経営者の味方「0円ビジネスマッチング WizBiz(ウィズビズ)」

WizBiz:HOME >  ビジネスマガジン >  ビジネスコラム >  莫邦富的視点・21世紀の大国中国を見つめる  >  自宅に隣接する大型商業施設を6年間見続けて  詳細


自宅に隣接する大型商業施設を6年間見続けて
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2012年05月23日

筆者の暮らすマンションに隣接する大型商業施設内のスーパーから、テナントが次々に撤退しているという。スーパー側もそれなり失地回復に努力しているらしいのだが・・・。


 
莫邦富氏
 
 
著者新刊
莫邦富が案内する中国最新市場 22の地方都市
莫邦富が案内する
中国最新市場
22の地方都市

莫邦富著(海竜社刊)
価格¥1500
見た!聞いた!歩いた!徹底的な現地取材で得た「明日の星」22都市の市場魅力
 
日中「アジア・トップ」への条件
日中「アジア・トップ」への条件
謙虚になれ中国、
寛容になれ日本

 
莫邦富著(朝日新書
)
価格777円(税込)

朝日新聞土曜「be」の好評連載「mo@china」の内容を凝縮
 
バックナンバー一覧
 

 テナントに逃げられたスーパー

6年前に、今やスカイツリーで語られる墨田区に引っ越してきた。新居は公園のすぐそばで、かつての工場跡地を再開発した620以上の世帯が入居する大型タワーマンションだ。

マンションはショッピングセンターやモールなどをもつ商業施設と隣接し、屋外に出ることなく行き来することができる。特に真夏の日や雨の日、または冬の寒い日には、つくづくとその利便性に感激する。ショッピングセンターやモールには、和中洋を楽しめるレストランや日常品を取り扱うショップはもちろん、大きなスーパー、映画館、書店、旅行社、家具店もある。若いお母さんが安心して買い物できるようにと、小さな子供を預かる区のサービス施設まで入っている。本当に便利そのものだ。

しかし、6年住んでいると問題も見えてきた。まず、スーパーのほうだ。開店当初、マンション住民の所得をかなり高く見積もったためだろうか、商品の価格設定が高い。結局、住民の多くは、駅から帰るついでに駅周辺のスーパーで野菜や魚などを買う。よりハイグレードな商品を求める場合は、駅前にあるクイーンズ伊勢丹で買い求める。その結果このスーパーは中途半端な位置づけとなってしまった。

開店半年あたりから、スーパーに入ったテナント店が少しずつ撤退しはじめ、2年間で大半が撤退してしまった。空っぽになったスペースに乾物や鉢物を置いてごまかしているが、開店当時の盛況を知る者には何とも言えない哀愁漂う空間だ。しかも、これらの空間は今でも空っぽのままで新しいテナントは入ってこない。スーパーの営業力に疑問をもつようになった。

商売気が足りない?

スーパー側もそれなり失地回復に努力していると思う。例えば、これまで自転車で来店したお客さんには地下駐輪場の利用をうるさく求めていたが、最近はお客さんの利便性を考えて、路面の一部の場所で一時的な駐輪ができるようにした。

努力は感じられなくもないが、いかんせん足りない。全然足りていないと思う。

私がずっと不思議に思っているのが、なぜスーパーはこのマンションと周辺の住民にアンケート調査を行なわないのか、ということだ。住民の不満、期待、要望、注文を知っていれば、もっと消費者に喜ばれる店作り、品揃えができるのではないだろうかと思う。だが残念ながら、6年間住んできたが、一度もそうしたアンケート調査を受けたことはない。

大型商業施設も商売気が足りないのではないかと時々思う。施設前は広場になっている。見栄えを考え、設計の段階からこの広場に木を植える考えはなかったようだ。夏の太陽の照り返しがきつくて、その広場を通るだけでも恐怖を覚える。

しかし、よく考えているところもある。噴水だ。夏になると、いつもここに集まって遊ぶ子供の姿がある。たまに午後の仕事を早く終えて家に帰ると、この広場で足を止めて無邪気に遊ぶ子供の姿にしばらく見とれることが幾度かあった。疲れが癒された。

そこで私はまた不思議に思った。太陽の下でお母さんたちが汗を流しながら子供を見守っている。商業施設側はなぜパラソルや椅子などを設けないのだろうか。噴水の横でアイスクリームやちょっとした軽食を販売すれば、きっと喜ばれるだろう。

商売のプロたちが商業施設の運営に当たっているはずだ。このようなことは容易に気づくはずなのに、なぜそのように行動を起こさないのか、理解に苦しんでいる。路上販売に対してはいろいろ規制を受けているはずだ。その許可をもらう努力をしているのだろうか?

文句を言うよりも行動を先に起こしたくなる私だから、マンションの役員にも立候補して、役員にでもなれば商業施設側と直接に意見交換ができる……と思ったが、実際はそう簡単には行かなかった。区役所の関係者や区長と会ったときも、いろいろと提案してきたが、たとえわずかなことでも現状を変えることの難しさを痛感している。改革を嫌う日本経済全体の縮図を見せ付けられている感がする。そう思わないのだろうか?

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/