はっと気付いた。異国の地に暮らす外国人にとっては、その住む家は、これが借りたものなのか、購入したものかに関係なく寄って立つ巣なのだ。その「巣」の安定がなければ、その生活も安定するはずはない。だから、家賃を滞納してまで自分の生活を不安定にわざわざ落とす人間はほとんどいない。

その意味では、「外国人可」という看板が現われたことは、日本社会の進歩のひとつと捉えてもいいだろうと思った。ただその進歩は低レベルの進歩に過ぎないこともここに強調しておきたい。腰の重い日本もゆっくりゆっくりと変化している。長い目でこの日本の明日を見よう、と私はそう思った。そして多くの外国人に、私のこの考えを伝えたい。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
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