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年間1億人の中国人が海外旅行をする時代が来る
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2012年07月25日

博報堂のデーターベース「Global HABIT」の統計資料を使い、莫氏が分析したところ、日本に対する中国人観光客の関心の変化が見られるという・・・。
 


 
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 予測より早く来る中国人大航海時代の訪れ

2003年、スペインのマドリードに本部を置く世界観光機関(World Tourism Organization、略称:UNWTO)の幹部が、北京で開かれた第15回総会の席上、110数カ国から来る会議参加者を前に、ある大胆な予測を公表した。

「2020年になったら、年間1億人の中国人が海外旅行を楽しむだろう。中国も世界最大の観光目的国と第四の観光輸出国となるだろう。これはすごい数字である」

しかし、その後の中国の海外旅行ブームの勢いは、世界観光機関の予測を大きく上回った。年間1億人の中国人が海外旅行をするという予測は前倒しで実現できるのでは、と数年前から囁かれている。

中国旅遊研究院によれば、海外旅行をした中国人の数は2010年には前年比20%増の5739万人、11年には前年比22.42%増の7025万人と増加を続けているという。同院は、その人数が2012年には約7800万人に上る、と予測している。実現すれば、中国は最大の海外旅行者数を産出する国となるそうだ。年間1億人の中国人が海外旅行をする、というすごい時代はすでにすぐ近くまで来ているのだ。

しかし、中国人に人気のある観光先を見ると、観光資源が多いはずの日本は決して、上位には食い込んでいない。たとえば、中国人に人気の旅行先トップ10を見ると、

1位:香港(渡航人数は2832万人。以下同)、2位:マカオ(1977万人)、3位:韓国(237万人)、4位:台湾(185万人)、5位:マレーシア(174万人)、6位:日本(163万人)、7位: タイ(152万人)、8位:米国(136万人)、9位:ベトナム(114万人)、10位:シンガポール(100万人)、となる。

日本に対する関心の多様化

まもなく発売される雑誌「中国ビジネスクラブ」の今年9月号に掲載される私のコラムでこの問題に触れたとき、博報堂のデーターベース「Global HABIT」の統計を使い、その分析を試みた。

「新馬泰」(シンガポール=新加坡、マレーシア=馬来西亜、タイ=泰国)と「港澳」つまり香港およびマカオ(澳門)は、海外旅行を楽しもうとする中国人にとっては、格別的な存在だ。中国人観光客がすでに訪問したことのある国・地域に関する統計を見ると、11年、調査を受けた人の中で、40%が香港を訪問したことがある、とわかった。マカオ(32%)、タイ(10%)、シンガポールとマレーシアはそれぞれ5%だ。日本は韓国、台湾と同じく3%となる。

こうした局面を打開するために、各地方自治体もそれぞれ自分なりに方策を考え、日本旅行の魅力のアピールに力を入れていると思う。しかし、どうしても地元の温泉資源や和食の紹介に偏っている。個性に欠けている傾向がある。

「Global HABIT」の2011年調査データから、日本に対する中国人観光客の関心の変化が見られる。確かに温泉に対する関心はまだ高いレベルにある。しかし、最近、52%から48%へと下がってくる傾向も次第に現われてきた。

ショッピング指向が非常に強いことが中国人観光客に見られる特徴だが、このショッピング指向を細かく見ると、ニーズの選択的変化が顕著になってきた。たとえば、「時計やアクセサリー」「家電製品」に対する興味が下がっている。前者は26%から19%へ、後者は22%から19%へ下がった。一方、「洋服やファッション小物など」「化粧品やスキンケア商品、サプリメントなど」に対しては、逆に関心が高まった。前者が19%から24%、後者が15%から21%上がっている。

もうひとつ変化もあった。「テーマパークで遊ぶ」(25%から31%)、「日本のアニメ、コミック、ゲームのイベントやショップに行く」(19%から24%)、「人気歌手のコンサートやミュージカルを見る」(4%から12%)、「マリンスポーツを楽しむ」(5%から10%)、「エステ・ネイルなどを体験する」(6%から9%)、「マリンスポーツを楽しむ」(5%から12%)などの調査項目に見られるように、日本に対する関心の多様化が見られる。

これまでになかった傾向だが、インバウンドに取り組む日本の地方自治体や旅行業界はこうした動きから市場のトレンドの変化をきちんと読み取ってほしい。新しい観光商品や観光コンテンツの開発と売り込みが急務となってきている。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/