経営者の味方「0円ビジネスマッチング WizBiz(ウィズビズ)」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  莫邦富的視点・21世紀の大国中国を見つめる  >  大言壮語を言わない精衛鳥になろう  詳細


大言壮語を言わない精衛鳥になろう
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2013年01月16日

最近、日本の会社に中国人留学生が提出する応募書類に、みな「日中の懸け橋になりたい」とあるという。しかし、筆者のように日本での生活が長い中国人の考え方や価値観は異なる。しかし、みなどうも似てくるのだという。
 


 
莫邦富氏
 
 
著者新刊
莫邦富が案内する中国最新市場 22の地方都市
莫邦富が案内する
中国最新市場
22の地方都市

莫邦富著(海竜社刊)
価格¥1500
見た!聞いた!歩いた!徹底的な現地取材で得た「明日の星」22都市の市場魅力
 
日中「アジア・トップ」への条件
日中「アジア・トップ」
への条件

謙虚になれ中国、
寛容になれ日本

 
莫邦富著(朝日新書
)
価格777円(税込)

朝日新聞土曜「be」の好評連載「mo@china」の内容を凝縮
 
バックナンバー一覧
 

私は懸け橋になりたいとはめったに言わない

ネットで知り合ったある日本人から次のような質問が送られてきた。

「会社の求人に応募した中国人留学生が提出した応募書類に、入社動機については、みんな、日中の懸け橋になりたい、と書いているのです。なぜでしょうか」

企業の人事を担当する幹部として、彼は求職応募者である留学生の本当の気持ちや考えをどう読みとればいいのか、苦悩しているようだ。

日本語の学習歴や日本との付き合いも長かったし、普段、いろいろな場で発言しているから、私に関するメディアや講演先の紹介の中には、時々、「日中の懸け橋」といった表現が入っている。実は、私自身は、日中の懸け橋になりたいといった言葉をめったに口にしない。

むしろ、知日派として、板挟みにされてしまうことを体験してしまった場合が多く、それに耐えていく精神力がより求められているのだ。10数年前に、一度、日中の懸け橋になるといったことを議論したことがあった。そのとき、私は「みんながその橋になりたいなら、私がその橋を支える礎に使われる砂利になればいい」と発言した。

日中関係を支えていくには、おそらく華やかな懸け橋よりも、より多くのレンガ、礎用の石、セメントなどが必要だろう、と思う。浅学かつ微力な私はこうしたレンガや石のような役割を果たすことに向いている。その意味では、これから就職を考える留学生に提案したい。大言壮語を言うよりも、むしろ具体的な目標を語ったほうが説得力がある。

面白い現象がある。日本での生活が長くなると、かつての留学生、今の新華僑たちの考え方や価値観はどうも私のそれと似てくるようだ。

小枝と小石の軍団になろう

1月4日、時事通信社が発行する時事速報に掲載されたコラム記事は私の2013年の初仕事となった。そのテーマは「精衛填海」だ。

精衛とはある鳥の名前だ。この鳥はせっせと小枝を口に銜えて海に飛んでいき、そこでこの小枝を落とす。こうした作業で人々の交流を隔絶させる海を埋めようとしているのだ。無駄だと世間の人々に思われるその作業を絶望せずに続けるこの鳥に、私は強い仲間意識を覚えている。精神的に隔絶する海を絶対、日中間に作らないためにも、今年も引き続きその無駄としか見えないような小枝落としの作業を多くの日中の仲間たちと一緒に続けていきたい。

といったような内容だった。大勢の読者から感想を述べるメールが送られてきた。しかし、こうしたメールを読んでいるうちに、ある現象に気付いた。日中の懸け橋になりたい、といった大言壮語を書いた人は皆無に近いほど少なかった。その一部をここに公開しよう。

「昨年の釣魚島事件以来、確かに我々中日活動に携わる人に対し、すごく影響をうけました。記事のおかげで、満ち溢れた精衛精神には感心し、自らの決意を揺るがさずにこれからさらなる努力でやっていこうと決意しました。精衛填海の精神と方式で、それぞれの持ち場で中日関係の改善に微力を尽くしたいです」(上海のコンサルタント会社社長)

「精衛填海の物語が面白いです。在日の中国人が皆21世の帝女雀に変身して、一衣帯水の友邦に微力を捧げ、新たな時代を切り拓きましょう」(経済研究所 幹部)

「私も先生の『精衛填海』の行動に賛成です。なにか役に立つことがあると幸いです」(婦人団体の幹部)

「確かに私も『精衛銜微木、将以填滄海』のような仕事をしています」(四川省にあるコンサルト会社の経営者)

「『精衛填海』の話、まったく同感です。日本語を学び、日中関係に携わる我々はある種の宿命だと夙に諦めています。「精衛」は小枝ではなく、小石を銜えて海に落として填海したと、私は理解しているので、日中国交30周年を記念して書いたエッセーには、自分が精衛になるのではなく、その小石になろうと譬えて意思表明をしたことがあります。これからの時代に必要なのはそのような石ではないかと思います。そして、地震が来ても津波に襲われても、びくともしない石になろう。そうすれば、日中両国が国富民泰になりますね」(大学教授)

「日中友好を取り戻す今日の精衛鳥になって、細かいところから一つ一つやっていきたい」(翻訳者)

会社の経営者、大学教授と言えば、すでにある程度の社会地位をもつ成功者と見てもいいだろう人たちだ。しかし、見事なほどに「懸け橋になりたい」といった表現を使っていない。自らの役割やできることを「微力」「微木(小枝)」「小石」「細かいところ」といった謙虚な言葉をもって表現している。

昨年一年かけて小枝を落とし続けてきた埋め立て工事がどうやら無駄に終わったようだ。しかし、今年も引き続きその無駄としか見えないような小枝落としの作業を一緒に続ける仲間がまわりに大勢いることを確認できた私は、大きな自信を得た。私たちは日中交流の橋を作るため絶対必要な小石、小枝を自らの力を最大限に絞り出して、これから辛抱強く引き続き運んでいく!

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/
http://www.facebook.com/people/%E8%8E%AB%E9%82%A6%E5%AF%8C/1581482570