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日本食の市場が広がる中国ビジネスの落とし穴に気を付けろ
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2012年06月20日

中国へ進出し、店名、商品名などを考える際、同じ漢字文化圏であることが、思わぬ落とし穴になることがあるという・・・。


 
莫邦富氏
 
 
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 ラ1メンは何の麺だろうか

5月、上海市政府の招きで上海郊外を訪問した。しかし、夜は、安徽省黄山市から駆け付けてくれた地方自治体の役人たちとの打ち合わせに時間を取られてしまった。日本の外食企業に対する誘致も打ち合わせのテーマの一つだった。日本料理に対する関心の高さがそこにも表われていると思う。

しかし、日本の外食企業の多くは上海など一部の超大型都市しか知らない。上海に近い地方都市でもほとんど認知していない。上海在住の日本人を対象に講演したこともある。講演前、海外に渡ったこれらの日本人は、日本人のなかでもっともハングリー精神が旺盛な人種で、きっと上海周辺の都市をそれなりに回っているだろうと想定していた。

だが、意外なことに、一番行動的な彼らも実は中国の地方都市の情報をそんなに把握していないのだ。そのことが判明したとき、心の中でかすかな動揺を覚えた。日本人はもっと行動的にならないといけない、ということを改めて認識した。

こうした現状にしびれを切らしたのか、それともますます拡大する日本料理の市場がもつ魅力に魅せられたのか、一部の中国人投資家が、自ら日本レストランを開くという傾向を強めた。

彼らの開いた日本レストランには、きちんと日本料理を専門とするコックさんを雇用している店もあるが、日本料理屋で働いたことがあり、見よう見まねで日本料理の作り方をある程度覚えた人が厨房を司るケースも少なくない。後者の場合は、「日本料理もどき」のレストランだと言えよう。

だから、後者のような店だと、いろいろな問題も出てきている。たとえば、上海の十六浦にある「老碼頭」(オールド・ポートという意)に店舗を構える、鳥肉料理専門の日本料理屋の看板には、「ラ1メン」というのが書かれている。音引きの符号を全く理解していないこの日本料理屋で、まっとうな日本料理が食べられるとは思わない。

地下鉄の嵐皋路駅の近くにあるショッピング・モールには、店名の読みを「心のたお」と書いてある寿司屋がある。最初、その店名の意味は理解できなかった。しばらく見つめると、「心の道」という意味だと悟った。ここの「道」という字をなぜ中国語読みで読むことにしたのか、さっぱりわからない。

そのいずれも日本語の意味を理解していないから起こした過ちだが、そんな店で本場の日本の味と出会えるのか、と疑ってしまい、店に入ろうとは思わなくなった。

お宅の店名の中国語ネーミングは大丈夫だろうか

しかし、日本人が経営にかかわったレストランだから、安心できるのか? それも場合によっては拒絶反応を起こす恐れもある。

そのひとつは店名のネーミングだ。みんなが日本らしい店名を考えがちだが、それは場合によっては思わぬ落とし穴になることも結構ある。

たとえば、最近、友人が上海に居酒屋スタイルの日本料理店を開いた。深くも考えずに浅草という店名を付けた。しかし、法的な登録手続きをすべて済ませた後、大変なことに気づき、青ざめてしまった。中国語読みでは、「qiancao(チェンツァオ)」となるが、その発音はなんと中国語の汚い罵りと同じ発音になる。

「真剣」という店がある。「真賎(まことにいやしい)」という中国語の発音と同様だから、すぐに中国版SNSにその店名を嘲笑う書き込みが出てきた。おそらくその日本人経営者がそんな現状を知ったら、悔しくて仕方ないだろうと思う。

「江戸」というネーミングも笑い草にさらされている。中国語では接着剤の糊と発音が同じだが、問題はその「糊」という言葉が今や、「ごまかす」という意で使われている。味をごまかすレストランに食事に行こうか、と誘われたら、抵抗感を覚えるだろう。

その意味では、中国市場を攻め落とすためには、会社名や商品名のネーミングにも神経を使うべきだと思う。日本食の市場が広がる中国ではあるが、そこでのビジネスはむしろより神経の細かさを求められている。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/