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中小企業の中国進出のコツと課題
莫邦富的視点〜21世紀の大国・中国を見つめる〜

更新日:2012年03月28日

経済的な体力があまりなく投資額も小さい中小企業にとっては、上海などの大都市をはじめとする長江デルタへの進出はかなり難しくなったと言えよう。しかし、手がないわけではない・・・。
 


 
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 長江デルタ進出のハードルが高くなった

中国進出を考え出すと、日本の多くの中小企業の経営者はすぐに上海周辺を狙いたくなる。その気持ちはわかる。
まず、上海周辺、つまり長江デルタには日系企業がもっとも集中している。そこに行くと、何となく安心できる。海外進出はこういう心理的な安心感をもつことも大事なので、その考えは一概にだめだとは言えない。

もう一つ、生活環境からの安心感だ。日本語が分かる人材から日本料理まで、日常生活を支える体制を構築しやすい。それもすごく大事なことである。

しかし、長江デルタには長江デルタなりの難しいところもある。

まず、進出の敷居が高い。投資額が求められている。「500万ドル以上の投資でなければうちには来ないでください」と約10年前に、蘇州の政府関係者がすでにこう言い放っている。

次に、人件費をはじめとする製造コストが高くなった。その人件費もまた人材不足という問題にリンクしている。高い給料を出さないと、なかなか意中の人材を確保できない。これもなかなか悩ましい問題だ。

さらに、物価が高いので、家賃など住宅関連の支出や日常生活関連の支出も多い。従業員だけではなく、日本人の生活費も高い。

労働集約型で付加価値の低い製品を製造している企業にとって、長江デルタでの経営維持が次第に困難になってきた。これも無視できない事実だ。

その意味では、経済的な体力があまりなく投資額も小さい中小企業にとっては、長江デルタをはじめとする沿海部、特に上海などの大都市への進出はかなり難しくなったと言えよう。

束ねて進出する手もある

しかし、中小企業にとって、長江デルタへの進出の機会がまったくないとはいえない。見方とやり方によっては、逆に進出チャンスはまだまだいろいろとあると言っても過言ではない。

まず、長江デルタを含む沿海部では、「昇級換代」「騰籠換鳥」といった政策に傾斜している。前者は技術のレベルアップを言うが、後者はもともとそこにあった労働集約型の企業を他の人件費の安いところに移転させ、空いた土地に技術集約型の企業を代わりに入れることを指す。ちょうど鳥籠にいた雀をほかのところに放して、その籠に希少価値のある新しい鳥を入れるようなことだ。

だから、専門技術をもつ会社ならば、たとえそこまでの規模がなくても、長江デルタにはまだまだ進出できるチャンスがある。

もし、こうした中小企業を数社束ねて一緒に進出ができれば、進出先の政府関係者との交渉にもより有利な立場に立つことができる。

技術レベルが高く、または他人がもっていない技術をもっていること自体が一種の資本だ、という認識を持つ必要がある。

一方、進出先の政府機関も政府関係者もこうした技術レベルの高い企業に対しては一目置く。相談などにも熱心に乗ってくれる。

確かに沿海部には物価が高いなど不利な一面もある。しかし、その利便性と質の高さにおいては他の地方の追随を許していない。それは多くの従業員の心を掴んでいる。企業にとっては従業員の安定就職につながる。これは逆に、長江デルタをはじめとする沿海部の魅力と見てもいいだろう。

投資額が少ないという問題を克服するには、何社かを束ねて一緒に進出する手もある。そうなると、進出先の地方政府も疎かに対応できなくなる。とにかくよく戦略、戦術を練っておけば、問題解決の方法が見つかるものだと私は思う。

著者プロフィール

莫 邦富(Mo Bang-Fu)
1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。 『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。 現 在、三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング会報誌の中国ビジネスクラブにて「データから見えてくる、これからの中国マーケット」、ダイヤモン ド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」などのコラムを好評連載中。 博報堂スーパバイザ。SMBCコンサルティング顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。山梨県観光懇話会委員。石川県中国インバウンド研究会顧問。大妻女子大学特任教授。
http://www.mo-office.jp/